〔大阪府島本町〕

清掃工場・ゴミ処理をめぐり疑惑や問題が続々と明るみに

「丸投げ」による税金の浪費、下請け業者との

癒着、管理運営のズサンさ・私物化、セクハラetc.

住民や市民派議員、労働組合が改善求め追究を開始

2001年 7月25日
通巻 1083号

 大阪府の島本町が今、町の清掃工場(粗大ゴミ処理施設)で働いていた委託会社の労働者が解雇されたことをきっかけに揺れている。委託業務の「丸投げ」、下請けをめぐる利権争い、工場管理の杜撰さや私物化、女性労働者へのセクハラ、等々、関連する問題が次々と明らかになり、議会でも取り上げられたのだ。島本町は大阪府の北部にあり隣りは京都府、今年4月の町会議員選挙で女性議員の割合が全国トップになり全国的に注目を集めた町。経過と問題点を取材した。
二重の「丸投げ」で委託料の半分をピンハネ・山分け

 町議選の終わった4月末、委託業者潟^カダ(大阪市北区)の社員として清掃工場で働いていたHさん(女性)は、会社から「今年の入札では仕事が取れなかった。5月1日から堺市の別の事業所に異動してほしい。それができなかったら、辞めてもらうしかない」との通告を受けた。島本町の住民で中学生の子供もいるHさんにとって、2時間余も通勤時間のかかる堺市への転勤命令は、解雇通告に等しい。そのうえ、一緒に働いていた社員6人のうち3人は、そのまま清掃工場で働けるというのだ。
 どうしても納得できなかったHさんは、北大阪合同労組(以下「北合同」、本部箕面市・tel 0727-25-4001)に相談を持ち込む。北合同は直ちにタカダに対し団体交渉を申し入れ、「Hさんを今まで通り島本の清掃工場へ残す」ことを要求すると共に、実態調査に乗り出した。その結果、看過できない問題が続々と……。
 その第1は何と言っても委託業務の「丸投げ」。
 島本町では従来、ゴミ焼却炉の維持管理・運転、粗大ゴミの処理をユニチカが随意契約で一括して請け負ってきた。ユニチカの前身、日紡の工場が島本町にあって(現在は閉鎖)、町の大企業の1つであったため、以前から何かと町当局との癒着が噂されてきた。その関係でユニチカがゴミ処理業務を独占してきたのであろうことは、想像に難くない。町行政とユニチカの癒着は、今回の事態でユニチカから天下りで助役を迎え入れる計画が頓挫したということもあって、それはそれで大きな問題なのだが、今のところ置いておくとして、問題はこれから。
 ユニチカは2000年度まで粗大ゴミ処理を、日本ヘルス工業(株)大阪支社(大阪府吹田市)に下請けに出し、更に日本ヘルスはタカダに下請けに出していたのだ。現場で働いていたのはHさんらタカダの社員で、典型的な丸投げ。ちなみに北合同の概算では現場の労働者の人件費は契約額(2000年度で約5300万円)の半分にも満たず、その分をそれぞれの業者がピンハネしていたことになる。
 島本町は「丸投げ改善のため」との理由で、2001年度から粗大ゴミ処理のみを入札制にする(焼却炉の維持管理・運転は従来通り随意契約でユニチカ)。入札には前記3社を含め7社が参加、3960万円で本来は警備業務などが本業の轄o(大阪府高槻市)が落札した。落札価格は町の最低入札価格(4158万円)を下回っており、「丸投げ改善のため」という町当局の言い分は通っているかのように見える。ところが、5月から現場で働いていたのは、何故かこれも入札に参加した(株)キャリアマネジメント(大阪府高槻市)の「所長」と称する管理職1名と作業員3名、そしてタカダの作業員3名で、高浄の人間はゼロ。丸投げは全く変わっていないのである。

業者と癒着、実体隠す町当局

 北合同は町当局に対して「委託業者の丸投げ実態の解明と改善、および下請け業者の従業員の職場改善」を申し入れたが、回答は「この件は1企業のことであり、回答できない」。しかし、これは大嘘。契約業者が高浄になったため、高浄が現場作業員の経歴書を町に提出しているのだが、表面を取り繕うためにタカダの社員も形式的にタカダを退社して高浄の社員になったことになっており、しかもその経歴書は町の役人が書いている。つまり、町当局は公文書を偽造してまで丸投げに協力しているのであり、その責任は重大。

目にあまる工場長の工場私物化
自宅建て替えの産廃まで規則を無視して持ち込み

 2つ目の問題は、工場管理の杜撰さと私物化、そして女性労働者へのセクハラ。清掃工場のT工場長は36年勤務の「古狸」で、好き勝手のやり放題。
■工場管理のズサンさ・私物化
▼産業廃棄物は受け入れないことになっているにもかかわらず、独断で受け入れ。自宅を建て替えた際の廃棄物まで持ち込み放置(ちなみに、北合同がビラでこの事実を暴露すると一夜にして消えた)。
▼プラスチックや不燃ゴミも規定に反して燃やし、視察などがある時は「燃やすな」と指示。
▼休憩室やロッカーを私的な物置として使用。
■セクハラ
▼Hさんら女性労働者に肩揉みを強要。
▼同じく女性労働者に「飲みに行こう」としつこく誘い、断られると仕事でイジメやイヤガラセを繰り返す。
▼耐えきれなくなったHさんらが2年前、担当部局の管理職に直訴するも、適切な処理をせず。
 ……等々。いずれも「問題外」と言わざるを得ないが、町民にとって特に気にかかるのが産廃やプラスチックの問題だろう。大阪府のダイオキシン調査では、島本町の焼却炉は基準値内ではあるものの府下では高い方で、改修が予定されている(ユニチカが請負)。もしそれが運営の杜撰さに因るものであれば、ことは工場長個人の問題を越えて、町当局の責任が問われねばならない。

業者団体「北協」が組合にピント外れの恫喝

 そして最後に下請けをめぐる利権争いの問題。
 Hさんの相談を受け北合同は当然、島本町に対しても前述の要求書を提出したのだが、そこで突然登場してきたのが、業者団体の「北協」(大阪府高槻市)。タカダの管理職が「北協の門田という人物が、北合同にビラまきをさせるなと言っている」「この人はいわゆる『闇の人間』で何をするかわからん人」「ビラまきをすればどんなことが起きても責任を持てない」等と北合同に対して恫喝をかけてきたのである。さらにタカダはHさんに対しても「町議会の傍聴をやめろと北協が言っている」と脅迫。
 島本で配布された「北協TODAY」によれば、「北協」は「北大阪地域で事業を行う企業の地位向上と発展を計り、各地の文化活動と福祉活動に貢献」することを目的とし、所轄地は「兵庫県の一部を含む北大阪全市」。本紙の調査によると、「北協」は建設・土建・工事などの新興業者団体で、右翼や暴力団などとも関係があり、既成の利権争いに強引に割り込んだため抗争も絶えなかったようだ。本紙でお馴染みの摂津信用金庫理事長・大木や高槻京都ホテルのオーナーなど、地元財界の支援も受けていると噂されている。
 「北協」が突然しゃしゃり出てきた理由はキャリアマネジメントとの関係で、要は談合・利権を引っかき回されたくないというのが本音。「北協TODAY」では、「弱小業者のため」「セクハラの場を見た人は誰もいない」「町は裁判所や警察に訴えて、事の善し悪しをはっきりさせるべき」などと必死に町当局をヨイショ。「北協が本当に弱小業者の地位向上と発展のことを考えるなら、組合にピントはずれな恫喝をかけるより、丸投げの廃止を一緒に町に要求すべき。丸投げのシワ寄せは下請け業者と労働者に押しつけられるのだから」と北合同のNさん。
 先の島本町議会で、市民派議員が「丸投げ」問題とセクハラ問題について町当局を追求した。が、町当局は「丸投げのそれぞれの段階での請負料の金額を明示せよ」との質問には「いわゆるトンネル会社ではないので差額は発生しない。ユニチカも企画調整などの仕事をしているから丸投げではない」、「ユニチカは契約違反をしてきたのだから、指名入札業者の登録からはずせ」に対しては「法的には違反行為はない」等、具体的なことは一切答えずごまかしに終始。セクハラについても「臭いものに蓋」の無責任さ。
 Hさん自身の解雇問題は「円満退社」ということで決着したものの、基本的な問題は全く解決しないまま。Hさんは7月、セクハラとイジメについての実態再調査、そして清掃工場の労働環境改善を市民派議員らと共に町長に申し入れた。北合同も「丸投げ」禁止や委託労働者の労働条件改善をを要求し続けている。さらに、この間明らかになった清掃工場の実態に不安を抱いた町民から、ダイオキシン調査を要求する声もあがっており、波紋は様々に広がっている。本紙もひき続いて追及していきたい。

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