今、アメリカの監獄は精神病院がわり

患者は治療を受けるかわりに

罰を受けている

アメリカ・菊村 憂

2001年 3月15日
通巻 1071号

 

 全体がシーンと静まりかえっているので、小さな音もすぐ響いてきます。下の階からでしょうか、絶え間なくトントコトントン、トントンと同じ拍子で壁を打つ者がいます。これで3日目です。1日中ずっと同じ拍子を繰り返すのです。多分スプリング・フィールド送りなのでしょう。
ミズリー州のスプリング・フィールドには連邦の刑務所病院があり、外傷・内傷・内病・精神病全ての病の重症者が送られます。今、アメリカの監獄は精神病院がわりになっているともいわれ、全部で合わせて200万ともいわれる囚人のうち、その1/5から1/4は精神病を患っているといわれます。フローレンスのADXも、シャワー室は鉄板製で、打てばグゥアーンと大きいドラ以上の音でそこら中に響き返り、ずーと離れた舎房にも聞こえてくるのですが、薬がきれるとそれを2時間も3時間も打ち続けるのです。
 それはADXにいる時でしたか、寝静まった午前1時ころ、突然階上の囚人の薬が切れ、それをやられ、真下の階にいたボクの房内は、朝方5時近くまでグゥアーングゥアンと響きまくっていました。
 今回のマリオンでは一晩中「演説」をやったり、ある時、突然にエクソシストの女の子に悪魔がとりついたあのシーンのように、悪魔の声のようにして、呪いの声を上げたりする者もいました。それを聞いていると、科学や精神医学のなかった中世、人々が悪魔が人間にとりつくのを信じたことは十分に納得できました。
 またマリオンでは、医療助手が1日1回は回っていて医者は回ってこないのですが、精神科医は3日に1回は回ってきていました。10人前後しかいない舎房で4〜5人がその患者なのです。ADXにしても似たようなものでしょう。
 端的にいって刑務所は彼らを治療する所ではありません。彼らは彼らの病ゆえに治療を受けるかわりに罰を受けているのです。
 社会が正常ではないが故に―競争の中での不幸に対しての報復感情を満足させることを最高の政治とし、そのような汚れた政治のもとで、犯罪に断固とした報復を加えることで満足させることを最高の政治とし、そのような汚れた政治のもとで、犯罪に断固とした社会を歌い上げ、それで囚人、犯罪者に断固として報復を加えることで満足する社会。すなわち、社会の痛みを実質的に変えることなく、人間の報復感情と消費資本主義社会の物質的裕福さで満足する社会であるが故に―政治は犯罪人と囚人を作り上げ、すなわちそのような社会に必然的に伴うドラッグの病にかかった者を犯罪人に仕立て、そして精神の病にかかった者を犯罪人に仕立てあげます。それだけでなく、そのような政治は更にそのような犯罪人を囚人とさせ、奴隷とさせる監獄そのものをアメリカの一大産業に仕立て、アメリカの病そのものを国家のシステムとさせ、資本主義化させているのです。それが今日のアメリカの姿なのです。
 現にアメリカの囚人の50%近くがドラッグ関係で、20%〜25%が精神的病に患る者たちです。そして今や、刑務所の民営化=資本主義化は、今日のアメリカになくてはならないものになってます。そのようなアメリカの一大産業となったプリズン・インダストリーの要になるのがこのオクラホマ中継刑務所であり、底辺で保証するのがマキシマン・プリゾンのフロレンスのADXなのです。


(編集部より=アメリカで服役中の菊村憂さんから日本の支援者に宛てられた手紙から一部を抜粋して紹介しました)

 

「ムーブメント」〜反弾圧・救援活動へ

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