『アメリカの労働運動の挑戦 ――労働組合とNPOの世直し作戦』 |
『ユニオンバスター ―米国労務コンサルタントの告白』 |
柏木宏 著(労働大学・1400円) |
マーティン・ジェイ・レビット/テリー・コンロウ 著(緑風出版・2500円) |
2000年 7月25日
通巻 1050号
●歴史の遺物から歴史の創造者へ 95年に起こったアメリカ労働運動の大転換は、「歴史の遺物から歴史の創造者へ」と評されている。「歴史の遺物」とは、1950年代には35%のピークに達した組織率は、70年代には28%に低下、さらに現在では15%に過ぎなくなったことに顕著に現れている。民間部門では10%を割り込み、資本との交渉力、社会的・政治的影響力も極度に低下した。 ●1995年に何が起こったか? アメリカ労働総同盟産業別会議(AFL-CIO)は、史上初めて選挙で執行部を選出。戦闘的なスタンスで知られたジョン・スウィーニーが会長に選ばれた。彼は、「労働組合は運動であり、理念である。ビジネスや労働官僚のための組合であってはならない。新たに労働者を組織することにしても、組織維持の必要性という観点からではなく、労働組合の倫理的な必然性から取り組まなければならない」と呼びかけ、パート・アルバイト・派遣労働者の組織化に取り組んだ。 ●グローバル化の中の日本の労働運動 「アメリカ労働運動の挑戦」は、復活をめざすアメリカ労働運動の「今」を伝えるのみならず、変化を生み出した労働者の生活実体、そして如何に変革の主体が形成されたかも概観する。今、日本で「『連合』が変わるか?」と問えば、幻想と言われ、「『連合』と共に」と言えば、相手にされない。しかし、
AFL―CIO も95年の転換までは、労資協調路線の元で白人男性主義・組合幹部の腐敗がいわれ、まさに「歴史の遺物」「翼賛組織」でしかなかった。
「ユニオン・バスター」は、日本では「労務ゴロ」と呼ばれる。どちらも「労務コンサルタント」と自称するが、違いは、社会的ステータスだろう。米国では、堂々と広告を出し、一流ユニオンバスターは、1週間で数百万円を稼ぎ出す。高級住宅街の邸宅に住み、飛行機を乗り回して全米を転戦する。 (評者・平野光一) |
[ 「書評」トップへもどる ]
人民新聞社
このページは更新終了しております。最新版は新ページに移動済みです。