援助はどこへ行く?
◆某月某日
今週の頭にシェムリアップに行くつもりでいろんな予定組んでたのに、ひょんなことから、しばらくバッタンバンにいることになりました。すべては僕が日本から持ってきた7000ドルが原因です。
僕がこちらに来る時に、こっちのNGOを紹介してくれた団体が、そこにトラクターを寄付する、ということだったので、そのトラクター代として、7000ドルの小切手を僕が預かりました。それはこっちに着いた時に渡したので、それで話は終るはずだったのですが…。
そのNGOの代表のおっさんは、僕の財布から20ドルくすねていったと思われるおやじです。最近分かったことですが、このおっさん、金貸しとかやってて、割りと金持ちです。そんなことはどうでもいいんですが、その20ドルの件があってから、どうもこのおやじは信用できないのではないか?と考えていました。でも、もうそんなことは忘れて、とっととシェムリアップに行くつもりでいました。このトラクターの寄付の件でいえば、僕は小切手を預かってこっちに持って来ただけですし、極端に言えば、これがどう使われようと僕には一切責任はありませんから。
ただ、初めはその7000ドルでトラクターを買うはずだったのに、なぜかこちらでトラクターではなく、ブルドーザーを買うことを決めたり、その後購入する予定のブルドーザーを僕とおっさんの2人で見に行くと決めたのに、なぜか当日になっておっさんがどっか行ってしまい、結局話ばかりで現物は見れずじまいのままだったりと、この件に関しては首をかしげることばかりでした。そんなわけで、何かひっかかるもんがあるので、とりあえず、こちらに住んでいる別のNGOの代表のBさんという人の所に相談しに行きました。で、色々話した結果、そいつはきちんとブルドーザーを購入するか、そしてそのブルドーザーが支援先の村のために使われるかチェックした方がよいのではないか、という話になりました。まあ、チェックする人がいれば、そのおっさんも好き勝手はできないので。
正直、これに関しては僕には何の責任もないし、ましてや地雷撤去とは何の関係もないことなんで、Bさんと話した後も、自分が引き受けるべきかどうか、かなり迷いました。でも立場上自分以外にそれをチェックできる人もいないですし、もしも日本からの善意の金が、おっさんの好き勝手に使われたら、どうしても許せんものがあるので、結局やることに決めました。別に正義感から決めたとかそんなのではなく、あんまり日本人なめてんなよ、という感じです。もちろん、いいかげんな形で寄付を決めた日本サイドにもかなり問題あると思ってます。
確かに、海外に色々援助したりする場合、それが色んな所で横流しされて、本当に困っている人の所に行かないということは残念ながらよくあることだと思う。こっちでNGOのスタッフをやっている日本人だって、最初からちゃんとやれてたわけではないと思う。色々だまされたり失敗したりしながら、それでも失望したりあきらめたりせず、何とかがんばってちゃんとやれるようになってきた、というのが本当の所だと思う。
でもなあ、「カンボジアの貧しい人々に愛の手を」って感じで人様から募金集めて、もしそれが本当に困ってる人の所にいかんかったら、誰が責任とるつもりやったんじゃあああ!
とまあ、そんなわけで、そのおっさんのやることをチェックするという立場上、そのおっさんの家に居候していると色々と都合が悪いので、今は安宿に寝泊まりしています。どっちにしても月末にはサイゴンに行くのでとりあえずそれまでは安宿暮らしです。サイゴンから帰ってきたら、又一ヶ月ほどはここにいることになりそうなんで、アパートとかあれば借りようかと考えています。これが終ったら、もうさっさと別の所行って、自分のやりたいことやろうと思ってます。
最後に一言。「おいおい、またババひいてもうたがな!」
何度追っ払われようが「パンくれ!」
◆某月某日
ビザの関係でサイゴンに行くため、現在プノンペンにいます。こう言っちゃ何なんだが、すげえヒマです。30分ほどで終わる用事のためだけに昨日プノンペンに来て、しかも同じく30分ほどで終わるであろう用事のためだけに、29日までここにいなきゃいけません。もちろんその間プノンペン近郊を見て回ることはできるけれども、あんまり良さげな所も無さそうやし。旅(別に旅行しに来たわけではないけど)といえば、色々な人との出会いとかもあったりなんかするんだろう。が、やはり類は友を呼ぶのか、僕がこっちに来て出会った人達ってガンジャ好きのフランス人とか、あやしいバイクタクシーの運ちゃんとか、そんなんばっかです。
地雷撤去の方ですが、この間MAG(イギリスの地雷撤去専門NGO)に行って色々な話を聞きました。んで、そちらで訓練受けたり、地雷撤去に従事したりできるか聞いてみましたが、「ダメ!」と速答されました。まあそんなことがあったりして、「何時になったら出来るだろう、本当に出来るだろうか」って感じで、最近、割りとへこんでました。
でね、昨日の事なんだが、屋台でサンドイッチ(註)食ってたんです。そこにボロボロの服着た15歳くらいの物乞いの子が来て、屋台のおっさんに「パンくれ」って言いはじめました。当然おっさんは追っ払うんだけど、その子は、何度追っ払われてもまた来るんです。蹴られようが、ナイフで脅されようがつつかれようが(そんなもので脅したりつついたりする方もどうかと思うが)、とにかく又「パンくれ」みたいな感じで寄って来ます。終にはパンをせしめて、今度は更に、「中に挟むもんくれ」みたいなことを言い出しました。
もう、すごいって思った。なんて言うか、このしぶとさと図太さ、ナイフ出されようが諦めない執念、本当にすごい!って思った。他人に侮蔑され、脅されようが何されようが、とにかく生きようとしてる、この強烈なエネルギー!それですごく思った。俺、あそこまでやったか?地雷撤去やるために、あそこまでやったか?他人に侮蔑されようが脅されようが、必死にそれにしがみつこうとしたか?って思った。やってない。まだまだやんか、こんな所でへこんでられへん!ってすごく思った。で、そのことについて考えながら、バーでビールしこたま飲んで(文句あるか?)、もっと頑張らんかい俺!と自分に喝入れてました。
そんなわけで、僕はわりと元気です。ではまた。
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(註)カンボジアはフランスの植民地だったせいで、フランスパンにハムや野菜をはさんだサンドイッチが屋台で50セント位で売られてます。結構うまいんだ、これが。
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