『検証 内ゲバ
―日本社会運動史の負の教訓』

いいだもも・生田あい、他/社会評論社

2001年 12月5日
通巻 1095号

 この本は、戦前の日本共産党から、戦後の新左翼運動まで連綿とつながる内ゲバやリンチという現象を分析したものである。内ゲバはかつて日本帝国主義との闘争を目指した運動の凄惨な負の部分である。できれば他人事ですましておきたいような、避けて通りたいような歴史だろう。
 なぜ今内ゲバを問うのか?それは日本において左翼運動後退の主体的要因だと考えられるからだ。もちろんそれは革命運動にとどまらず、反戦や環境保護運動のような広い範囲を含めてのことである。つまり内ゲバに至った思想的解明こそが必要になってくるというわけだ。
 そしてその思想的背景として本書で指摘されているのは「唯一前衛党論」だ。また民主主義の軽視、自らの手で民主主義を実践的・思想的につくっていくことの怠慢もそうだ。今アメリカによるアフガン空爆反対やイスラエルによるパレスチナ自治区占領などに対し、各地で反戦のうねりが巻き起こっているが、ごく一部には「市民主義」を掲げながら度し難い官僚主義に犯されているような人たちも見受けられるようだ。これまたこれまでの負の歴史の繰り返しだ。
 前々号まで連載されていた「上田総括」もそういった思想的中身を作り上げていることの重要性を問うていたし、氏の「結局新左翼も戦前―戦後の日共と同じ過ちを繰り返しているにすぎない」との指摘は、耳が痛くなるような思いだ。
 そういった意味で、本書はいわゆる革命家・共産主義者だけではなくて、過去のさまざまな運動から教訓を得たいと考えている広範な人々にも、一読をおすすめしたい。(いいだもも・生田あい・栗木安延・来栖宗孝・小西誠/社会評論社/345ページ/2300円+税)

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人民新聞社

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