「首相公選」で人気のある
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京都・渭原武司 |
2001年 6月25日
通巻 1080号
「小泉人気」一体あれは何か。小泉首相が東京都議選で自民党候補者の応援に行く先ざきで、大勢の人が集まってきて手をふり、声をあげ騒ぎまくる。聴衆の中には首相演説をきくよりも、こんな自分の姿をテレビに映すのが目当てだったのか、メディアの影響も大きいのではないか。新聞によると、ある主婦が「今度の都議選は小泉さんがいる自民党に入れます」と話し、男子学生は「これは何の選挙ですか
」と首をかしげた(6月16日付、朝日、朝刊)そうだ。ともあれ、「小泉改革」に期待はしても、その中身はわかっていない。これは危険だ。
私は少年時代「国家革新運動」にあこがれ、何度も特高の取り調べを受けてきた。この苦い体験から言えば、いつの時代にも困難な情勢を打開するためには、強力な指導者の出現を求め、それに期待するものだ。昭和10年代に近衛文麿は革新のホープとして人気の高まるなかで2度も登場したが、革新意図の過剰と結果に対する無責任さによって日中戦争を泥沼化し、さらに一国一党の新体制(大政翼賛会)は軍部ファシズムを強化し、太平洋戦争への道を開く役割を担った。
第一次世界大戦後のドイツでもヒトラーが登場し、第三帝国を建設して国民の支持を高めたが、未曾有の独裁者になって国土を廃墟にした。彼は演説がうまく巧妙な宣伝活動によって頭角をあらわし「大衆の支持をえようと思うならば、彼らをあざむかねばならない」と側近に言っていたそうだ。いまの日本で「首相公選」になったら、はじめは人気のあった彼のようなデマゴーグが当選し権力を握ったら、歴史はくりかえされるだろう。
(終)
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