【ロンドン現地報告】

2・18「イラク攻撃反対!」国際反戦統一行動

2003年 2月25日
通巻 1136号

 イギリスの「ストップ・ザ・ウォー連合」の呼びかけた2・15国際反戦共同行動は、ニュージーランド・オーストラリアから始まり、アジア、中東、ヨーロッパを経て、アメリカ・ロサンジェルスへと地球を一周する大きな波となった。デモは全世界60カ国・600ヵ所で1000万人が参加し、70年代ベトナム反戦運動を上回る規模で取り組まれた。ロンドンからの現地報告をお届けする。
 ブッシュの戦争パートナーとなったブレアー首相への痛烈な批判。そして、パレスチナ解放闘争への支持が強く打ち出されたロンドンのデモは、ヨーロッパ反戦運動の質の高さを示す。  (編集部)

ロンドン100万人の反戦デモ
ブレアーさん「戦争やめて、お茶いれて」


 国際反戦統一行動日(2月15日)をひかえ、前日のイギリスのテレビは朝から連続してイラク関連のニュースと、翌日に行われるデモの計画を流していた。町角ではデモ参加を呼びかけるビラがいたる所で撒かれ、テレビのトークショーでは人気タレント達が「私も行きます」と次々に宣言していた。
 15歳の高校生のウチの娘は、学校で友達とデモの待ち合わせの時間を打ち合わせし、知り合いのシュタイナースクールの先生は、小学生の子供たちに「デモに一緒に行こうよ」と呼びかけ、日本食料品店のアルバイトの留学生達は「明日はがんばってきまーす」と元気良く帰っていった。
 一体、どのくらいの人が集まるのだろう?テレビでは「30年前のベトナム反戦以来で、50万人が集まる」と言っていた。ブッシュの戦争パートナーと成り下がった英ブレア首相は、デモを無視できなくなり、わざわざデモ参加者へのメッセージとして「サダムのせいで何千万人の人々が苦しんでいる。デモ参加者はこのことを見て欲しい。この攻撃はイラクの人々を解放する正義の戦いである」と、労働者政党首相であったことを臆面もなく投げ捨て、「キリスト教原理主義者」に純化していく発言をした。


地下鉄もフリーパス



 当日朝から、娘の友人であるパキスタンの女子高生アイシャの母親から電話がかかってきた。「娘がデモに行くと言っているが、大丈夫か?姉も行きたいと言っている」「大丈夫!ウチはファミリー全員でいくよ、車で拾ってあげるから待ってて」
 アイシャを拾って、住宅地域から地下鉄でロンドン中心部へ向かうが、地下鉄駅には張り紙がしてある。「反戦国民デモに参加する皆さん。帰りはハイドパークの駅は封鎖されているのでボンドストリートやビクトリアの駅を利用してください。セントラルとピカデリーラインは動かないでしょう。」きちんと印刷されているので、多分、すべての地下鉄の駅に貼り出したのだろう。不親切で説明不足のロンドンの地下鉄にしては、こんなことは初めてである。
 デモは昼12時半スタートで、2つの集合地点からハイドパークに向かう。いつものデモコースはハイドパークからピカデリーのトラファルガー公園へ向かうのだが、今回はトラファルガー公園に人が入りきれないということでハイドパークが結集地になったそうだ。
 東の集合地点のエンバンクメント駅に降りると、もうデモ参加者で一杯であった。改札口は開放されている。「改札口をそのまま通過するって気持ちいいね」と高校生達が喜んでいる。東の集合地点は町の中にあり、個人や小さなグループが集まっているようだ。それぞれ思い思いの服装・横断幕・旗・プラカードをもっている。目立つのはパレスチナの旗やゲイの人たちの「虹の旗」。
 駅を出るといきなりデモの流れになる。すごい人の波。とりあえず、ビックベン(国会)へ向かうコースをとるが、どの通りもデモ参加者で埋め尽くされており、まったく進まない。
 進まないのでいろんなところでパフォーマンスが始まる。社会労働者党の若い黒人青年はラップにのって演説をし、拍手喝さいを浴びている。パレスチナ戦線は高い塔に登って、そこから掛け声をかけている。アラブの青年達が輪をつくって、ダンスを披露してる。老夫婦がベンチで反戦のゼッケンをつけてキスをしているのがカメラマン達にうけていた。

パレスチナに自由を!

 3時間くらいかかって、やっとビックベンにたどり着いたが、そこからは全く動かない。多分、ハイドパークまでの通りはこのままデモ隊で埋め尽くされているのだろう。「お腹がすいたよう」という声を契機に、わが隊はズルをして地下鉄でハイドパークまで行くことにした。
 ハイドパークではもう、集会が始まっていた。大きなステージの周りは人でいっぱい。前のほうはパレスチナのグループが陣取っている。このデモと集会は「戦争を止めよう連合」が主催しており、そのよびかけは1970年代から続く「CND」という反核団体と「イスラム協会(英国)」である。集会の呼びかけチラシには「イラクを攻撃するな」というメインスローガンの横に「フリーダム・フォー・パレスチナ」が掲げてあった。イギリスの伝統的な反核団体とイスラム協会との共催のデモと集会にこんなに多くの人が応えるという構図は、これからの人々の手の握り合い方を示唆している気がする。
 その呼びかけチラシには7つの提案がされていた。「(1)地域の『戦争止めよう連合』に参加しよう。(2)地域で行動を組織しよう。(3)あなたの労働組合やグループに『戦争止めよう連合』の支部をつくろう。(4)このチラシをショッピングセンターや地域のモスク・教会や駅で配ろう。(5)『戦争止めよう連合』に寄付をしよう。(6)2月15日のデモに参加しよう」
 集会を途中で切り上げて帰路についた地下鉄の中で、向かいに座った老カップルがウチのグループのハッタやバッチを見て微笑みかけてきた。見れば同じバッチを付けている。彼らの会話―「今日のスローガンのなかで一番気に入ったのは『Make Tea! Not War!』だったね」。そういえば、ブレアの頭に(ヘルメットの代わりに)ティーカップを載せているプラカードを僕も見た。


非暴力・ローカル・インターナショナル


 30年前のベトナム反戦時のデモに比べて、今のデモはとても「非暴力的」である。圧倒的なアメリカの軍事支配とそれにたいするカウンターとしての「9・11」、そしてアフガン空爆・サダムや金正日やブッシュなどを抱える世界の中で、人々の流れは「武器」ではない解決の道を、それぞれに考えながら歩いているのだろう。
 で、2月15日はロンドンでは「主催者発表200万人・警察75万人・BBC放送100万人を超える」人が集まった。デモが終わって高校生達は早速、インターネットで世界の情報を集め始めた。「すごいよ!世界60カ国、600箇所で1000万人が25日に集まったって!!最後の集会はロスアンジェルスで20万人だって」。
 世界はいよいよ、ローカルとインターナショナルの時代だ。「イラク攻撃阻止」へもう一押し、頑張ろう。

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人民新聞社

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