テロ犠牲者の遺族、ブッシュ大統領に手紙
「息子の死を戦争に利用しないで!」

「語らざる息子に代わって」

世界各地で「報復戦争反対!」の声

2001年 9月15日
通巻 1087号

 9月11日以降、ブッシュ政権は恫喝や懐柔、硬軟とり混ぜてさまざまな策を弄しつつ、「報復戦争」に向けた国内・国際世論の支持取りつけに必死になっている。しかし、世界の眼を釘付けにした「衝撃の映像」をバックにしたブッシュのヒステリーな叫びに、当惑しつつも同調していた国際世論も、ようやく徐々にではあれ「冷静さ」を取り戻し始めているように見える。「テロは許せないし、正義も必要だが、それは報復戦争とは別」、「犯罪の証拠を明確にすべき」、「国連での論議や決議を」、「国際司法の場での解決を」等々の声がアメリカ国内、世界各地で巻き起こりつつある。
 そして日本でも、アメリカに無条件に追従、文字通りドサクサ紛れに法律の拡大解釈や新立法、有事立法まで持ち出して戦争参加、「戦争のできる体制」作りにひた走る小泉政権に全国各地で抗議の声があげられ、政権内部からさえも慎重論が出されている。
 しかし、アメリカはアフガン侵攻の準備を着々と進めており、ブッシュ政権産みの親とも言える軍部・軍需産業を中心に、「この際、イラクなど『テロ国家』も攻撃すべき」との声が依然として燻っている。日本でも「千載一遇のチャンスと、眼が血走り興奮状態」というタカ派の政治家・役人共が、戦争参加に向けてひた走ろうとしている。
 これらハイエナの如き「戦争屋」に世界を、日本を蹂躪させるわけにはいかない。アメリカは報復戦争をするな!日本は戦争に参加するな!の声を、さらに!
 今号では、世界貿易センタービルで息子が行方不明になっている両親の手紙を紹介する。ロドリゲス夫妻の息子グレッグは、貿易センタービル犠牲者のひとりである。彼らは、この手紙とNYタイムズへの投稿ができるだけ広範な人々の目に触れることを望んでいる。(副見出し・編集部)

語らざる息子に代わって
2001年9月15日(土)

〈ニューヨーク・タイムスへの投稿〉
 私たちの息子グレッグは、世界貿易センタービルへの攻撃による行方不明者の1人です。
 最初にあのニュースを耳にして以降ずっと私たちは息子の嫁、私たち2家族、私たちの友人と近所の人、カンター・フィッツジェラルド・エスピード社の優しい同僚たち、そして連日ピエールホテルに集まり悲嘆にくれる被害者家族たち全員と、深い悲しみ、慰め、希望、絶望、懐かしい数々の思い出を分かち合うひとときを重ねてきました。顔を合わせるすべての人に、傷心と怒りが表れています。
 私たちはこの悲惨な事件の報道の流れを毎日は追っていけませんが、ニュースからは政府が暴力的な報復の方向に向かっていることは十分読みとれます。
 しかしそれは、遠く離れた国々の息子・娘・両親・友人が殺され、苦しむこととなり、アメリカ人に対する恨みを助長することでしょう。そういう方向に進むべきではありません。そんなことで息子の死は報われません。それは私たちの息子の死の仇を討つことにはならないのです。息子はそんなことを望んでおりません。
 私たちの息子は冷酷なイデオロギーの犠牲者として死にました。私たちは、彼らと同じ道を歩んではならないのです。今、私たちに必要なのは、死者を哀し、冷静に考え、祈ることなのです。私たちに必要なのは、真の平和と正義を世界にもたらす理性的な対応について考えることなのです。
 現代の非人間的状況をアメリカ国民が助長することはやめようではありませんか。

 

親愛なるブッシュ大統領閣下
他国の若者を苦しめないで!

〈ホワイトハウスへの手紙〉

 息子は、世界貿易センタービルへの火曜日の攻撃の犠牲者の一人となりました。私たちは、ここ数日のあなたの対応と政府の対応策についてニュースを読み、テロ対策として大統領に強大な権限を付与する上下両院の決議を知りました。息子を失った私たちには、この攻撃へのあなたの対応に、決して好感は持てません。むしろ暗澹たる思いに駆られます。
 私たちは、アメリカ政府が他国の若者や親を苦しめることを正当化するために我が息子の死を利用していると思えてなりません。大統領職にある者が強大な権限を与えられて、後で後悔する羽目になったのは今回が初めてではありません。今は、私たちの気を晴らすために、白々しい大げさな身振りをする時ではありません。ガキ大将のように行動すべき時ではないのです。
 私たちは、平和的で理性的なテロへの対応策を、人間性を失ったテロリストと同じレベルに私たちを転落せしめない解決策を、政府が案出されることを切に願います。

敬具
フィリーズ&オーランド・ロドリゲス

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人民新聞社

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