中東現地レポート

ふつうの人たちの素直な感想は
「ざまあ見ろ!!アメリカ!!!」が圧倒的多数

2001年 9月25日
通巻 1088号

★「イスラエルとアメリカこそがテロリストだ」

 11日の午後5時前(レバノン時間)、「すごいぞ!! ペンタゴンが攻撃された!」と嬉々とした声で友人が知らせてくれた。「何をまた冗談を…」と思いながらながらテレビを点けてみた。「え !!ほんまかいや!! 」一瞬信じられない光景。
 「CNN」ニュースから飛び込んできた映像は、世界貿易センタービルが炎上している。さらに、世界貿易センターに2機目の飛行機が突っ込む瞬間や、ペンタゴンの様子などを繰り返し繰り返し放映している。
 「すごい!! どこの組織が実行したのか。やったー!! 」(日本語風に言うと)―最初に教えてくれたこちらの友人の第一声です。
 数時間してやって来た友人から、「テレビのニュースで、JRA(日本赤軍)とDFLP(パレスチナ解放民主戦線)の両方から実行表明が出てるらしいと言っているけど(両方から公式に関与の否定声明が出る)」とも教えてもらう。
 知り合いのインターネットカフェでは、「いつもはゲームをしにくるのが半分いたけど、その日はみんなインターネットで電話したりニュースを見たりしてた」とのこと。
 私が乗ったセルビス(乗合タクシー)の運転手は、私が日本人だと判ると「アメリカへの攻撃は、日本人がやったんじゃないか?」、「あの攻撃は、イスラムと日本人しかできない」と少し自慢気に言います。私は、少し困惑しながら「アメリカはハラーム(かわいそう)やね」と言うと、「広島のお返しじゃないか。パレスチナでアメリカとイスラエルがやってることを知ってるか?何が問題なんや!」という答え。
 「今までやりたい放題にやって来たアメリカが直接攻撃される。こんな痛快なことはない。ざまーみろアメリカ!」
 「今日もアメリカの武器でイスラエルがパレスチナ人を殺している…。思い知ったかアメリカ!!」
「イラクでは、今までに700万人(未確認)の人が殺されている。レバノンでも、かつてアメリカの砲撃で1分間に120人もの人が殺されたり(未確認)、アメリカ製の戦闘機の空爆で大勢の人がイスラエルに殺されている。日本でも広島はどうですか、1発の爆弾で数万人が殺されたでしょ。アメリカはそれだけのことをやってきたんですよ」
 「パレスチナやアラブをいつも『テロリスト』呼ばわりする。でも、ムスタファ議長(パレスチナ解放人民戦線議長)を暗殺したり、無差別攻撃をしているイスラエルを認めているのはアメリカではないか。イスラエルとアメリカこそがテロリストだ!!」等々。

★「アメリカはテロに対して戦おうと言っている。OKだ」

 いささか事態の大きさに困惑してる私の思考を大きく上回る答えが、当たり前のように返ってくる。
 「ブッシュ大統領が、今回の『闘い』を『十字軍のように…』との発言をし、あたかもキリスト教対イスラム教の闘いととられるような発言をしたらしい。すぐさま訂正し『テロリストが対象であり、善良で平和的なイスラム信仰に向けたものではない。アメリカの敵はイスラムの友人やアラブの民衆ではなく、テロリストのネットワークとテロ支援国家だ』と言い換えたらしい。さらに、ブッシュ大統領が『テロリストを資金援助し、保護する国。実行犯のテロリストと彼らをかくまう者との区別はしない』と言い、パウエル国務長官は『文明社会を攻撃し、罪のない市民を殺している』『すべてのテロ活動に対抗するための協力関係を確立するための世界的な努力を進める』と発言し、世界70ヵ国以上の国に同時多発テロの関係者の引渡し、各『テロ組織』の取り締まり、『テロ組織』関係者の逮捕・拘束、情報の提供等を要請した。レバノンに対してもヒズボラやアルカイダ、その他の組織の関係者への取締りと情報提供を求めてきたようだ。そうそう、JRAメンバーについての情報も求めてきたらしいよ」と、「私たちイスラムはテロリストなんだ」と、笑いながら友人が教えてくれました。
 別の友人は、「アメリカは、テロに対して戦おうと言ってる。OKだ。私たちはいつでも戦う用意はあるし、現に戦っている。シオニストというテロリスト集団とそれを支えるイスラエル、そしてテロリスト国家イスラエルを年間30億ドル以上もの財政援助を与え続け支援する国アメリカ。『テロリストを資金援助し、それを保護する国』イスラエル・アメリカに対して、世界の人たちと共同して戦いつづけるぞ !!」とも、ニコニコしながら言っています。
 事件発生後すぐ犯行表明が出されたものの、すべて正式に訂正され、わずか数時間後(当日夕方)には、アメリカ当局筋は「ウサマ・ビンラディン氏がテロの黒幕として疑わしい」と表明する。それ以後、何の物的証拠も明らかにされないまま、状況証拠のみによるオサマ・ビンラディン氏とその組織「アルカイダ」による犯行を示唆した報道が急増する。併せて、それを匿うアフガニスタン・タリバン政権に対する「報復攻撃」が当然のような報道がなされてきました。


★イスラエルとの戦いの継続

 こちらでも誰もが「どこが実行したのか?」、「誰がやったのか?」の話題で持ちきりだったようです。
 「パレスチナの各解放組織の今の力量では無理があるし、ひとつの組織だけでは無理があるのではないか?」、「ヨーロッパや各地の組織の合同作戦だったのではないか?!」「アメリカ国内の反政府組織ではないか?!」「ひょっとしたら、モサドとCIAの陰謀ではないか?!」等々。
 代表的な意見を拾い出すと以上のようなものでした。
 こんな意見もありました。
 「『力』を背景にした恫喝による一方的外交をごり押ししてきたアメリカ。『テロ関与の疑惑が濃厚』という『疑惑』だけで他国の領土にミサイル攻撃してきたアメリカ。そして、今回の事件で、国内的にも国際的にも『テロの撲滅』という『大義名分』を得たかのようなアメリカは、彼らが『テロ組織とそれを擁護する国家』と認知さえすれば、個人であれ組織であれ、国家であっても、いつでも攻撃できる『正当性』を手に入れたことになるのではないか」
 「イスラエルは、『テロに対する自衛手段』と称して、パレスチナ自治区を蹂躙し、自治政府要人・活動家を暗殺している。アメリカは、『テロの撲滅』と称して、アフガニスタンを蹂躙し、個人を暗殺しようとしている。イスラエルもアメリカも同じ穴の狢(むじな)だ」
 政府レベルの公式見解はさて置き、普通の人たちの素直な感想は、「ざまあ見ろ!! アメリカ !!」が、圧倒的多数です。
 26日、パレスチナではアラファト議長とペレス外相との会談が開かれ、段階的停戦で合意、治安協力の再開と自治区封鎖の順次解除を確認したものの、一部地域では衝突は激化しているし、28日に開催された各地でのアクサ・インティファーダ1周年集会においても、イスラエルとの戦いの継続が表明されています。        

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