読売新聞による悪質な
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丸岡 修 |
2002年 5月5日
通巻 1109号
1月27日、読売新聞は全国版朝刊社会面に、1996年にフィリピンであった三井物産支店長誘拐事件に関して「若王子さん事件、日本赤軍の影」の大きな見出しとともに、丸岡が積極的に関与したとする捏造記事を、大きく6段抜きで掲載した。「(特集)安全メルトダウン 第一部 テロとの攻防(4)」なる、社会面2面にわたる記事は、左にコロンビアの誘拐事件、右若王子氏事件が飾っていた。 この記事では、同事件を「日本赤軍が計画し、フィリピン新人民軍が実行した」などとした。しかも、東京版、東北版にはなかったが、九州版には「丸岡受刑者動かぬ『物証』」とする副見出しまで大きくつけた。全くの捏造である。 記事は事実に全く反する 記事は、その本文で丸岡が「大量の航空券コピーと10ドル紙幣を持ち」、「北京や北朝鮮まで足を延ばしていた」、「(脅迫状が投函された)郵便ポストの近くのホテルに宿泊し」などとし、さらに「数十枚のドル紙幣を調べると、身代金に支払われた紙幣番号と一致し」とした。しかしながら、これらは全くの捏造なのだ。 1987年11月21日、私が東京で逮捕されたときには、「大量の航空券コピー」も「数十枚のドル紙幣」も所持していなかった。読売は「動かぬ証拠」と書いているが、逆である。私の方が読売の記事がデマである証拠を持っている。それは警視庁公安部が発行した「押収品目録交付書」だ。 私の身柄が拘束された後、4次にわたって私の所持品のほとんどが押収された。旅券等は無論のこと、硬貨を含む全現金、商品券などの金券のすべて、公刊印刷物(本、パンフ)から紙片に至るまで押収された。その中には皮製財布、キーホルダー、バーボンウィスキーまであった。残った物は電気製品(ウォークマンなど)、文具、衣類、靴、カバンだけという徹底したものであった。その「押収品目録交付書」の中に「航空券コピー」なるものは1枚もない。また、読売は「数十枚の10ドル紙幣」と書いたが、所持していた10ドル紙幣はたったの2枚である。さらにいえば、私は「北朝鮮」に行ったことはないし、そのような証拠もない。「脅迫状」の投函ポストを私が知る由もないが、これも読売の捏造であろう。仮に私が当事者だったとしても、どこの馬鹿が自分の宿泊するホテルの近くから「脅迫状」を投函するのか。大体、投函されたとされる時期に私がどこに宿泊したか、捜査当局は特定していない。 読売は「数十枚の10ドル紙幣を調べると、(リスクス社)が控えていた身代金の紙幣番号と一致した」と書いたが、数十枚も一致していたのなら、それこそ私は「営利誘拐罪」で逮捕され、起訴されていたはずだ。しかし、実際には1988年頃に「丸岡、若王子事件に関与か」と大騒ぎをした上で、「立件は見送った」と公安当局は発表した。「物証」は何一つないし、「状況証拠」は唯一、丸岡が使用していたと思われる旅券の持ち主の香港滞在が、たまたま「脅迫状投函日」と重なっていた、というものなのだ。「数十枚の番号が一致していた」のなら、「立件はできた」のである。読売新聞の記者には思考能力が欠けている。「動かぬ物証」があるのに立件しなかったとするのなら、読売は司法当局を非難しないといけないのではないか。それはしない。「紙幣番号が一致した」などという「事実」は存在しない。 余談・旅券法違反と「ハイジャック防止法」2件の計3件で私は逮捕・取り調べを受けたが、「若王子事件」に関して尋問を受けたことは一度もない。ただ一度だけ黙秘相手の私に暇を持て余した公安警察官が喋ったのは、「若王子事件は、マフィアではなく左翼がやったのではないか。指を実際には切断しなかったから」。(「人道的だ」というのが根拠) 読売新聞社の反応 私は、3月13日付で捏造記事に対する抗議、私に対する謝罪表明と訂正記事を全国版紙上に掲載せよ、とする申入書を読売新聞社に内容証明で送った。4月3日に読売新聞社の代理人から回答書が届いたが、いかにもナベツネの読売らしい傲慢なものだった。「当該記事は十分な取材に基づくもので、内容に誤りはない」、「従って、訂正や謝罪等の必要はない」。 わざわざ親切に「東京地検に問い合わせれば、(丸岡の主張通りだと)容易に判明する」と教えてあげたのに。私が具体的に指摘した点に関する反論は全くなかった。 特集記事の狙い なぜ今頃になって、読売は16年も昔の事件を捏造情報を添加して記事にしたのだろうか。 第一。小泉政権は、米国ブッシュ政権と歩調を合わせて「9・11事件」を好機到来とばかりに、反「テロ」を名目に有事法制化を急いでいる。読売新聞社は、それに積極的に協力し、社をあげて憲法改悪、集団的自衛権の行使、有事法制定、反「テロ」対策や「不審船」対策の徹底を誌面で呼びかけてきた。特集「安全メルトダウン」は、正にその趣旨に沿ったものである。戦争をできる国にする、その方向に世論を誘導しようとしている。読者の危機感を煽るための捏造記事と言える。 第二。現在、内閣の指示を受けて東京地検公安部は、重信房子裁判で同志重信が事実無根の「ハーグ事件共謀」を理由に有罪重刑判決を受けるよう画策している(東京地検公安部検事長沢某はある検察側証人に「重信を一生監獄から出すな、と上層部に政治的圧力がかかっている」と述べていた!重信公判で検察は、1974年に日本赤軍が欧州で日本商社支店長誘拐を計画して、重信がその指揮をしていたかのような印象を裁判官に与えようと必死になっている。その検察の動きと一体となって検察庁警備局は、1988年に一旦失敗したのにもかかわらず、「若王子事件」を同じ日本赤軍の犯行だと世間一般に印象づけようとしている。それに飛びついたのが公安警察御用達の読売新聞なのだ。 記事の最後はこう締め括られている。〈「日本赤軍は70年代に欧州で日本のビジネスマンを誘拐する計画を立てていた。そのアジア版というわけだ。彼らはテロ資金獲得のためには何でもする」。日本赤軍を追い続けた捜査官はそう語った〉。 捏造記事は作られるべくして作られたのだ。私は対抗措置をとる。受刑者をなめるな。 |
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