【投稿特集】私にとっての9.11

普通のアメリカ人の意識って?

古奈絵里子(女・30代)

2002年 9月15日
通巻 1121号

 人民新聞読者のみなさんは、このタイトルを見てどう感じますか?
 今年の初めに私が体験した小さなできごとについてお話ししたいと思います。私の祖父はハワイ生まれの日本人なのですが、祖父以外の兄弟は全員アメリカ国籍を持っています。次の世代となると、「日本は、祖父母が生まれた遠い国」という感覚のようです。今年の正月休みは、私にとって2度目のハワイ親戚訪問となりました。
 親戚の1人がドライブ中に、「英語は世界で4番目に多くの人に話されているのだけど、あとの3つは何かしらね 」と話しかけてきました。彼女の妹はスペイン語の教師ですので、「中国語以外にスペイン語も入っていると思う」と言いましたが、「アラビア語はどうかな 」とも言ったのです。そのとき、その場の雰囲気が突然変わってしまったように感じました。親戚が、みんな黙ってしまったのです。私は自分の発音が悪かったのだと思い、何度か「 Arabic 」と言ったのですが、すぐに無視されていることに気がつきました。発音の問題ではなくて、「Arabic」という言葉を聞きたくないという、強い意識が感じられました。すぐに夫が「2番目はヒンディーかな?」と話の流れを変えてくれたので、また元の楽しい雰囲気に戻りましたが、ちょっとショックな経験でした。
 このような「感じ」それ自体は、別に珍しいことではありません。例えば家族(親兄弟)とテレビを見ていて、マサコサマが画面に登場した場合とか…誰かが「やっぱりマサコサマはおきれいよね」と言ったら、私だって聞かなかったことにしたいです。そんなこと言われるだけで、本当に不愉快です。ハワイの親戚を訪ねる際にも、宗教の話題は避けた方が良いだろうくらいには思っていました。私には「よくわからない」からです。でも、アラブについて好意的に話すことが事実上タブーになっていたことは、予想外でした。アメリカ人ではあるけれど、日系アメリカ人という立場であれば、もう少し別の反応が返ってくると思ったのに。
 とても残念に思いますが、これが「普通のアメリカ人」の意識なのでしょう。その後、アメリカ人の9・11後の意識・生活の変化について、関心を持つようになりました。もともとアメリカ以外のことにはあまり関心がない人が多いことも、実感を持ってわかるようになりました。
 人民新聞の読者のみなさんだったら、「アメリカ人なんてそんなもんやろ」と思うかもしれません。でも、私には「アメリカ人は無知だから」と一言で決めつけられないのです。やっぱり親戚ですから。曾祖父が日系人のプライドをかけて夢をなしとげた国でもあるし。また、「○○人はダメ」と言ってしまうことは、日本人がそう言われていることを肯定するのと同じではないでしょうか(もちろん否定はしませんが)。
 小さな出来事でしたが、自分に身近な人たち=普通のアメリカ人に起こっている意識の変化に戸惑い、考えさせられる体験でした。

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人民新聞社

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