「報償費」(機密費)は減額・公開あるのみ

自民党議員・官僚の

「報償費」つかみ取りに終止符を!

2001年 3月15日
通巻 1071号

 
 

1996年度

97年度

98年度

金額 構成比 金額 構成比 金額
皇室費 96 1.3 173 2.3 172
内閣 1516 20.1 1518 19.9 1518
警察庁 136 1.8 175 2.3 136
防衛本庁 373 1.8 175 2.3 136
検察庁 28 0.2 1.7 0.2 18
外務省計 5354 70.9

5354

70.2 5434

(外務本省)

2 0.0 2 0.0 2

(在外公館)

3518 24.3 1836 46.1 3518
厚生本省 2 0.0 2 0.0 2
海上保安庁 13 0.2 43 0.6 15
労働本省 1 0.0 1 0.0 1
消防庁 35 0.5 53 0.7 15
合計 7549 100.0 7627 100.0  

 

各省庁の「報償費」決算額

(単位:100万円、%)

 

*両年度とも100万円未満の省庁は省略している。このため、各省庁の金額を合計しても合計額に一致しない。

 

 

 

 外務省要人外国訪問支援室長・松尾克俊による公金横領事件は、松尾の懲戒免職、「要人外国訪問室の廃止―内閣官房総務課への移管を決めただけで、「外交機密費」の減額も、情報の公開も一切なされないまま幕が降ろされようとしている。国会における野党の追究にも、政府は「公開すると行政の円滑な遂行に重大な支障が生じる」との公式見解を頑として繰り返すばかりで、外務省の調査報告書の内容以外は一切明らかにしていない。4月1日、情報公開法が施行されるが、政府は、請求があっても公開しないと決めている。地方自治体における「交際費」が、非公開とされた当初の経過と同一である。
 70億円あまりの税金が、使途不明のまま食い潰されている。官僚の個人的飲み食い・「国会対策」として野党を含む国会議員へのばらまき、自民党の選挙資金流用など数々の疑惑があり、今回その一部が明らかになったにもかかわらず、依然その使途は全く闇の中である。使途を明らかにできない税金の費消は、憲法の会計原則からいっても許されない。「機密費」と呼ばれている「報償費」は本当の目的を再定義し、公開を原則とすべきである。

機密費と報償費、内閣官房と外務省


 機密費とは、明治時代からの遺物で、現行憲法上では「会計検査」の原則上許されない支出である。すなわち、「会計検査院は、すべての決算を検査しなければならないから、旧会計検査院法で機密費の検査を除外したような事例は、現行憲法下では認められない」のである。
 現在は「報奨費」と衣を変え、11省庁で計上されているが、総額75億円のほとんどは、外務省の54億円と内閣官房の15億円(うち2億円は内閣情報調査室の報奨費)で、官房費の実質は13億円。
 しかし、外交機密費のうち15〜20億円が官房機密費に上納されていた。これは国会の議決を経ない予算操作で、財政法32条の「目的外使用の禁止」に反するものである。と同時に、国会でも度々問題視されてきた官房機密費の増額を隠すため、外交機密費が代わりに増額されるという実体も明らかになった。

何に使われているか?


 「報償費」は、「広く内政、外交の円滑な推進を図る上において、これに関し功労、協力および努力のあった者などに対して、その功労に報い、さらにそのような寄与を奨励することが望ましいと思われる場合において、その状況に応じ、最も適当な方法で支出する」ものというのが公式答弁。
 しかし、実際には総理の外遊に同行する官僚や政治家への餞別、野党への国会対策費、政治評論家や右翼団体への「対策費」、果ては官僚の料亭遊興費や総理の個人的な趣味の買い物まで指摘されている。97年には、「外務省官僚、2億円着服疑惑」が報じられ、高級官僚が、夜な夜な高級料亭で遊興し、全て「報償費」から支出されているとの疑惑が浮かび上がっている。

消費税導入と官房機密費


 さらに、1988年の報奨費は、5億円(内閣分1億円、外務省分4億円)増額されている。翌年89年には、消費税が導入されており、この5億円は、消費税導入のための「対策費」だといわれている。89年度も同額増額されているのだが、89年は、消費税予算を巡り国会が空転していたのである。
 事実、内閣官房が作成した「報奨費について」という文書では、「5億円が増額されているが、これは、税制改正のための特別の扱いである」と書かれている。新税制とは、言うまでもなく消費税である。消費税の産みの親は「官房機密費」だったのである。

交際費と化した官房機密費


 政府は、「報償費」非公開の理由を述べて次のように言っている。「公にすることにより国の安全が害されるおそれ、他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ、または他国もしくは国際機関との交渉上不利益をこうむるおそれがある」と。
 しかし実際は、「公にすることにより、官僚の飲み食い、議会対策としての議員への金のばらまきなどがバレて、自民党政府の安全が害され、国民との信頼関係が損なわれるおそれ、または、選挙上不利をこうむる」のをおそれているのである。
 「報償費」は、「機密費」などという虚仮威しの呼称はやめ、「交際費」として、原則公開とすべきである。「報償費」の減額・公開を実現するには、まず夏の参院選で与党を敗北に導くことである。そして自治体「交際費」がそうであったように、情報公開を求める市民運動の発展が、政治権力による公費の私的流用にとどめを刺す力である。

(終)

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