4月16日、桃ヶ池公園(阿倍野区)で、テント生活者と大阪市南部公園事務所の大衆団交が行われた。桃ヶ池公園では、2月にテント村を取り囲むようにフェンスが設置された。「閉じこめられた」テント生活者は、簡易はしごでフェンスを乗り越えて行き来しなくてはならず、出入り口を開けるか、スペアーキーを渡して欲しいと要望している。
「俺たちは、誰の世話にもならず、アルミ缶を拾い、段ボールを集めて自立生活している。公園に住ましてもらっているから、できるだけ邪魔にならないように掃除もしてきた。何をしてくれとは言わない。ただ、そっとしておいて欲しいだけだ」(テント村住民)
この日の団交で南部公園事務所の山中係長は、「要望を検討させて欲しい」との回答にとどまった。オリンピック誘致を進める大阪市は、会場予定地の長居公園をはじめとした市内の野宿者テント撤去を進めている。今回のフェンス設置が、「公園管理」を名目とした「テント生活者排除」であれば許されない。
「真綿で首絞」の大阪市
桃ヶ池公園は、大阪市南部の阿倍野区桃ヶ池町にある三つの池に囲まれた一角で、南北最大600メートル、東西最大300メートルの公園。池があるため地形も変化に富み、多くの人が集う。野宿テント村の歴史も古く、敗戦直後から地域と共生をはかってきた。テント村住民は、「長年、テントまわりの整理と掃除をキッチリとし、公園を使う皆さんに迷惑をかけないよう、心がけてきた」という。
長池公園と共に桃ヶ池公園のテントの撤去が始まったのは昨年9月。JRの高架工事のためとして仕切り鋼板が設置され、この時多数のテントが撤去された。4月現在では、30程の小屋やテントが残っているが、半数以上がフェンスにより出入りが阻害されている。
この日の団交には、長居公園や「大阪キタ実」(北区のテント生活者らの支援組織。夜間パトロールなど行っている)などからも30数人が集り、テント村住民と公園管理事務所との交渉を見守った。
公園管理事務所からは桃ヶ池公園担当の山中係長・岩本副所長ら3名が出向き、少し離れたブランコの辺りで公安2名が様子を覗き見するといった状況で団交は、開始された。
公園管理事務所側は、(1)フェンスは、池への転落防止のために設置した、(2)テント生活者に対しては、福祉事務所や自立支援センターへの斡旋を行ったなどと説明。しかし、テント住民からは、「長年の生活実態があるのに、事前の説明もなくなぜ工事を開始したのか?自立支援センターへの入所は初めて聞いた」などの批判が出され、(2)については、実際にはなされておらず、あらためて説明することとなった。
この日の団交でテント生活者からは、(1)速やかに扉を開ける、もしくは、一定の時間、扉を開けて欲しい、(2)スペアキーを渡して欲しい(関井公園では、地元自治会との話し合いの結果、スペアーキーが渡されている)、(3)高齢者が多いので、この機会に希望者には生活保護なども視野に誠実な対話を行われたい、との要望が出され、管理事務所は「検討する」と回答した。
「共生」を断つフェンス
金網フェンスがテント村を取り囲む―いかにも異様だ。テント生活者がアルミ缶や段ボールを運ぶための自転車は、フェンスの外に置かざるを得ず、盗難やいたずらが危惧される。彼らは、「自転車を入れたいがフェンスに寄せてそのまま置かざるを得ず、通行の妨げになっているのが忍び難い」と語る。
公園は、人々が集い交流するひろば。桃ヶ池公園のテント村住民は長年にわたり地域との共生をはかってきた。「臭い物に蓋」式の大阪市の対応によりテント村住民は追い出されようとしている。地域住民とテント村住民が創り上げてきた共生関係を今、鉄条網が断とうとしている。
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