ジンドー的クーバク?!

爆弾落とした後にビスケットばらまいて「人道的」はない

2001年 10月5日
通巻 1089号

写真・アフガン難民 ブッシュが、アフガニスタンへの空爆を開始した。すでに民間人が多数犠牲となっている。ブッシュは、無関係の民間人を無差別に殺戮したという意味で、名実共にテロリストとなり、米国は大国としての威信も正義も失った。今回の空爆によって命を奪われたアフガン民衆、そして今もイスラエル軍により死傷させられ続けるパレスチナ民衆に心から哀悼の意を表したい。
 そもそも、今回の空爆は、(1)テロの犯人がオサマ・ビンラディン氏であるという明確な証拠が示されることなく、(2)彼らを匿っているという理由のみで、タリバン政権打倒を目的として、(3)民間人が犠牲になることは百も承知で行われた。ピンポイント攻撃などは、批判をかわすための方便であった。いくら正義面しようともその仮面の下には飢える第三世界民衆の怒りに怯え、故に威気高々に振る舞う専制君主の顔が見え隠れしている。
 ブッシュの言い草で笑ってしまうのは、これを「人道的」と呼んでいることである。爆弾を散々打ち込んだ後にビスケットをばらまいて「人道的」と呼ぶ者は、馬を鹿と呼ぶのである。事実アフガニスタン人は、「馬鹿にされている」と、投下された物資を燃やしているという。(編集部)


空爆で破壊されたもの、空爆で生み出されたもの

 空爆で破壊されたもの。それは、米国の「正義」と各国の民主主義である。また、生み出されたものは、反米感情と国家による監視と統制である。
 連邦最高裁の判決でわずか1票差で大統領に選出されたブッシュは、軍需産業に背中を押され、自らの政権基盤確立のために戦争に踏み切った。これは、前大統領クリントンがセックス・スキャンダルから逃れるためにイラク空爆を敢行した事実と合わせ、世界の民衆はみんな知っている。米国が「正義」の名の下に行ってきたベトナム戦争をはじめとする「悪魔の所業」があらためて思い起こされている。(「絶対零度の衝撃と戦慄」参照)

(1)空爆は民主主義を破壊する
 今回のWTCビル爆破事件に際して、ブッシュ大統領は「テロリスト本人だけでなく、それを支援し、かくまったりする国家もまた、テロリストと同罪だ」と断言した。ならばイスラエルの国家的テロを毎年30億ドルもの財政支援で援助し続けてきているアメリカ政府や、そうした外交政策の修正も求めず承認し支持してきたアメリカ国民(市民)も、ブッシュの言う通り、イスラエル政府のテロ行為と「同罪だ」と言わねばならなくなる。
 パレスチナ民衆は、妻や夫や兄や弟が、姉や妹が、父や母が、祖父母が、幼い乳幼児までも含む非戦闘員が50年にわたって殺傷されてきた。彼らも立派な「テロの犠牲者」である。
 今回のWTCビルやペンタゴンでの爆破事件を通じて、我が身にテロの危険が及ぶことの恐怖を真に理解したと言うなら、パレスチナ人の味わわされてきたテロの恐怖をも等しく非難してこそ、文字通りのアメリカン・デモクラシーを体現したアメリカ国民だ、といえるだろう。しかし、現在の、また、これまでの、アメリカン・デモクラシーが、如何にアメリカ国民しか視野に入れない「身勝手なデモクラシー」でしかないか、その偽善性が、見事に露呈した。
 刑事訴訟法では、「疑わしきは罰せず」「自白だけでは有罪の証拠とはしない」が原則となっている。今回の空爆は、明らかにこの原則に反している。民主主義の長い歴史の中で闘い取られてきたこれら原則を、アメリカをはじめとする「先進」国は自ら投げ捨てたのである。

(2)強化される市民監視

 世論調査機関ギャロップ社によると、ブッシュの空爆を支持すると答えた人が50%を越えた国は、アメリカとイスラエルのみ。他国は、20〜30%にとどまり、「平和的解決を目指すべき」との世論が多数派を占めた。この調査は空爆以前のものであるから、空爆後はさらに非戦派が多数となっているだろう。しかし、G7各国政府は、我先にブッシュの言う「報復戦争」に馳せ参じ、「できうる限りの協力」(小泉首相)を申し出ている。この一点を持ってしても今回の空爆で、民意による政治は破壊されたのである。
 今後、市民監視が、強化される。テロ事件後FBIは、全米のインターネット接続業者に対し、盗聴器の取り付けを要請した。また、マネーロンダリング防止の名の下、非体制的個人・団体の金銭出納をも国家監視の対象となる「大義」を創り出しているのである。近年進んできた情報公開の流れが押し返される可能性も既に出てきている。国家による情報の独占と統制、そして市民監視が強化される。

戦争反対!テロ対策特措法反対!の世論を

 

 今月28日にもテロ対策特別措置法案が成立しそうである。この法案は、米軍の戦争支援のために自衛隊を世界のどこにでも派兵できる内容で、敗戦という大きな犠牲の上に成立した日本の独自性を失うものとなっている。
 今こそ日本は反戦・反核の立場を打ち出し、空爆反対、法による処罰を求めて外交を展開すべきである。
 各地で反戦集会デモが呼びかけられている。これまで一度もデモに参加していなかった若い人たちもデモに参加し、彼らなりの方法で「反戦」を訴えようとしている。戦争反対!テロ対策特別措置法反対の声を地域で拡げよう。

 

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人民新聞社

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