貧乏人大反乱集団・松本哉インタビュー

馬鹿馬鹿しいノリで主義主張したら
こんな面白いことないだろう

貧乏人大反乱集団 同志募集!!

2001年 12月15日
通巻 1096号

駅前で鍋をやるというのは、
一番重大な最終目標。言ってしまえば
解放区をつくるということです。

 「貧乏人大反乱集団を作ってまして、最近貧乏人新聞 街頭版というのをつくりました」。おもむろにカバンから手作り冊子を取り出し配るのは、今年7年通った法政大学を卒業した松本 哉(27)さん。冊子はワープロ打ちあり、手書きあり、手書きイラストありの創刊準備号。ぱらっとめくって目につくのは、街頭で配っているというチラシ

意外(?)とまじめな顔つきの松本さん
意外と(?)まじめな顔つきの松本さん

 「貧乏人が世の中をひっくり返そう」、「株価大暴落金持ちざまーみろ」いう挑発的なスローガンを掲げ、人を集め、新宿アルタ前などで鍋をする。曰く「暴徒訓練」なのだそうだが、そう思って集まってきている人ばかりではなさそう。法政大学で「全貧連(全日本貧乏学生総連合)」初代会長として暴れ回った松本さんが、街頭に進出。「貧乏人大反乱集団」の同志を募集している。一体今度は何をやらかすのか?ご本人に話を聞いた。

(編集部)

ライン

警察が鍋を弾圧するっていう図が、もう面白い
― その鍋にどのくらい集まるんですか?
 結構集まりますよ。このあいだ新宿でやった時は70人ぐらい。身内を呼んだのもあるけど、半分以上はビラをみてやってきた人ばっかりでした。毎日1500枚くらい撒くんです。
―1500枚撒くって、結構キツイでしょう?毎日ですか?反応はどのくらい?
 毎日撒きますね。もう、大変です、朝、印刷に行って、毎日毎日ちょっとヒマできると印刷(笑)。手で撒くのはきついから、自転車のカゴにいれるんです。だいたい1時間くらいですよ。
「貧乏人新聞」街頭版創刊準備号の表紙 あと、非合法なんだけど本屋の中に入って売れ筋の本の中に勝手に折り込んだり(笑)、電車の中の吊り広告はがして自分のビラ吊ってくるとか。1500枚ぐらい撒くと大体10〜15件ぐらい電話かかってきて、そのうちの2〜3人は「俺もやりますよ」という人もいる。わりと反応はいいです。配ったあと駅で缶コーヒーとか飲んでる時に電話かかってきたら、「今まだ駅にいるから来ない?」とか言って会ってしゃべったり。
 あと駅前で鍋やってると通行人がどんどん来るから、それで「こういうのいいでしょう」とか話しをしていって、広げています。
―毎日ビラ撒きって、つらくないんですか?
 いやぁ、「これ撒いたら笑えるな」と考えると印刷も楽しくて。
 法政大学でやってた時は無理やり会議で「お前、何時な」って決めて、しかも集会連発過密スケジュールでそれをやってると、みんなスゴイ義務みたいに思って、だんだん疲労してきて、だめになったり、やめたりする人が多かったから、もうこれは俺が全部やったろうと思って。
―街頭で鍋をしてて警察は何も言いませんか?静かに鍋してるんですか?
 いや、メガホンでガンガンしゃべってます。音楽を大音量で流してるから結構うるさいし、でもそんなに文句は言われない。新宿っていうのがいいのかもしれないですね。
 弾圧が来そうな場所でやる時、例えば大久保周辺は警察が結構見まわってるんで、あの辺でやるときは教会の敷地で勝手にやって、「ぼくら教会の人間だから」って言う。「布教活動じゃまするな」って言って追い返したりして(笑)。向こうも「違うだろ」とか言えないらしくて、「わかりました」と言って帰りますね。
 だいたい、警察が鍋を弾圧するっていう図が、もう面白いじゃないですか。鍋を弾圧してる時点でもう俺らの勝ちですよね。

馬鹿馬鹿しいノリで主義主張したらこんな面白いことないだろう
―大学入る時から、何かやろうと思ってたんですか?
 そこまで明確には運動という意味では思ってなかったです。おもしろそうとは思ってました。でも危ないのかな とか、わからなかったですね。
 大学入ったときに、なんかこう「世の中、気に食わないな」というのはあったんですが、実際運動とかあまりよく知らなくてかったんで、まず新聞会に入って、ふつうにまじめにやってた時期があったんです。すごく堅苦しい文章ばっかり、昔の人のビラとか読んで書いたり。でもどうもなんか気に入らないというか面白くないんです。「これはすごい」という文章書いても誰も読んでくれないし!ゴミみたいに捨ててあったりとか。で、教授ばっかり反応したりね(笑)そういう意味のわからないことになってたから「面白くないな」と思って、馬鹿馬鹿しいノリで主義主張訴えたら、こんな面白いことないだろうなって。
 その一方で、キャンパスの学生は徹夜で鍋やったりしてるわけです、そういうところによく顔出しました。普通に議論ふっかけても、「俺関係ないよ」って言う人が多いと思うけど、鍋しながら話ししてたら、「こういうのどう思う 」と政治的なこと聞いても、「それはよくないよね」っ答えてくれることが多かったんです。それだったらそういう既成の活動のやり方は意味ないなと、直の人間関係を作って広げていって、それで世の中に訴えていく方が手っ取り早いし、効果もあるんじゃないかなと思いました。
 今の党派とかは、言うだけいって、やらない。いろいろ文句つけに行くときも、弾圧されたら絶対ひくし、弱々しいくせに、へんにひいたりするからほんと情けないんです。だから「夜間ロックアウト粉砕」だったら抗議するんじゃなくて、無理やり、ただ泊ってた方が手っ取り早いし、学食も乱入した方が速いし、もっと直接行動に出なきゃいかんなと。
 それで、学食が値上りしたら本当に乱入してました。「法政の貧乏臭さを守る会」というのを作って、いろいろやってました。キャンパス内で3週間くらいコタツや家財道具もちこんでちょっとした部屋みたいにして、夜は鍋をして、昼間も誰かダラダラいたり(笑)。他の大学でもやりたいという人が出てきたので、じゃあ全国の貧乏学生がひらきなおるという、全日本貧乏学生総連合を作ろうと。
 今は大学を出たので、大学は大学でやったらおもしろいとおもうけど、町は町でやったら非常に面白いですね。「俺はもう貧乏人だ」と「なんでこんなに虐げられなければいけないのか」と、ちょっとひと暴れしようと(笑)。万単位で街の中に集まってきた人といろいろやったらおもしろいと思って。

街の路上が生活空間になってて、金も物もないのに異常に楽しい
―街でやるきっかけというか、はじけたきっかけとかあるんですか?
 なんでしょうね…。中国に旅行行った時に、中国の街はすっごい活気があって、街の路上が生活空間になってて、金も物もないのに異常に楽しそうだったりとかするじゃないですか?テンションが違うというか。こう、飲み屋とかでカンパイしてるだけなのに、「カンパーイ」って、グラス割ったりしてる(笑)。
 あの辺を見たときは、日本の街の中はただの通路になってしまってて、みんな家のなかで自分のことやろうとしてるんだなと。それが日本の社会がつまんない原因だなぁと。だから、日本に帰ったらこれやろうと思ってましたね。
―「鍋」自体には政治的な意味はないですよね?
 あ、そうですか?ものすごい政治的じゃないですか。運動の発想にも関わることなんですけど、大きな社会のシステムを変えるとか変えないとかいうのを目指すためにいろいろ運動をやるというのは、ちょっとおかしいと思うんです。何がしたいかというと、いい世の中にしたい。いい世の中とは何か?というと、みんなやりたいことができて、みんながのびのびとできて、人殺しもなく、とかそういうことじゃないですか。そのためにそれをやるというのが一番の目標だと思う。だから、駅前で鍋をやるというのは一番重大な、最終目標。言ってしまえば、解放区をつくるということです。
 そのために、世の中の警察力が強すぎるんじゃないかとか、戦争ばっかりやってる軍隊よくないんじゃないかとか言えるんです。いきなり政治課題で集めるというのはちがうんじゃないかと思うんです。
―鍋というのは手段じゃないわけね。
 そうです、最終目標にいきなり直接行動に出てるという。(笑)
 いまだに理屈を完璧にしないと運動やっちゃいけないというのがあるじゃないですか あのへんをちょっと突破しないといけないなって思います。ヨーロッパのデモなんかでも、それこそ参考になるのは、参加してる奴が理論武装を完全にしている奴ばっかりじゃなくて、「あいつが悪い奴なんだ」というくらいの気持ちでも、デモに行って、「あいつを倒せ」ってやってるじゃないですか。実際日本でも社会を変える動きを作るときも、そういうのが大多数になると思うし、それでもぜんぜん悪いことじゃない。そういう人がどんどん、堂々と「俺は運動をやってるんだ」って言えるぐらいの雰囲気を作っていきたいなって思います。

×


 まだまだ叩けば、ホコリ…、いやいやたくさんのオモシロイ逸話が尽きないだろうと思える松本氏との会話は残念ながら終了した。
 ノリでもなんでも直接行動で訴える。そのパワーが世の中をおもしろくするのかもしれない。

[ 貧乏人新聞街頭版刊行宣言 | 「特集」〜その他へ

人民新聞社

このページは更新終了しております。最新版は新ページに移動済みです。