労働基準監督署はいったい誰の味方なのか?

 労働者保護の責任義務を果たせ! 

北大阪合同労組が抗議・追及行動

2001年 1月25日
通巻 1066号

申告しても長期間放置、引き延ばし、会社にばかり配慮

 「労働基準監督署はいったい誰の味方なのか 」―労基法の改悪をはじめとして労働者の権利が次々と剥奪されつつあるなか、労基署の現状、役割についてはマスコミでも問題にされているが、昨年末、大阪北摂地域を中心に活動している北大阪合同労組(北合同・本部=大阪府箕面市)が、淀川労働基準監督署に対して「労働者保護の立場に立って責任義務を果たせ!」と抗議行動を行った。

 

 合同労組が相手とする企業は、ほとんどが小零細企業や個人企業で、労働法が守られていないところばかり(もっとも大企業も同様、もっと酷いところもあるが)。その分、労基署に告発したり相談に行ったりということがどうしても多くなる。ところが、その肝心の労基署の対応が大いに問題あり。長い間ほったらかしにしたり、ズルズル引き延ばしたり、会社にばかり遠慮や配慮をしてみたり……。
 抗議行動はこうした事態に言わば「豪を煮やした」北合同が、まず当面する争議の担当監督署である淀川労基署に対して行ったもので、事例は「おかきとおはぎの丹波屋」と居酒屋を経営する「つやしん」の2つ。
 具体的には――

 

◇(株)おかきとおはぎの丹波屋


 街角でよく見かける丹波屋。販売員は一応社員になっているのだが、労働条件はメチャクチャ。
▼会社のマニュアルには、8時50分入店、夜7時30分退社ということになっているが、「もっと売れ、業績をあげろ」という締めつけがきつく、朝7〜8時から夜8〜9時まで、休憩時間も取れずに働きづめ。店にはタイムレコーダーもなく、会社は労働時間を把握しておらず、一律4万円(月)の残業代を支払うだけ。が、月に23日以上働くと残業代が未払いに。
▼たてまえは「週休2日」だが、月26日くらい働くことが多い。
▼給料は、基本給9.5万円に諸手当を入れて十数万円。一つの手当が上がると、その分他の手当を減らすということの繰り返しで、結局、総額は固定されたまま。
▼その他、年休をごまかす(会社は正月休みを「年休」と主張)、イベント(5月のチマキ、暮れのモチ等)期間中の長時間労働、等々。
 組合は昨年6月、販売員が個人的に日々の始業・終業時刻を書き込んでいた手帳を証拠として提出、申告したのを皮切りに、計3件の時間外手当て未払いを申告。労基署は、会社が労働時間の管理をしていないことは認めたものの、「会社側の主張と食い違いがある」と半年近くも引き延ばしている。

 


◇(株)つやしん


 申告内容は「時間外手当未払い」「年休を認めず賃金を支払わない」。申告者はコックさんで、午後3時〜5時までが休憩時間ということになっていて、その間に従業員が食事をとるのだが、買い出しから調理までをやらされており、これは業務であると主張。労基署も「業務であることは濃厚」と言いつつ、「社長が本人と話したいと言っている」、「社長が外国出張中」との口実で3ヵ月もほったらかし。

×  ×  ×

 その他にもこれまでの事例をあげると、ヒドイ話が目白押し――
▼45万円の残業代未払いを会社側が9万円しか払わず、茨木労基署に申し入れ。労基署は会社に「時間外労働についての考え方」を講釈しただけで、「あとは当事者で話し合ってほしい」。
▼労働者が自分で淀川労基署に給料未払いについて相談。労基署は会社を呼び出し、4人分の全額支払いを命令。しかし、会社は一部しか支払わないため、組合へ相談に。再度申告したところ、労基署は「払ったものだと思っていた」とトボケタ返答で、すぐに動くのかと思いきや、解決まで2ヵ月間。それも組合に相談にきた人の分だけで、残りの3人については放置。
▼テレフォンセールスの会社で解雇され、中央労基署に相談。労基署が会社に問い合わせたところ「自主退職」と主張。解雇の際に「離職票に必要だから印鑑を」と言われ、押印した書類の中に退職願いがあったらしい。ちなみにこの会社は、衣服の通販会社と結託、 サイズを買った客にダイエット商品を売りつける詐欺みたいな会社で、解雇の手口も詐欺師並。しかし労基署は打つ手なし。
 ……などなど。


労基署は、「疑わしきは罰する」であるべき!


 北合同の抗議に対し、労基署は「我々にもジレンマがありまして…」、「やってはいるのですが、会社の主張との間に食い違いがあって…」、「その件については担当者が今いなくて…」、「後ろ向きといわれてもしようがないところもある…」などと、クドクドしい言い訳に終始。中でも問題発言は「疑わしきは罰せず」。「労働法は労使対等な関係では出発していないという前提があり、考え方は逆さま。監督署がそんなスタンスだから、悪い事業所や経営者が安心して法律違反をする。労基署の立場は『疑わしきは罰する』であるべき」と組合側はカンカン。
 具体事例への迅速な対応・処理を厳重に申し入れて当日の抗議行動を終えたものの、労基署の対応がすぐに変わるわけでもなく、北合同では「労働者の立場に立った対応」を要求して、今後も各地の労基署への監視、抗議行動を続けていく予定。


▼連絡先/北大阪合同労働組合/箕面市西少路4―2―2/tel 0727―25―4001

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人民新聞社

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