「戦争とテロについてのQ&A」

政治教育センター(USA)作成

2002年 1月15日
通巻 1098号

 WTCとペンタゴン、そしてペンシルベニアにおける9月11日の残酷な攻撃への報復としてアメリカ政府は、10月7日にアフガニスタン空爆を開始した。多くの人々が困惑し、憂慮し、そして恐怖したが、ニューヨーク市においては、1万人の人々が空爆が始まった日に、戦争反対のデモを行った。そして数千人以上の人々が、国内をデモしている。10月11日の国連に抗議するデモには、8人のノーベル平和賞受賞者が参加した。すべての人々が、真剣な質問を発しているので、ここに、いくつか回答を紹介する。(編集部)

政治教育センター(USA)作成(サンフランシスコ市バレンシア通り522)
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1 なぜアメリカは、戦争を行っているのでしょうか?

 今回の攻撃は、大量殺戮であり、最大限に罰せられるべきです。しかし、我々は公正さを保つために、罪を負うべき集団を特定する必要があると考えています。十分な証拠は公開されていないのです。
 仮にオサマ・ビン・ラディンが犯人だと証明されたとしても、幾人かの個人の行動のために国全体に対する戦争を行うことは、あまりにも多くの人間の生命を無視しているといえます。ビン・ラディンやタリバン政権とは無関係の多くのアフガン市民を殺すことは、9月11日に死んだ犠牲者を追悼することにはなりません。

2 戦争でないなら、政府は何をすべきだったのでしょう?

 まず第1に、犯人を確定するための調査を続けることです。第2に、アメリカは国際機関に証拠を示すべきでした。アメリカは、国際テロリズムの罪で非難されるべき人々を起訴するための特別法廷を設立することができたのです。アメリカも批准している国連憲章は、安全保障理事会が集団的自衛権の行使を認める権限を与えています。キーワードは「集団的」の中身です。テロリズムに対する闘いは全世界に影響を与え、テロに対するどのような行動も全国際社会から支援されるべきなのです。

誰も戦争から利益を得ることはないのでしょうか?

 軍関係の請負業者に加えて、ある企業は、もしタリバーンがアメリカに友好的な政府に置き換わったら大いに利益を得るでしょう。その地域には石油と天然ガスの巨大な埋蔵量が存在しており、ウノカルのようなアメリカの石油企業は、すでにアフガニスタンをパイプライン埋設の最適地であるとみなしています。そのプロジェクトは、ウノカルに何十億ドルという利益をもたらすでしょう。ディック・チェイニー副大統領は、世界で最大の石油企業で軍関係の請負業者であるハリバートンの前議長です。彼は、まだその領域で重要な事業上の利害関係をもっています。
 しかし、石油だけが唯一の利益なのではありません。ソ連の崩壊が、アメリカ合衆国を世界で唯一の超大国にしました。そのことは、今や、経済的競争相手とすべての資源の全的支配を主張することを可能にしています。アラブ世界からの挑戦を打ち負かすことは、世界を支配する力を強化し、軍を拡大することを正当化するのを許すでしょう。



4 戦争以外で、どうしてテロを防ぐことができますか?

 我々は、誰がなぜその攻撃を実行したのかは分かりません。しかし、世界中の人々が非常に怒っている多くの事実があります。将来の攻撃を防ぎたいなら、これらの根本原因に取り組む必要があります。
 例えば、イランにおいて、アメリカは民主的選挙で選ばれたモサド政権の転覆を支援し、およそ7万人の生命を奪ったシャーの25年におよぶ独裁政権をもたらしました。10年、前米政府はイラクに対する湾岸戦争を行いました。経済制裁は今日まで続いており、栄養失調と医療の不足から、毎月およそ5000人の子どもたちが死んでいます。
 1998年には、神経ガスを作るための化学物質を製造しているといって、スーダンの医薬品の半分を供給している工場をミサイルで破壊しました。その工場が神経ガスを製造していたかどうかは、決して証明されませんでした。これは、アメリカが外交関係をもっている主権国家に対して警告することなく行われた戦争行為でした。
 中東の多くの人々にとって、ビンラディンのような人々に共感する最大の原因は、パレスチナの占領を支持するために行っているアメリカの支援です。これは、何年にもわたる何十億ドルという軍事、経済援助を含んでいます。イスラエルは、パレスチナ人の家を破壊し、街を完全に消し去り、パレスチナ市民を大虐殺しながら、ユダヤ人入植地を建設し、拡大してきました。約1万〜1万2000のパレスチナ人が殺され、国連は360万のパレスチナ人が移住させられたと見積もっています。
 多くの人々が、9月11日の犠牲者は、アメリカの外交政策の犠牲者でもあると信じる理由はここにあります。

5 別の外交政策は、安全を十分保証してくれますか?

 現在のアメリカの政策は、第三世界の人々の大多数を貧困に押しとどめました。世界の人々のわずか5%が、世界の冨や資源の90%を支配しています。そして、そのほとんどがアメリカ人なのです。その驚くべき不平等を維持するために、政府は、法律と秘密情報機関と監獄制度を通じて自分自身の市民を抑圧しています。そのこともまた、テロリズムの体制と呼ぶことができるのです。
 我々は、貧困や人種差別主義や無数の不公正な政治体制のない世界をつくるための集団的な努力に加わる必要があります。長い目で見ると、アメリカにとっての唯一の信頼すべき安全保障体制とは、公正な世界、そして公正であるが故に平和な世界、つまり「人類の安全保障」と呼ばれてきたものです。

6 オサマ・ビン・ラディンが犯人なのではないのですか?

 オサマ・ビン・ラディンは、アフガニスタン政府を乗っ取るために1979年から1989年までソ連と戦ったムジャヘディンのメンバーでした。ムジャヘディンはサウジアラビアとアメリカから資金を提供され、CIAによって訓練されました。彼は、アメリカ政府のフランケンシュタインであり、我々すべてを悩ますために戻ってきたのです。

7 戦争に反対して、何かいいことがありますか?

 はい。第1に、ベトナム戦争に対する何百万人による反対運動は、戦争を終わらせました。しかしまた、今回のことは我々にとって好機でもあります。9月11日は、アメリカが暴威を振るうことや、今アメリカに蔓延している孤立主義者的な心的傾向への警告です。
 だから、この戦争に反対するために、我々が利用できる(デモから手紙を書くことまで)民主主義的過程を徹底的に利用し、そしてどのようなことが可能か、また他の選択肢について若い人々を教育しなければなりません。我々は、社会正義を求める長期の運動をつくるために組織化もしなければなりません。それに挑戦することが、9月11日の悲劇に対する真の解答でしょう。もちろん難しいです。しかし、これ以上に実行に値することが他にあるでしょうか。そして他にどのような真の代案があるでしょうか。

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