「世界の警察」★アメリカの一隅から

自滅行為・失態繰り返すブッシュ
世界に拡がる「ノー」の声

2002年 6月5日
通巻 1112号

国際的に信用失墜

 「反テロ」という名目でのブッシュの強引な主導性は、あたかも「強いアメリカ」を誇示するかのようであった。が、事態は急変しているようだ。
 その筆頭例が中東政策の混迷である。
 シャローンのパレスチナ自治区への新たな侵略と蛮行は、《テロリストを支持する者は、すなわちテロリストであり、打倒すべし》というブッシュの理論そのものである。当然ブッシュはゴーサインを送り、侵略・蛮行への支持を表明した。対テロ戦争を世界が支持するのは当然と考えたのだろう。
 だが、それは全くの読み違えだった。
 それ以前からアラブ・イスラム諸国は、ブッシュのイスラエルへの一方的な肩入れ、対イラク戦争準備などに批判的だった。新たな侵略・蛮行は、さらに欧州諸国をもブッシュ外交を批判する側へ導いた。
 事態の重大さに気づいたのか、ブッシュは慌てて「もうたくさんだ。即刻撤退せよ」などと叫び、パウエルを現地へと派遣した。すると、政権内及び国内の親イスラエル勢力が、ブッシュの翻意をなじった。ユダヤの友であるブッシュはお得意の二枚舌を用いた。その一例が、パウエルが永い遠回りの末にアラファトと会ったその日に、ワシントンの親イスラエル集会に派遣されたウォルフォヴイッツが、「私は(ブッシュになりかわって)シャローンを支持する」と叫んだことである。また、同じ日にブッシュ自身、ラマラ包囲などへの「理解」を示した。継続しているシャローンの蛮行や国連無視などはブッシュの「理解」に支えられているからである。


クーデター派との腐れ縁

 ある世論調査によると、合州国ではイスラエル支持が約3対1でパレスチナ支持を上回るが、欧州諸国ではパレスチナ支持が約2対1と逆転するという。ブッシュの国内世論向けの政策は、国際的には一層信用失墜を導くというわけである。それでなくとも、「20番目のハイジャッカー」への死刑攻撃やグァンタナモ基地での捕囚への扱いなどで、人権団体や欧州諸国などにはブッシュ政権への批判が鬱積している。中東問題での混迷は、それを一層拡大している。
 合州国の「裏庭」、ラテンアメリカでも、ブッシュは失態を自演した。
 ヴェネズエラのクーデターにブッシュ政権は支持を表した。米州機構の諸国をはじめ全世界が民主的に選出された政権の暴力的転覆を批判したのに、「民主主義の旗手」を自認するワシントンは、クーデター政権を認める言辞を送っていた。マスコミもチャベスはいかに悪玉だったかと伝えた。だが、軍内の民主的勢力がクーデター派を制し、チャベスは2日後に大統領府に戻った。クーデター派が法に問われるだけでなく、連中とブッシュ政権との腐れ縁が明るみに出てしまった。ブッシュの面目丸つぶれである。
 周知のように、クーデターに深く関与していたのは国務省米大陸担当官レイヒである。レイヒは、イラン=コントラ事件に関与して訴追された過去がある。追訴事件こそまぬがれたが、当時副大統領だったブッシュの親父も深く関与していた。事件関係者を六人も、現ブッシュは政権中枢に据えている。そして、ここで再び汚い手口を披露した。これではラテンアメリカはもちろん、全世界の人々からその信を失くすことは必然であろう。


「世界の警察」から「最大の犯罪者集団」へ

 ブッシュへのダメージは他にもある。
 アラスカの自然公園での石油採掘に、議会はノーと応えた。ブッシュが最重要なエネルギー政策と唱っていたものへのノーであった。
 アフガニスタンでは共同演習中のカナダ部隊が米軍機によって爆撃され、5人が死亡した。折しもカナダとは「木材戦争」なるものが火を吹いている。EUとも貿易戦争がある。友邦を突き離すのがブッシュ政策の現状である。
 国内でもアブデル=ラハマン師の弁護士逮捕などで、法曹界などから反テロ法反対、民主主義擁護の声が大きくなっている。
 4・1発売のフォーチュン誌は、倒産したエンロンを前年の7位から5位へと格上げして、人々の失笑を買った。フォーチュンもブッシュも、自ら権威を壊すことに無頓着のようだ。
 10年前、ロスアンジェルスではひょんなことから大暴動が発生した。人々は「最大の組織犯罪集団」と、ロス市警をののしった。世界の警察に対しても同様のことが近いうちに起きるのでは…。

(小)

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人民新聞社

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