「フリーターズユニオン」で
大量失業時代に立ち向かう

インタビュー

管理職ユニオン関西 書記長 仲村実さん

2001年 10月15日
通巻 1090号

―失業率が5%を越えたと発表されていますが。
 ◆仕事探すのを諦めている、潜在的失業者が約200(400)万人いると言われています。総労働者数が6千万人くらいですから、統計上の失業者である330万に潜在的失業者200万人を合わせると、実質的失業率は7〜8%くらいだと考えた方が実体に近いと思います。
 さらにNTT・大手家電メーカーなどの情報関連企業が、これから退職優遇制度等によるリストラに入ります。これまで、雇用創出の主力とみられていたIT関連の電機、素材部門も大幅なリストラが予定されています。大手の企業再編・リストラは、玉突きとなって中小零細を直撃します。関西の完全失業率は現在6.3%であり、特に中小・零細企業が多いので、影響は深刻でしょう。
 95年に日経連が「新時代の日本的経営論」を発表しました。バブル崩壊後、雇用慣行を大きく変えるための方向性を打ち出したものです。正規雇用を大胆に整理し、全体として総人件費を減らすというものです。その上で、生産調整・人員調整は派遣労働者やアルバイト・パートで穴埋めをしたり、下請け中小企業で調整したりするというものです。
 従来の、終身雇用・年功賃金・企業内組合の雇用構造が根本的に変化し始めています。
 労働界も大きく変化するでしょう。企業内組合が相当思い切った転換をしない限り組織率は下がり続けるでしょうし、旧来型の労働組合は、存立すら危うくなると思います。
 これが基本的な認識です。

―若年層の相談も増えているそうですが。
 ◆これまで、企業内労働組合と経営トップ側の中間にあって、給料が比較的高く、団塊の世代で数も多かった中間管理職は、企業からはじき飛ばすには一番扱いやすい層でした。管理職ユニオンは、企業経営陣から抑圧・弾圧され面倒をみてもらえず、かといって労働者としての保護も受けられない「管理職」を対象とした組合を立ち上げたから時代受けしました。彼らは、若い頃は低賃金労働者としてこき使われ、やっと管理職となって老後も保障されていると思っていました。ところが突然、ズバッと切られたという企業の非情さが浮き彫りになったという意味で世間に注目され、運動として発展しました。
 しかし、これから「新時代の日本的経営論」が実体化されていくと、その影響は中高年管理職層だけでなく、バブル期採用の30代の若年層にも拡がってきます。
 「職場トラブル」「職場いじめ」ホットライン相談活動後、相談内容も階層も年代も多様化しています。これまでは、ホワイトカラーの管理職という一定の層だったのですが、最近は派遣労働者も相談に来ますし、企業内組合に所属しながら管理職ユニオンにも二重加盟する人もいます。管理職ユニオンでも30才代が1割を越えました。20才代の若者も加入し始めています。


リストラ契機に会社人間・会社主義脱却
自分流の生き方発見

―大手企業の早期退職募集に殺到するという現象が起きています。6000人の募集がわずか2日で埋まるとか場合によっては数時間という話もありますが。
 ◆大手は退職金の割り増しなどができるので、まだ余裕があるし、労働者も会社に見切りをつけて良い条件の内に退職するという選択をしているのでしょう。経営側のリストラ、総人件費・固定費の大幅削減、正社員の削減路線に乗せられているわけですが、将来に対する安心感が大手企業でも崩れだしており、今辞めないと今後は割増率も下がるか無くなるのでは、と考えていると思います。これを機会に会社人間・会社主義から自分流の生き方を考えてみようというのもあるでしょう。
 しかし、中小企業ではもっと現実は厳しく、民事再生法の申請会社では、退職金の割増しもできないどころか未払いが生じるところが増えています。仕事を取り上げて、追い出すという乱暴なやり方になっています。職場の陰湿ないじめも増えていくことでしょう。

―今後の労働運動について。
 ◆正規雇用を減らして、総人件費・賃金を減らすというのが資本の側が進めている政策ですから、パート・アルバイト、派遣、有期という雇用形態が増えてくるのは時代の流れだと思います。が、そういう雇用形態であっても生活ができるという発想で政策を考えないといけないと思います。
 今話題のワークシェアリングも、大胆な発想転換をしないと日本社会では成り立ちません。時間短縮、最低賃金問題にしても、口先だけでなく、雇用形態(フルタイムであれパートであれ)に関わらず対等な労働者同士という実感を感じれるようでないと進まないでしょう。労働者が闘い取るという形での時間短縮なり最低賃金の引き上げを、生活や権利の問題とセットにして考えないとだめだと思います。
 管理職を結果的に拒否してきた私が、関西の管理職ユニオンの立ち上げを引き受け五年になろうとしています。皮肉にも20〜30代の子供たちの世代が少しですが加入し始めています。「フリターズ・ユニオン」、あるいは「若者ユニオン」という名前はともかく、生き方を含めた交流や議論をしながら、労働者同士が多様に結びつく機会を労働組合が提供できるのであれば、若い人たちが魅力を感じるユニオンができていくのではないかと思います。次の1年は、このユニオンの立ち上げに挑戦しようと考えています。こうした発想、実践が労働運動の再生につながると思っているからです。
 パート・アルバイトに限らず、ある日突然首を切られることが増えるわけですから、それに一矢報いるために労働組合を活用する。ストレスの発散であったり、仲間同士の協力の面白みであったり、自分の怒りをぶつける手段として労働組合が見直されるとか、そんな具体的で直接行動的な活動も必要でしょう。 

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人民新聞社

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