管理職ユニオン・関西 事例レポート |
退職勧奨から嫌がらせ! 自ら納得いく異動先獲得に向けて抗議行動 |
書記長・仲村 実 |
2002年 9月15日
通巻 1121号
■出向・退職勧奨・嫌がらせ 大手の農機・建機のメーカー、有名な一族会社資本で、退職勧奨をはねのけて闘っている組合員Aさんの紹介である。 年令は56才、長年設計の仕事をしていたが、8年前、子会社に出向させられた。勤務地も関東地方の支店、営業所を転々とさせられた。仕事内容も、設計の仕事から農機の販売などで、新分野の業務に苦労してきたという。 1998年10月、単身赴任に終止符をと考え、労働条件は低下するが滋賀県の自宅に戻ろうと会社が募集した地域を限定した「コース転換制度」に適用申請書を出した。しかし申請は無視され、突然、出向元の親会社人事部から呼び出しを受けた。「出向先の子会社も要らぬから返すといってきた。会社も厳しい。1年後には場合によって辞めてもらう」と一方的に通告を受け、1999年6月21日付けで別の子会社の滋賀営業所に出向させられた。初めて経験する建機の修理サービスの業務である。 出向先でスタートから嫌がらせが始まった。修理・点検業務の経験のないAさんは、技術講習会も受講させてもらえず指導もなかった。そして1年後「期待する実績が上がっていない」という理由で退職勧奨を受けたのである。 2000年7月、「退職勧奨問題」を議題とする出向元の親会社との団体交渉で、会社の「退職勧奨はしていない」と狐につままれたような形で決着となった。ところがその後、出向先の営業所では、仕事上のあら捜し、監視の嫌がらせが続いてきた。関東時代の親しく仕事を共にした友人も辞めさせられていった。職場で嫌がらせをする社員を責める気にもなれないが、団体交渉再開で攻勢に出ようとやっと決意が固まる。 今年の3月28日、(1)ただ働きの未払い賃金問題、(2)出向先の滋賀営業所での嫌がらせ、(3)出向元人事部面談を議題とする団体交渉を申入れ、4月10日に交渉となった。 会社に対し(1)超過勤務・休日出勤の未払いの支払い,(2)Aさんのこれまでの設計業務の経験が活かせ、自宅から通勤可能な工場・営業所への異動先を探すことを要求した。回答期日の4月25日、Aさんの出向先の「営業所所長に確認しましたが、サービス日報の内容は認めるが、超過勤務や休日出勤については、指示した覚えもなく、不慣れを取り戻すため自分で行なっていたものであり、超過勤務とは認めていない」とし、異動希望要求については「全社的な異動の時期と受入部門側との調整があり、短時日では誠実な回答ができません。今後、6月21日付の異動の検討に入りますので、Aさんの異動につきましても、受入側との調整を図ってみます」というものであった。 ■労基法違反で監督署へ申告 4月10日の団交、18日の営業所長同席の「未払い賃金」の確認の話し合いで、会社が支払いを拒否したため、5月15日、Aさんは、労働基準監督書へ未払い賃金の支払い拒否として労基法違反申告をした。この日から会社と併せて労基署監督官との攻防戦に入った。 監督署は、当初「白(労基法違反でないこと)でもなく、黒(明確な労基法違反)でもなく、グレー(灰色)であると判断する部分は、勧告が難しいかできない」といっていた。 この会社は、昔タイムカードがあり、「ただ働きの残業分」を要求した人がいて、会社が支払うはめになり、1人だけではない多額の支払いになったそうである。それ以来、会社はタイムカードを廃止している。 Aさんの未払い賃金の請求根拠は、作業日報である。この日報は、Aさんが作成。所長が見た上で確認印を押してAさんに返すということになっていた。この日報には、(1)所長の確認印のあるもの、(2)戻ってこなくなったことから提出前にAさんがコピーしたもの(確認印がない)、(3)いずれでもなくAさんが自分の手帳に出退時間を記入したものの三種類がある。労基署の判断は、(1)は黒、(2)は灰色、(3)は白。 Aさんの請求に対して、会社は当初出向手当てには残業代の一部が含まれている。さらに終業後の15分は休憩時間であり残業時間に含まれないと主張した。 労働基準監督署と組合の対立点は次の通りである。監督署は、「会社の支払い基準として、出向先との労働時間の差、(Aさんについては月9〜10時間)が「内規文書」に書かれており、出向手当の中に残業手当が含まれると解釈されるので、法違反とするのは困難である。組合の主張は「出向手当規定には「残業」とか「残業を含む」とかの明示はないので、黒。支払い勧告をせよ」である。 さらに、日報の確認印のないものについては、私の強い抗議と説得で、支払いの再勧告がされ、9月の給与時に支払うこととなった。 いずれにしても、残業の未払い分をまったく払わないと言っていた会社が、日報確認のものと出向手当に含むと主張していた分については取り返した。 ■いよいよ団交から抗議闘争へ 9月4日は、残業の未払い分の全額獲得と異動先提示をさせる交渉であった。会社は、前回の大阪本社から交渉場所を滋賀県の子会社の営業所に変えてきた。交渉議題は、残業未払い分の全額支払い問題と、出向元に対する異動提示とその期日問題であった。交渉は平行線で、未払い問題の会社の答は「検討の余地なし」であった。Aさんは、いよいよ抗議行動を考えるという。 |
[ 「ムーブメント」〜労働運動へ ]
人民新聞社
このページは更新終了しております。最新版は新ページに移動済みです。