「世界の警察」アメリカの一隅から

超大国の「悪魔の機関」

2001年 9月15日
通巻 1087号

情報公開の「例外」

 合衆国は、1965年のインドネシアでの反革命クーデターに関する機密文書を公開しだした。しかし、CIAが深く関わる事項は例外、すなわち公開しないという。この国がその悪魔性を最も発揮するのがCIAなどの隠密活動、汚い活動である。
 軍事独裁者として権力を乱用したスハルトだが、初期には「赤色クーデターを未然に防いだ」、「自由の旗手」という具合に奉り上げられた。いや、初期にとどまらず大統領の座を追われるほんの少し前までずっとそうだった。
 スハルトが軍事力をもって権力を強奪した際に、 が重要な役割を果していたのは周知の事実。ただ、どのようなことをしたのか、具体事実を把めなかっただけである。《多分、それが余りにも大きく、世間の目にさらすわけにはいかなかったから、今回の措置となったのであろう》といろんな人々が言う。しかもその発表は、スハルトによって追放された故スカルノ大統領の娘が新たな大統領の座に着いた日であった。皮肉としか言いようがない。
 残念ながら、隠されている事実を箱から出して見せるような魔術師的な能力などあるわけがない。通底するいろいろなことを考察材料として提供することが、ここでの目的である。
 先年、ロンドンで捕まりスペインの法廷送りとなるのか否かで世界の耳目を集めたのがチリの元独裁者ピノシェット。彼は、反革命クーデターを起こしたその過程で、そして軍事独裁体制下において数限りないほどの非人道的行為を展開した。そうしたことに唯一の超大国の悪魔の機関が深く深く関与していたのも、公然の秘密。当然ながら(?)、その内容は民主的な公開制から除外されている。

「帳簿操作」

 合衆国はまた、いろんな国に対して、人道人権に反してるとか麻薬がどうとかさまざまなケチをつけて非難し、あげくには軍事介入し、政権を交代させたりしている。
 現大統領の親父はパナマ侵攻を指示し、ノリエガの拉致、誘拐を行った。だが、麻薬犯罪などを裁こうとしなかった。ノリエガ政権とCIA、合衆国政府、そしてブッシュ自身との腐れ縁があまりにも強く、裁判は両刃の剣となるからである。かといって、イラン=コントラ事件のように恩赦にするわけにもいかなかった。次のクリントンでさえ、やはり放置しか手がなかった。《多分現ブッシュの任期末に恩赦だろう》と人々は推測している。正義の味方=世界の警察という看板を飾りつづけ、実態である悪魔性を隠しつづけるというわけらしい。
 ヴェネズエラで捕まり本国送還となった(失墜した我らがホープ?)フジモリの右腕モンテシノスもまた、悪魔の帝国にとって明らかにしてくれては困ることを仰山抱えているという。なんとかフジモリと日本に全てを押しつけて合衆国企業、政府は甘い汁にありつけるような「帳簿操作」はできないものか、と連中は画策していることだろう。
 南アフリカのダーバンで開催の国連人権問題会議で「シオニストは人種主義」と決議されそうなことに、この悪魔の帝国はゴネている。ユダヤは誰であれ「帰還」の権利があり、そこに住んでいたパレスチナ人にはそんな権利なんかない、という一例だけでも人種差別は明白なのに……。イスラエルが核を開発、保有し、生物・化学兵器をロケットを開発し、日常的に非人間的なことを展開している。が、そうしたことには知らんふり、逆に民主国家だと言いつのって庇護してはばからない。ユダヤ人脈もあるが、CIAとモサドの深い結びつきに注目して欲しい。そうすればダブルスタンダードのワケが簡単にわかるであろう。
 ある週刊誌にハーグの国際法廷に訴追されているクロアチアの将軍が、《自分は無実。それは一緒にやっていたCIAがよく知っている》と言っていたが、それを読んでわが友は、《これは逆にいかに汚い犯罪性を有しているかの自供じゃないか!》と大笑していた。         (小)

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