★管理職ユニオン・関西 事例レポート |
2度目の退職勧奨をはね返す |
2002年 7月5日
通巻 1115号
■不安の中で初の団体交渉 ゼネコン大手の大阪支店勤務のEさん(48才)、企業内組合と管理職ユニオン・関西の二重加盟の組合員である。 1回目の退職勧奨は、1997年11月から12月にかけてだった。このときのEさんは、戦力外通告を受け、派遣会社登録を勧められた。経過は、次の通りである。 「上司に呼び出され、『E君は今、ポストにふさわしい仕事をしていない。能力が出せるところが他にあるだろう』と始まった退職勧奨…。週があけて2回目の訪問で、管理職ユニオンに加入しました。社内組合に入っていながら、社外組合に入ることにより、今後社内で起こってくる予想もつかない不安が襲ってくる」と、組合加入前と加入までのEさんの心境である。 11月27日、東京本社の人事部からEさんに直接電話で、12月1日「東京本社へ出頭するように」と命令が下った。上司が言っていた「人事部に回ってほしい。提携先の人材派遣会社が新しい仕事を探してくれるだろう」を命令するための呼び出しだった。 その後のことをEさんは、「これより12月4日にかけて、私も、会社も、社内組合もめまぐるしく動きました。その契機になったのが、管理職ユニオン・関西からの団体交渉申入書でした。このような会社に『団交申入れ』の一石を投じたのは、どうやら社史上かつてなかったようです。4日、会社は社内組合の役員を通じて、白紙撤回を伝えてきました」と振り返っている。 管理職ユニオン・関西がやったことは、団交申し入れと会社と企業内組合への数回の電話だけだった。 ■社内組合の脅しと管財人の団交拒否 大阪支店内のこれまでの職場を確保したEさんに、社内組合の役員は脅しをかけてきた。「何とかしてやった。管理職ユニオンを脱退せよ。脱退しなければ、規約を改正して除名するぞ」と。もちろん彼は、自分がやる気にさえなれば頼りになる管理職ユニオン・関西を脱退することはなかった。労働条件の不利益変更があれば、まず「社内組合に要求をぶつけて取り組みをお願いする」、万一ダメなら「管理職ユニオンで団交」をという対処方法を、Eさんは体得した。企業内組合も、Eさん1人を除名するための規約改正など行なえるはずもなかった。 2回目の退職勧奨の今回は、会社更生法下の退職勧奨である。1000名の希望退職募集に応じるように、肩たたきにあった。今年3月7日に企業内組合の通信が出ている。概略を示す。 「当社は3月3日(日)に、臨時取締役会の決議を経て東京地裁に会社更生法の適用申請を行ないました。同日、申請は裁判所に受理され、会社資産に対して、保全命令が出されました。(略)会社更生法の手続きは、倒産ではなく事業を継続しながら会社の再建を図るものです。当社の経営全般は、裁判所の選任した保全管財人に移行しており、今後、組合は組合員の労働条件等について、担当の管理人(弁護士)と協議していきます。組合員のみなさんも突然の会社更生法申請に大きな衝撃を受け、不安を抱かれていると思います。生活維持のために絶対必要となる従業員の給与については、当面これまで通り支払われることが確認されています」とし、資料として、会社更正手続きの手順の表、上部組織の支援体制が箇条書きされている。 管財人の決定後、1000名の希望退職募集があり、結果的には人員達成ができなかった会社は、個人面談と称した「肩たたき」を始めた。Eさんはその対象にされ、2度目の退職勧奨を受けることになった。個人面談には応じたが、Eさんは前回の経験から、大阪支店での現在の業務を要求した。しかし、会社更生法下での全国の支店の統廃合・縮小で、大阪支店のEさんの部門も縮小するという。支店長から「君の仕事はない。希望退職に応じないのであれば、総務部付けになる」と言われた。この話で、Eさんはこれから先の不安が大きくなり、私と話し合いの結果、とにかく更生会社管財人へ団体交渉申し入れと、企業内組合へ「現在の職場と業務が続けられるように交渉してほしい」と同時申し入れをすることにし、実行した。管財人とその担当代理の弁護士名で団交拒否の回答書がきた。参考のために文面を紹介する。 「貴殿らの平成14年6月11日付団体交渉申入書に対し、次のとおり回答します。貴殿らは、S工業(株)従業員E氏が管理職ユニオン・関西に加入し、同人の地位・身分その他について団体交渉権を有することを前提として、S工業(株)に対し、同人の配置転換について団体交渉の申入れをなされておられます。しかしながら、E氏は、S工業職員組合の組合員であり、S工業(株)は、同組合との間で、同組合がS工業(株)との団体交渉をする唯一の相手方であるとの労働協約を締結しております。したがいまして、S工業(株)は、貴殿らの団体交渉申入れに応じることができないことをご回答申し上げます」 ■二重加盟でも団交拒否は不当労働行為 こうした管財人回答の行なわれる中で、退職勧奨はなくなり、E氏、職員組合大阪支部長、管財人担当代理(大阪担当の弁護士)らでの話は進行した。私も、E氏よりの報告を受け相談をする中で、対応のアドバイスを続けた。併せて、管理職ユニオン・関西として、管財人と大阪支店長宛てに文書を送った。二重組合員の考え方の参考になるので、ポイントだけ紹介しておく。 「組合員E氏は、貴社の職員組合の組合員であっても、当管理職ユニオン・関西の組合員としての団体交渉権は法的に成立しており、貴社の回答内容は労働組合法第7条の不当労働行為となります。現在、組合員E氏は、貴社職員組合による運営協議会に諮られておりますが、近日出される結果により、再度団体交渉を申入れいたしますので、よろしくお願いいたします。なお、その際今回と同様の回答書内容を理由に団体交渉に応じない場合には、団体交渉拒否として大阪府地方労働委員会に申し立てをすることを言い添えておきます」 こうした攻防の中で、Eさんへは「大阪では希望職場が確保できないので、東京転勤とし、現在と同じ業務内容とする」との配転が告げられた。Eさんも、会社の現状、経済的なこと、家族(奥さん、中・高校生のお子さん)のことを考え、単身赴任することを決意した。7月半ば、転勤を前にして組合事務所を訪れたEさんは、東京管理職ユニオンの住所と電話を教えてほしいと言ってきた。そして私に、「これまでのようには組合事務所に行けませんが、東京管理職ユニオンの事務所には時々行きたいと思います」「関西のEというのが、転勤したので、東京の事務所に顔を出すのでよろしくお願いしますと伝えておいてほしい」と言い残していきました。 (書記長・仲村 実) |
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