自治労の腐敗と
国労10月大会の意味するもの

呵々生

2001年 12月15日
通巻 1096号

 12月12日、自治労の後藤森重元委員長らが法人税法違反で起訴された。総額59億円に上る「裏金」捻出。その使途は後藤元委員長の自宅新築費用として2000万円の流用や地方幹部スキャンダルに絡む右翼対策費7000万円、総評分裂─連合─全労連結成時の内部抗争費、国会議員1人当たり1億円の選挙対策費…どれもこれもが、腐りきった労働官僚の保身や財産のために使われたものである。噂としてはこうした裏金の存在や闇対策費用として流れているということは聞いていたが、あらためてこうして白日の下に晒されると怒りを通り越して、これでやっと日本の大企業・本工中心労働運動も決定的な転換に向かわざるを得まいという呵々とした気持ちになってくる。しかし本来ならば、自治労内部(左派諸君)の決起によって、自らの腐敗を切開するべきであった。国家権力によって膿を切開されるというていたらくであったのはかえすがえすも残念である。
 ちょっと古くなるが10月13〜14日、国労定期大会が開かれた。ここで採択されたのは国家的不当労働行為への全面屈服を意味する4党合意による争議解決をめざす本部方針である。このことは国労が4党合意の最終目標であるJR連合との合併への道に踏み出したことを意味する。ついこの前まで我々と共に反弾圧や反合闘争など社会変革労働運動の先陣を切ってきた国労が、争議主体である闘争団を切り捨て、企業内労組への回帰に歩を踏み出したのである。
 自治労、国労といえば、戦後日本労働運動を領導してきた総評、官公労部隊の中核であり、その戦闘性と団結力は権力から「鬼」として恐れられたものだ。しかし、総評分裂に向かった当時の労働官僚の輩は、良心的(階級的)労働者を切り捨てることでその権力志向をますます強化し、グローバリゼーション進展の中で労働運動の展望を喪失し、自らの存在基盤を権力との協・共同(癒着)に求め、権力そのものに変わっていった。そういった意味で日本の労働運動は今日の状況を招いた責任の大きな一端を担っている。そのツケは、必ず労働者・人民に支払わなければならないが、いまだその支払う相手さえ見定めることができていないのが現状なのだ。
 これら2つの出来事は、日本の労働運動が圧倒的な数の中小・未組織労働者や層(マス)となってリストラされる解雇労働者を主軸にした労働運動として構築されることの必要性を明らかにしている。また一方で日本の人民運動に対しても、かっての反戦、反改憲闘争の大きな軸として存在した(と幻想した)既成労働運動の事実上の崩壊とそこからの決定的な転換の必要性を訴えている。そして、現段階で、新たな労働運動や人民運動の主軸となるのは、いかなる組織でもなく、容赦ない弱肉強食の競争社会に対し生存をかけて闘わざるを得ないあらゆる領域の人民の憤り、闘いの意志である。グローバリゼーションに対抗する変革主体としては、既成の階級概念ではなく人民という新たな概念が求められているのかもしれない。生活者でも市民でも、労働者でもなくもっと大きな枠で捉えられる有機的な人民の結合。これを具体化し、豊富化し、変革の主体として登場させていく試みが2002年の我々の闘いである。

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人民新聞社

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