サミラ・マフマルバフ監督/2000年度/イラン映画/85分/配給・オフィス北野、アーティストフィルム/3月より上映中、6月29日まで大阪、以下京都・福岡・神戸・金沢・岡山・札幌で順次公開予定

映画評

ブラックボード
―背負う人―

2001年 6月25日
通巻 1080号

 映像は、黒板を背負った男たちが、岩肌がむき出しになった山道を歩いている場面から始まる。ここはイラン=イラク国境の山岳地帯。彼らは爆撃で学校を失った教師たちで、生活に困窮している彼らは黒板を背負い、読み書き算数を教える子どもたちを求めて旅しているのだ。途中別れ別れに旅を続ける彼らの中の2人の教師が出くわす出来事を織りなした人間ドラマである。
 教師・サイードは、イラク政府の迫害で故郷クルディスタンを追われ、故郷へ戻ろうと険しい山道を越えようとする老人たちに出会う。もう1人の教師・レブアルは「運び屋」として密輸の仕事をしている子どもたちに出会う。2人は、出会った相手に教師として読み書きや算数を教えようとするが、どうも思ったようにはいかない……。
 難民の置かれた惨状を根底に、教師・老人・少年たちがそれぞれの「もの」を背負い、何を目指して、どこへ歩いていくのか …と考えさせられる映画だ。また険しいながらも壮大な山岳地帯の映像を背景に繰り広げられる物語はどこか幻想的ですらある。
 そして今、それぞれの場所にいる私たちも、何を背負い、どこへ歩いていくのだろうか?

(小比類巻 新)

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