元海兵隊員が語る「反戦」の迫力

5/5「大阪国際空港への米軍機乗り入れに
反対する市民ネットワーク結成集会」

2001年 5月5日
通巻 1075号

 5月5日、大阪・伊丹市のいたみホールで、「大阪国際空港への米軍機乗り入れに反対する市民ネットワーク結成集会」が開かれ、かつてアメリカ海兵隊員としてベトナム戦争に従軍した経験を持つアレン・ネルソンさんが講演を行った。
 ネルソン氏の「反戦」の拠り所となっているのは、海兵隊としてベトナムへ赴き、侵略者の役割を負って戦争を戦った、想像を絶した文字通り血なま臭い体験である。
 ある日、彼は任務中に、防空壕の中で偶然ベトナム人の出産シーンに遭遇した。戦争の中で邂逅した、生々しい「生」の迫力に、彼はそれまで「兵士」として有無を言わさず叩き込まれてきた、ベトナム人差別や帝国主義的価値判断といったものが間違いであったと気づく。除隊後、戦争後遺症に苦しみ、精神的ケアーを受けて、非戦論者となるに至った。
 軍隊とは言うまでもなく、戦争をするためのものである。戦争は心優しきヒューマニズムの場ではない。そして国家は、戦争を遂行するために、多額の税金をつぎ込み、来る日も来る日も兵士に暴力を仕込み続ける。殺人マシーンに仕立て上げる。兵士がプライベートな時間を過ごすために基地の外に出ても、兵士である限り、刷り込まれた「暴力」だけをおいてくることは不可能だ。
 沖縄で米兵によるレイプ事件や、暴行、犯罪などが起こるのは、まさに兵士が兵士であるが故の当然の帰結に過ぎないのである。基地と軍隊に蹂躙されている沖縄の姿は、アメリカの人々からさえも異常なものに見える。
 ネルソン氏は「憲法9条は世界の誇り」だと語る。9条が奪い取られれば、その次に来るものは徴兵制なのだと。
 この間、日本政府がゴリ押しして成立させた国旗・国歌法は、それを背景に自衛隊を海外に送り出そうとするものであり、盗聴法は反戦運動などで活動する市民を監視するものでしかない。これらの先に来るものは極めて危険なものである。

 その他、彼の話は、簡潔でありながらも、ガイドライン法の問題点や、兵士として勧誘される社会の「最下層」としての黒人の問題、反戦は1人1人の心の中からの勇気が求められるといったこと、国際交流のこと、戦争は儲かる機会づくりであること、等々…といろいろな方面に及んだ。
 彼の経験と精神的苦闘は、衝撃的な重みをもっている。この迫力の前には、そういった具体的な体験によって裏打ちされることのない机上の「反戦」論でさえ色あせてしまうのではなかろうか。もちろん、いわゆる自由主義史観から語られる「大東亜戦争肯定論」など論外、小林よしのりの『戦争論』などインクで汚した紙の束でしかない。
 まやかしの「戦争美化論」を飲み込む、豊かな内実を持った、大きな反戦・非戦のうねりを創り出そう!


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 「大阪国際空港への米軍機乗り入れに反対する市民ネットワーク」の連絡先は、代表・戦争はいらない伊丹市民の会(芳田・070―5046―2558)

(小比類巻新)

(→関連記事 「大阪空港への米軍機乗り入れに反対」)

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