解雇を容易にする
『解雇ルールの法制化』に反対する!

管理職ユニオン・関西書記長 仲村 実

2001年 12月5日
通巻 1095号

■ 小泉「規制緩和」路線に便乗

 政府・財界は、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」路線―雇用構造の大転換を、この間一気に具体化してきました。それは、高度成長時代を支えた終身雇用・年功序列の雇用慣行、いわゆる「日本的経営」「日本的労使関係」を大きく変更する方向性を打ち出し、雇用形態を大転換するため労働諸法改悪・制定を重ねてきたものであり、小泉内閣の「規制緩和」路線に便乗し、スピードを加速させています。
 この「規制緩和」は、正規雇用労働者を首切りし、リストラを大胆に進め、、総人件費・経費を大幅削減するというものです。その上で、必要な雇用、生産調整・人員調整は、派遣労働者やアルバイト・パートで穴埋めをするというものです。
 現実的には、大手企業の生産調整・人員調整は、下請け・孫請けの中小・零細企業の相次ぐ倒産となって現われています。解雇や雇用形態の大転換をやりやすくするため、保護法としての労働諸法の改悪、具体的には労働基準法・労働者派遣法・雇用保険法の改悪、産業再生法・会社分割法・民事再生法の制定として実行され、そして労組法の改悪までも目論まれているのです。
 小泉内閣は、「解雇ルール」作りの策動として「期限付き雇用(有期雇用)の対象拡大」「解雇ルールの明確化」の抜本的見直しを進め、具体化をはかりつつあります。これまでの「整理解雇の4要件」((1)高度の経営危機=「整理解雇」をしなければならない経営上の真の必要性があること、(2)解雇回避努力=「解雇」を避けるための努力を十分尽くしたかどうか、(3)人選の合理性=客観的、合理的な基準を設け、公正に適用していること、(4)協議義務=会社が労働者、労働組合と再建策について十分協議を尽くしたかどうか)による解雇制限、「解雇権濫用法理」による制限としてあったものを緩和し、「正当か否か」をめぐる労働者・労働組合の不当解雇撤回闘争を闘う余地すら奪おうとする動きです。

■ 企業の労働者使い捨てを容認

 12月11日、政府の総合規制改革会議は、規制緩和に関する今年度最終提言「規制改革の推進に関する第1次答申」を小泉首相に提出しました。医療、福祉・保育、人材、教育、環境、都市再生、流通、通信、エネルギーなど15分野です。そのなかの雇用問題にかかわる「人材」では、規制撤廃、解雇の基準やルールを立法で明示することを、つまり解雇がやりやすく、自由にやれるルールの法制化を提案しています。
 派遣労働の対象業種や派遣期間の制限については、「これを原則撤廃・解禁することも含め検討する」とし、解雇ルール問題をめぐっては「労働者が採用されやすい(企業が採用しやすい)環境の整備や再就職の促進に資するよう留意すべき」であり、「立法での明示を速やかに検討する」とし、裁量労働制については、「今年度中に対象業種の拡大を」としています。
 簡単に説明すれば、もともと労働者派遣事業は、職安法に基づく以外は禁止されていました。要するに、労働組合しかできなかったのです。それが、派遣事業法が制定されて26業務だけ認められ、その改悪が1998年に行われ、対象業種が「原則禁止・例外適用」から「原則自由・例外禁止」となり、港湾運送、建設、警備業を除き自由化される法律となってきた経緯があります。
 有期雇用期間は、これまでは1年間に定められていました。一部の業種で3年になりましたが、契約の反復更新でそれ以上の契約更新をするのであれば正社員に、つまり「期限のない雇用」にすることが努力目標になっています。しかし「努力目標」の現実は、会社・経営側が「期限がくれば、理由もなく」雇い止めができるとして実行されているのが現実です。この「期限のない雇用」になるとされてきた慣行、「努力目標」を完全に撤廃し、有期雇用契約の特例上限を現行3年から5年にしようとしているのです。またその対象も、「期限付き雇用(有期雇用)の対象拡大」とし、従来からの事務作業だけでなく製造業も含めすべての業種への派遣も認めるというものです。

■ 闘う権利を法律で圧殺

 「解雇ルール」の立法化策動としては、「解雇ルールの明確化」の抜本的見直しを、これまでの「整理解雇の4要件」による解雇制限、「解雇権濫用」法理による制限としてあったものを、一挙に緩和しようとしています。従来、解雇理由をめぐっては、「正当か否か」の争いが、労働3権行使(団体交渉や抗議行動)や地方労働委員会、裁判闘争として争われてきました。その闘う当然の権利を、法律によって圧殺しようというのがねらいです。
 われわれ労働組合がめざすのは、今回の「答申」とは正反対の方向です。これまでの「整理解雇4要件」、「解雇権濫用法理」をベースとしたものであり、労働者によほどの意図的悪質性がない限り解雇できないとする「解雇制限法」を求めているのです。

■ 闘いを放棄する大手企業組合

 小泉内閣の登場以降、 革命・情報関連の大手企業が本格的な退職優遇制度による正規社員の大幅削減に入っています。大手の企業内組合は、こうしたリストラに闘いすら組織していません。自らの組織人数減少をもたらし、失業者の増大をさらに加速させることにつながることがわかっていてもです。こうした企業内組合の無抵抗は、玉突きとなって下請けの中小零細企業の倒産を引き起こし、そこで働く労働者の未払いの労働債権すら確保できない現実から、大手企業の労働組合への不信と批判、併せて優遇制度で退職する大手企業の労働者へのひがみやねたみ、恨めしさを増幅させことになっています。このことは、中小零細企業に働く労働者をして「殿様リストラに腹が立つ」という言葉になって表現されています。
 労働者の分断に歯止めを打つための努力をし、資本・経営者にとって「解雇しやすく」、また「必要な時はいつでも安い労働者を雇える」雇用形態・構造にむかう「答申」に反対しよう!労働者の解雇を容易にする「解雇ルール」の法制化などの労働諸法の改悪に反対しよう!

 

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