自然食業界で合成洗剤が取り扱われている

五味 正彦(有機本屋=ほんコミ社)

2003年 2月5日
通巻 1134号

 本と並んで私が好きなのが、自然食≠セ。
 昔から地方めぐりをする時も、本屋・出版社・ミニコミ発行団体と共に、自然食品店・有機八百屋・有機野菜生産者・自然食品生産者の所にも、可能な限り顔を出してきた。
 「初めまして。あのー、東京・新宿で模索舎というミニコミ書店をやっている五味と言いますが、いろいろ聞かせていただきたいと…」とか、87年以降は「…吉祥寺でほんコミ社を…」とか切り出す。ありがたいことに、たいてい知ってくれていて、暖かく迎えてもらった。そう、お互い共同の文化・社会性を持っていることが多いのだ。
 そして私は、本と自然食品店や有機八百屋・安全な食品の共同購入会をつなぐ仕事として、ほんコミ社を立ち上げた。趣味を仕事にしたようなものだった。
 有吉佐和子の『複合汚染』をきっかけにし、チェルノブイリ大事故で環境・食への関心が高まり、一挙にパイが大きくなった、有機・自然食品業界(生協も含む)の基本的な(暗黙ではあったが)確認事項がいくつかあった。●有機・無(低)農薬 ●無添加 ●低温殺菌牛乳 ●合成洗剤No、石けん ●環境負荷を少なくする商品=エコグッズ など
 要するに、有機無添加食品(肉・玉子も)・低温殺菌牛乳・石けん・エコグッズ・自然化粧品、が3点セットの目玉で、それぞれの店や流通が、秀れた生産者を捜し、育て、どう特徴を出すか競い合いながら、この業界は大きくなってきた。
 そして、2001─02年、多くの食品の偽装表示問題、有機JAS制度の導入、化粧品などの全成分表示等の情報公開の拡大などで、今新たにこの業界の拡張、再編が始まっている。
 どうやら又、パイが少しだが大きくなろうとしていて、品質の向上・多様化もはっきり利用者にも感じられるようになってはいるのだが、一部私には納得できない部分もある。
 ひとつは雪印・日本ハム・香料問題と似た、偽装表示や使ってはいけない添加物の使用。そして合成洗剤の復権である。
 例えばこんな事件があった。『マクロビオティック』というミニコミ誌(発行・日本CI協会、マクロビオティックという世界的な自然食運動の家元みたいな団体)に、「弊社製品ティートリーシャンプー、石けんシャンプーであるかのような表現をしておりましたが、本シャンプーは石けんシャンプーではなく、ヤシ油系ラウレスミ酢酸ナトリウムという合成界面活性剤を使用…」というお詫び広告が出た。一自然食品店主の繰り返しの質問に参っての発表だったらしい。
 おかしいのはここからだ。このシャンプー、この広告以降も回収されたという話を聞かない。主に流通させている問屋が、自然食老舗のO社や、エコ雑貨をそろえるG社だから始末が悪い。例えば石けんを広めたいためにエコ雑貨店をやっているHさんは、私が教えた前記広告のことをほぼ半年後に知り、「卸の会社が合成洗剤を扱う会社ではない、と私が勝手に思い込んでいた」ため、このシャンプーをそれまで扱ってきたことをお客に謝罪し、以後同品の取り扱いを中止したという。他にこんな立派な店の話は聞いたことがない。
 回収しないこのシャンプーのメーカー、雪印や日本ハムよりひどいと思いませんか。

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人民新聞社

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