ごう慢な帝国主義(アメリカ)は全世界で反発を生む
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2003年 1月25日
通巻 1133号
全国ネットの放送局などが年末に行った調査によると、合州国の過半数の人が03年に不安、怖れを抱いているという。その理由を少し述べてみたい。 最大問題はブッシュ政権の経済政策、経済問題である。ダウは3年連続の下降、02年では17%下げた。01年末に、史上最大という不名誉記録を作ったエンロンの倒産だったが、02年早々にワールドコムがそれを書きかえた。それらにつられるように大型倒産が相次いだ。年末には世界第2の航空会社ユナイテッドが、そして保険会社コンセコがそこに並んだ。「史上空前の相次ぐ倒産の年」だという。ワースト12のうち8つがこの13ケ月間に発生した。 相次ぐ倒産は大量の失業者を生むだけでなく、自治体などの税収にも影響する。ニューヨーク州では100億ドル、カリフォルニア州では210億ドルの財政赤字に直面しているともいう。 にもかかわらずブッシュ政権は、経済問題に打つ手がない。経済閣僚などの辞任、首のすげかえ…だけ。 そんな中でブッシュは、03年度の連邦予算の半分以上を軍需に向けている。第2位は教育で520億ドルだが、軍需はその8倍近い3960億ドルである。「イラク侵略戦争をやれば2000億ドル必要」と言いつつ、戦争態勢を強化している。これでは国際的にも国内でも支持は得にくいと思ったのか、突如「6百億ドルでやれる」と言いだした。が、これは自らのいい加減さを自己暴露したものでしかなく、あざ笑いを招いている。 ところで、11月の失業率は6%と言われた。が、白人なら5%で黒人は11%である。教育水準の差のせいだと解説されていたが、この発表と同時期に例のロット上院共和党代表の発言があった。周知のように、南カロライナのターモント上院議員の100才の誕生パーティで、48年に人種差別を掲げて大統領選を戦ったタ議員を讃えた。これを人権団体などが批判。更にはロットの過去の発言も問題になった。ロット本人は何度か謝罪をしてかわそうとしたが、20日ついに代表の座から辞りた。 当初、多くのマスメディアはその発言を問題にしなかった。同パーティにはブッシュ親子も参列し、ロットの発言に拍手を送ったことも報じてはいない。ブッシュもマスメディアの多くも、同じ穴のムジナだと自供しているに等しい。 さてアラブ中東系は、やはり白人に属するのだが、彼らへの差別・弾圧は、9・11以降連綿と続けられている。年末にも、あちこちでのデッチあげ逮捕。そして「カナダからテロリストが潜入」という情報操作が展開されている。かつてどこかの国で指紋押捺が問題になったが、ブッシュは恥ずかし気もなく同様の差別、人権違反行為を導入している。指定された国はもちろん、いろんな国々から批判、反発が示されている。対米感情が一層悪くなった(ピュー調査、本紙11・25号「反有事法制軍事情報」参照)のは当然の結果である。 今は死語と化しているが、かつてWASPという語がよく用いられた。中東系、モスレムは勿論、WASPには属さない。ユダヤもそれから外れる。黒人や有色人種だけではなく、いつ差別の矛先がどこへ向くか…という不安は広範に存在する。 国連人権高等弁務官事務所の高官は12・4に、「合州国はグァンタナモ基地の捕囚に対して、裁判を開始するか、さもなくば彼らの母国の司法当局に引き渡すべきだ」と、ブッシュのあり方を批判した。ブッシュはそれを無視し、更に「テロリスト」というでっちあげを続けている。そのくせ最近オサマ・ビンラディンのことを口にしなくなった。「生きていようと死体であろうと…」と言っていたのに??? 米市民権連盟という人権団体がある。この団体は、「9・11以降の安全を楯にしての人権侵害の拡大に警告を発」し続けているが、最近、「9・11以降、メンバーは20%も拡大した。我々の警告の正しさが証明されている」と発表した。ロット問題、「テロリスト」でっち上げ等を考えると、更にメンバー増へと至っていることであろう。 最後にもう一言。日本では「北叩きの嵐」が吹き荒れているらしいが、隣の韓国では反米デモが高まっている。同国の市民運動代表団はワシントンを訪問し、ブッシュに130万の署名を呈示して謝罪・2兵士の裁判のやり直し・地位協定の見直しなどを要求しようとした。が、代表団を迎えたのは警官の壁であった。これが同国の大統領選にも影響を及ぼした。 ブッシュのあり方は、自らを窮地へと追い込んでいる。そして同様のことが地球の至るところで発生している。ごう慢な帝国主義者のあり方は、至るところで反発を生む。この国の人々が先行きに不安、怖れを覚えるのはそのせいである。 (小) |
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人民新聞社
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