自治体に外国人登録原票や
住民票の写し提出を強要

公安調査庁の破防法を
口実とした人権侵害を許すな!

豊中での取り組みで明らかになったこと

2001年 12月5日
通巻 1095号

 公安調査庁もリストラ回避のため必死のようだ。首をつなぐために仕事のアリバイ作り・ネタ探しに奔走している。公安調査庁が、自治体に対し「破防法」のこけおどしを使い外国人の「登録原票」、日本人の「住民票」を請求。自治体もほとんどがスンナリこれに応じていることが分かった。請求する側に「人権感覚」を期待するほど愚かではないが、「地方の時代」を担う自治体としてはかなりお寒い実状といえる。
 「在日外国人の人権と外国人登録法を考える豊中市民の会」広瀬正明さんに報告をお願いした。この調査、全国的に行われた模様。心配な読者は、個人情報保護条例に基づき情報開示請求を行ってみては。  (編集部)

在日韓国・朝鮮人、ロシア人、イラン人、トルクメニスタン人、
そして日本人も


全国各地で実施

 公安調査庁が「破壊活動防止法に基づく調査の一環」として、在日韓国・朝鮮人の外国人登録原票の写しを京都市から取り寄せていたことが発覚したのはこの8月でした。その後、外国人登録原票を公安調査庁に提出したのは京都市だけではなく東京都や大阪を始めとした全国各地の自治体であることが明らかになりました。
 この問題に対して各地の市民団体が「在日外国人の人権を侵すな」と公安調査庁や自治体に対して抗議の声をあげつづけています。国会でも取り上げられました。
 私たちは豊中でこの問題が明らかになった直後に市役所に行き担当課である市民課と話し合いをもち、その後9月にも話し合いをおこないました。当初は,交付依頼がきていないと話していた市民課は、個人情報保護条例に基づいて本人が情報開示請求しその事実が明らかになってからは「今年は来ていないが、昨年までは来ていた」と釈明し始めました。

申入書の提出と交渉

 私たちは申し入れ書を提出し、11月27日に豊中市と交渉しました。交渉には市民課と文化国際化課長等が出てきました。
 私たちは経過説明と謝罪を求めましたが、経過についての謝罪はあったものの、原票の写しの提出に関しての謝罪はありませんでした。
 この交渉で明らかになったのは、原票の写しを提出したのは1998年3人、1999年5人、2000年7人の、計15人分であったことと、提出したのが在日韓国・朝鮮人だけではなくて、ロシア人、イラン人、トルクメニスタン人の5ヵ国の在日外国人であったことです。
 また、日本人についても、住民基本台帳法と戸籍法に基づいて公安調査庁に今年度分を含め105人分の住民票を提出していることが明らかになりました。家族全員分の名前、生年月日、本籍、住所を交付し除票までも出していることが明らかになりました。

行政闘争の取り組み

 大阪でも京都でも東京でも兵庫でも市民団体が行政闘争に取り組んでいます。京都では各区民報に「先般の公安調査事務所からの依頼に基づく外国人登録原票の開示については、法令に基づいた処理ではありましたが、このことが外国籍区民のみなさんに大きな不安をもたらす結果になったことは誠に申し訳なく遺憾であります」という謝罪文が掲載されました。
 東京のとある区は「そもそも破防法27条に基づく請求とありますが、当区ではその理由だけでは原票は渡せません。そもそも破防法適用団体など存在しないのです。にもかかわらず、どうしてその対象がその団体の構成員であり、特定された事件の容疑者であることを確認できますか。ましてや、公安調査庁は調査のための機関であり、捜査権がないはずです。そのようなところに原票はわたせない」として断っていたことがわかっています。

提出は自治体の判断

 外国人登録事務は、昨年の4月から実施された地方分権推進法によって法定受託事務となって、国と地方公共団体は対等・水平の関係になっています。そのことを踏まえた12月26日の衆議院の法務委員会での社民党の植田議員の質問に対して、中尾入管局長は次のように答えています。
 「その手の請求につきましては、基本的には、その請求を受けた地方公共団体の方でその妥当性というものを判断することになるわけでありますので…市長の方が、それは妥当性がない、必要性がないというふうにご判断されれば、それはそれで1つの判断だろうと思います。それはそれとして、私どもとしては、そういうことをやったことについては尊重せざるを得ないと思います」

管理強化の流れの中で

 各自治体において、各地の闘いに学んだり国会の答弁を利用しながら、自治体に謝罪させることや外国人の人権を守る取り組みを強めていく必要があります。
 しかし、日本人に対する管理を問いなおす闘いがより必要になってきます。折りしも来年(2002年)の8月には、符番センターで決められた背番号が全ての日本人に送られてくることになっています。その2年後には「国民登録証」がつくられていきます。日本人も外国人と同じように管理されると言ってはおれません。そのときには外国人に対する管理はより厳しいものになるのだから。

申 入 書

在日外国人の人権と外国人登録法を考える豊中市民の会

 豊中市が今回明らかになったように、公安調査庁の外国人登録原票の請求に応じていたことに驚くとともに、不信の念を抱かざるをえません。私たちとのこの間の交渉や話し合いは何だったのでしょうか。豊中市は1986年12月に指紋押捺拒否を行った在日韓国・朝鮮人の外国人登録原票の写しを警察に提出し、在日外国人のプライバシー、人権を侵害したことについて、市民の会と交渉を重ねる中で反省し,以降、在日外国人の人権を守るという姿勢をとってきたのではありませんか。特に、7月と9月の話し合いでは「公安調査庁には外国人登録原票は出していない」との回答をえており、「さすが…」と思っておりましたのに、それが、今年の四月以降は出していなかった、というだけで、それ以前には出していたというのでは不信感はつのるばかりです。
 個人情報保護条例にもとづいて、当該が請求してはじめてわかったのであり不信感はなおさらです。住民である外国人の個人情報を平気で治安機関に横流しした、という点では全ての住民への背信行為といわざるを得ません。今回の公安調査庁の行為は、事件を特定することもなく、法的な根拠もあいまいなまま個人の重大なプライバシーを入手するという深刻な人権侵害にほかなりません。警察などの捜査機関が在日外国人の個人情報を自治体の外国人登録窓口から自由に入手していることについて、指紋押捺拒否の闘いのなかで改められ、登録原票にかかわるプライバシー保護、警察捜査対象の事件名、罪名などを特定する法的要件が厳密化され、昨年4月施行の改正外国人登録法にもその趣旨が条文に規定されています。
 私たちは豊中市が破壊活動防止法第27条に基づいて公安調査庁の外国人登録原票の請求に応じていたことに大きな怒りと失望と悲しみを持って断固抗議するとともに、今回の事態に対して以下の点につき誠意ある回答を要求します。

1、今回応じた外国人登録原票にかかかわる事実関係を明らかにすること。
2、破防法によって外国人住民の人権が蹂躙されることについての豊中市の見解を明らかにすること。
3、今回の公安調査庁の調査は、外国人に対する差別排外主義にもとづいて行われています。外国人についての情報開示の実数と日本人についての情報開示の実数を明らかにすること。
4、個人情報保護条例から見たとき、本人の知らないところで本人のプライバシーが公安調査庁によって収集利用されていることについて豊中市の見解を明らかにすること。
5、プライバシーを侵された当事者に対する対策を豊中市は明らかにすること。
6、公安調査庁の請求を受け提出していた所管課の資質について調査を行うこと。
7、外国人の人権を著しく侵害したことについて、豊中市として謝罪するとともに、今後このような形での原票開示には応じないこと。

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人民新聞社

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