【投稿特集】私にとっての9.11

「テロにも報復戦争にも反対!」
と声高に

奥村貴夫(元清掃労働者・60代)

2002年 9月15日
通巻 1121号

 あの9・11「テロ」からもう1年が経過する。この1年間あの「テロ」によって労働者、市民側に何か「成果」的なものがみえただろうか。
 たしかに虐げられているアフガン等の現状が世界の人々に知らされたことは事実だし、そのことは評価すべきであろう。
 しかし現実の世界では、「テロ撲滅」を口実にどれだけの人々が傷つき、殺されたのだろう。自国の利権にそぐわない国々に「ならず者国家」なるレッテルをはり、強大な軍事力で世界を制そうとするそれこそ「ならず者国家」=アメリカを断じて認めるものではない。そのアメリカに対して抵抗する人々を、私も支持する。「自爆テロ」を強行するアフガンの若者達の気持も、心情的には判るつもりではいる。だがしかし、その戦術が「テロ」なら、事態は全く逆効果ではないのか。
 日本もこの1年間、自衛隊の海外派遣をはじめ、日の丸・君が代の法制化、歴史教科書にみられる歴史の改ざんの動き、首相の靖国公式参拝、徴兵制に道をひらく住基ネット、人々の闘いで継続審議になっているとはいえ有事法制化等々、とどまることなく右傾化へと進んでいる。これらの口実にどれだけ「9・11テロ」が使われたことか。結局9・11は、アメリカや日本の権力側に絶好の口実を与えてしまったのではないか。
 私自身が発行している小さなミニコミ誌に昨年末、「百害あって一利なしの9・11テロ」なる記事を書いたら、一部の読者から絶交宣言≠受けた。ではその人たちの運動が9・11によって前進したのか。私にはそうは思えない。
 この8月末、八尾飛行場(自衛隊基地と共同)で盆おどり大会があった。どんなことをしているのか、暑い夜だったが見に行ったところ、なんとゆかたを着た人たちを多く含む老若男女2万人もの人々が参加していた。決して動員ではない(ちなみに昨年は1万数千人だったそうだ)。生ビール350円、かき氷100円、やきとり100円、やきそば200円、それに迷彩服に迷彩タオル(200円)のグッズコーナーにも、人々の長蛇の列だった。後半は豪華な花火が打ち上げられ、人々の歓声があがる。この費用はまさしく税金なのに、「安かった」「よかった」と絶賛の声。ほんの数年前まで人々の心になんとなく、でも抵抗のあった自衛隊は、ソフト路線で確実に人々の心に入り込んでいる。
 なのに一方では「テロ」では、支持されるわけがない。今こそもっともっと声高に「テロにも報復戦争にも反対!」を訴えるべきではないだろうか。

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人民新聞社

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