Nシステム訴訟控訴審

「Nシステムニュース」第18号

2001年 5月5日
通巻 1075号

 Nシステム訴訟の控訴審の第1回口頭弁論期日が5月7日の午前11時30分に東京高等裁判所の810号法廷で開かれることになった。
 一審判決後、市民のプライバシーに関連する重大なニュースにいくつか接した。名古屋ではコンビニエンスストアの監視カメラと警察署をオンラインでつなぎ、コンビニ側がスイッチを入れれば画像が警察に届き、不審人物かどうかのチェックも得られるシステムが実験的に開始されたとのことである。この手の「サービス」を警察が大々的に打ち出したら、24時間「強盗」などの犯罪の危険にさらされているコンビニ側は一斉に飛びつくだろう。銀行もこれに倣うと思われる。そうなると我々市民の日常は常に警察の目にさらされることになる。見られて困ることがなければかまわないという人がいるが、本当にそうだろうか、と思う。
 外国人スチュワーデスの監禁致死事件ではNシステムの情報が重要な決め手の一つとなったと紹介された。けれども私が驚いたのはそのことではなく、被告人が使用していた携帯電話が、常に(あるいは定期的に)その所在地をNTTに情報発信していたということだ。つまり、NTTから見れば携帯電話はその所在場所を知らせる発信機のようなものなのだ。確かに幼児や介護が必要な老人に携帯電話を持たせて所在を確認するシステムがあるのは知っていたが、普通の携帯電話も全く同じ機能を持っているということを迂闊にも認識することがなかった。警察が個人の携帯電話の所在地の履歴を照会したら、その所持者がいつどこにいたか、半径数百メートルの範囲で正確につかむことができるのだ。
 我々がNシステムの危険性を訴え、訴訟を行っている間にも、我々市民の情報はどんどん丸裸にされていたわけだ。個人情報の保護に向けたルール作りをもっと真剣に考えなければならない。

(原告・原告代理人/弁護士・桜井光政)

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