ヨルダン川西岸、再占領状態に/ブッシュ、アラファトに退陣要求
3月29日から始まったイスラエルによるパレスチナ自治区に対する大規模再侵略は、国連のジェニン現地調査団の解散と引き換えに行われた5月2日のアラファト議長解放、5月10日の聖誕教会解放をもって一旦収束したかのようにみえた。しかし、それ以降の状況は、むしろ4月の状況が日常化しているといえる。
イスラエル軍による自治区の包囲、パレスチナの経済や日常生活すべてを破壊するチェックポイントでの検問、イスラエルによるパレスチナ解放運動活動家の暗殺、日常的な自治区への軍事侵攻は継続されている。「テロリスト」の捜索と称して、家屋の破壊や外出禁止や民間人の虐殺や活動家拘束が、恣意的に行われている。すでにパレスチナのインフラはほとんど破壊し尽くしたので、現在は農業の破壊を行おうとしているという報告もある。市民団体「中東市民文化交流友の会」のパレスチナ訪問に参加した人からの現地報告では、5日にアラファト議長と面会した直後、議長府に対する攻撃が行われ、警備兵が殺害されたとのことで、議長府への攻撃も日常的に行われているようである。さらに、イスラエルは、西岸とイスラエル領の間に「分離壁」を建設することを13日に発表し、既に着工されている。パレスチナ側、イスラエル政権内右派の双方から反発が起こっているが、この「分離壁」は、シオニズムの発想が「アパルトヘイト」であることの証左といえよう。
6月19日以降、イスラエルは2日連続の自爆攻撃を口実に、本格的な再占領を開始している。ジェニン、カルキリヤを皮切りに、ガザ地区にも軍事攻撃が行われている。24日にはラマラの議長府が再包囲され、西岸自治区はジェリコを除いてほぼ全域が再占領状態にある。ヘブロンでは、25日から、パレスチナ警察が拘束している活動家の引渡しを求めて、自治政府の警察・治安機関が入っている庁舎を包囲し、ついに28日に、中に人が立てこもったまま庁舎を完全に爆破した。滅茶苦茶である。アラファト議長に、「テロ対策」を求める一方で、パレスチナの警察機能を破壊し、パレスチナ警察が拘束している人間まで建物ごと吹っ飛ばすとは。自治も何もあったものではない。
アメリカは例によって、即座に「イスラエルは自衛権を持っている」と言って、19日以降のイスラエル軍の再占領を支持している。侵略者の「自衛権」とは何なのか。ブッシュ大統領が24日発表した中東和平構想は、「反テロ」を前面に打ち出した内容となっている。アラファト議長の退陣を前提とした、「パレスチナ暫定国家の樹立」と「3年以内の合意」を打ち出している。
サミットで
諸国、ロシアの首脳は概ねアラファトはずしを批判しつつ、アメリカが初めてパレスチナ国家の樹立に言及したことを評価している。アメリカのイエスマン小泉首相は、即座にこの中東和平構想の支持を表明したが、サミットでの他国首脳の反応を見て、現在口ごもっている状態である。ブッシュの中東和平構想に対して、パレスチナ側は、当然にも「自分達の指導者はパレスチナ人で決める」と批判しており、また、「暫定国家」や「3年以内の合意」といっても具体的保障は何もなく、現在の自治区の枠内への固定化につながるのではないかと危惧している。
一方、アメリカに言われるまでもなく、パレスチナ人自身の中から自治政府の民主化と選挙の実施を求める声は起こっており、アラファト議長は26日に、来年1月に自治政府議長および自治評議会の選挙を実施すると日程を発表した。
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