釜ヶ崎から

花見や天神祭りの度に
居住テントを強制撤去

行政の差別的対応が生み出すホームレス

2001年 8月25日
通巻 1085号

 今回は、天神祭りのためにテントを強制撤去されたホームレスの方たちのお話をしたいと思います。
 去年の天神祭りの頃からでしょうか、用事で天満橋のあたりを車で通行するとき、川筋に目立っていたテントが、いつの間にか全く目につかなくなり、祭りが終わった後、またポツポツとテントが目につくようになりました。今年の天神祭りでもやはりそうでした。ずっと気になっていたものですから、最近、川筋でテントを張っているホームレスの方々に話を聞いてみました。
 大川の川筋にテントを張って3年になるというホームレスの男性の話では、毎年天神祭りの10日前ごろから、大阪市の職員が来て「テントをたたんで低くするように」と、言うそうです。「仕方ないのでテントをたたんで、下流の天神橋の方まで持って行く」とのこと。テントのない間は、近くの公園で野宿したそうです。「1度テントをたたむと、再度同じようにテントを張ることは難しいんですよ。テントに穴があくし、雨もりするでしょう」、「本当はテントを動かしたくはないんですけどね。移動するのも大変なんですよ」、「私たちの所は年1回の強制立ち退きですが、もっと上流の人たちは花見の頃にも立ち退きさせられるんですよ。気の毒なことです」…等々。
 強制立ち退きについては、国連でも「してはいけない」ということになっています。ホームレスの人たちも、同じ人間として花見や祭りを楽しみたいのです。仕事もなく、生活保護も適用されず、自分の力だけで空き缶を集め、その日の糧としている人たちを、どうして大阪市はその場所から追い出さなければならないのでしょうか。
 川筋で野宿している人たちに聞いてみたところ、その半数以上の人が釜ケ崎の日雇労働者でした。仕事がなく、やむなくこの場所でテントを張っているとのこと。国や行政が釜ケ崎の日雇労働者に仕事の保障や生活保護(居宅保護)の適用を行わない結果、多くの人たちが野宿せざるを得なくなっているのです。日雇労働者に対する行政の差別的対応がホームレスを生み出すのであり、ホームレスの人たちには何の責任もありません。
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▼「絆通信」102号/釜ヶ崎炊き出しの会発行/tel 06―6631―7460

 

大阪弁護士会人権擁護委員会 様
人権侵害の救済申立書

 私たちは、大阪市中央区の大川にかかる天満橋と天神橋の間にある天満橋緑道に住居を有しています。本年7月24日、25日にわたって行われた天神祭りに伴い、本年7月18日までにその住居を除去するよう市の職員に告げられました。自分たちが除去しない場合は、大阪市が私たちの住居を処分するというものです。
 私たちは住居をたたみたくはありませんでしたが、処分されては困るとの思いで、各自で住居をたたみ、天神橋のたもとに運んで置き、シートをかけたり、堤防の上にナベやカマ等の日用品を置き、それをシートにくるんだりして大変でした。祭りの当日には、天神橋のたもとの出入口にガードマンが立ち、出入りできなくなりました。天神祭りの終わるまでの間は、近くの公園等で仮眠しなくてはなりませんでした。
 私たちの基本的人権である安心して住める権利を踏みにじって、楽しい天神祭りができたといえるでしょうか。私たちは仕事さえあれば、言われなくても仕事に就きます。この不況で仕事に就けません。やむなく、廃材やシート等で住居を作り生活をしているのです。ここに住む人の半数近くは釜ヶ崎の日雇労働者です。申し立ての1人である稲垣浩は釜ヶ崎地域合同労働組合の委員長および釜ヶ崎焚き出しの会代表として、長年、釜ヶ崎日雇労働者の労働相談や生活相談を続けてきた者です。
 生活保護も受けられずに、誰の世話にもならず、空き缶などを回収して一生懸命生きている私たちの住居をどうして大阪市は排除しなければならないのですか。大阪市は自らの責任を果たさず、天神祭りを理由に私達の住居を排除したのは人権侵害だと思います。大阪市が同じことを繰り返さないようしかるべき措置をとって下さい。(8月27日、 稲垣浩さんら12名が大阪弁護士会人権擁護委員会に申し立て。)

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