「医療観察法案」は保安処分に繋がる
「精神障害者」差別を助長する内容だ

高橋章三

2002年 6月5日
通巻 1112号

 今、日本は戦後最大の危機に直面している。政府は、「戦争」への道をすすめるために、有事体制を確立する法整備を急いでいる。すでに「テロ対策法」を短期で決め、インド洋に自衛隊の艦船を派兵。既成事実を積み上げ、「法」を強引に立法化するのが自民党(政府)の常套手段だ。
 その有事体制を支えるものとして、「個人情報規制法」とともに「心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」がある。同法案は、「池田小学校事件」の翌日に、小泉総理が「法整備」を宣言、具体化したもので、有事法の陰に隠れて関心が薄いどころか、医師会ですら推進にまわり、世間の関心も同様に低いどころか、「当たり前」という意識が主流となっていると言っていい。
現行では指定医1人の判断で退院できたが、「新法」では裁判所の許可が必要。また、入院命令も決定することができ、そのための「指定入院医療機関」を新設し、「精神病」に無知な裁判官が「再犯のおそれあり?」と判断すれば、極端な場合「終身刑」となる。さらに、地域社会でも新たに「保護観察所」が関係し、行動の自由が著しく制限される。

 また、同法案は、保安処分の色彩が強く、「再犯予測」というあいまいな要件で無制限の強制入院を可能にするものである。「精神障害者は危険」という差別・偏見を煽り、地域で暮らす「病者」をさらに苦境に追い込むものだ。それは、たんに「病者」だけでなく、全ての民衆にも治安管理が一層強化されると認識する必要がある。
 すでに京都の府立病院では、「緊急病棟」を新設し、受け皿を用意している。前述したように同法案に対する関心は薄く、反対しているのは、一部の精神科医(ほとんどの精神科医は無関心)、「日弁連」と障害者団体(家族会が中心)だけだ。まさに、孤立無援に近い状況。
 かってナチスが政策として「精神病者」を抹殺した蛮行に繋がる法であると言っていい。反対の声を高めよう!

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人民新聞社

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