大道寺将司が語る確定囚人のすべて

 獄中は娑婆の虚飾を容赦なく引き剥がす、

   囚われた者の実像をさらけ出させるところ 


2000年 12月5日
通巻 1062号

 ぼくが収監され続けているのは、死刑囚や1・2審で死刑判決を受けた者たち、また長期刑が予想される者たちが大半を占める階で、他の階に比べて監視が強化されているため、いわゆるおえら方たちも収監されます。そして、そのつど堕ちた虚像を目にすることになります。
 古くは、ロッキード事件で元首相田中角栄とともに逮捕された大手商社丸紅の重役、伊藤某と大久保某。リクルート事件で逮捕された文部省と労働省の事務次官。証券会社の総会屋への損失補填に端を発した政・官・金融界の癒着と腐敗で逮捕された都銀や証券会社の元会長や重役たち。そして、大蔵省のキャリア官僚。最近では、現職の参議院議員や元建設大臣の中尾某。毛色の変わったところでは、足の裏診断とやらで巨額の金を集めたという新興宗教の教組などが同じ階の近くの房に収監されました。
 彼らにとって獄中の辛さはひとしおだったようで、みな悄気返っていました。部下を叱りとばすやり手と評判の重役が、面会に連行される際、若い看守に気合を入れられてへどをもどしたり、尊大な元大臣が、食事の際、食器の出し方が違うとか遅いと雑役囚に怒られておどおどしていることがありました。暖房や冷房のない独房暮らし故、夏には短パンやランニングシャツ、冬には綿入れ姿になるのは、死刑囚も彼らも変わらないのですが、そんな姿で運動場へと向かう彼らは、それまでの威光など見る影もない、しょぼくれた老人でしかありません。20代で税務署長を体験したという大蔵省の若手官僚も、喧嘩や窃盗などで雑居房に入れられる者たちと見分けがつきません。権威づけて見せる背広とネクタイがないと、彼らはだだの人≠ニなるということなのでしょう。天の啓示を受けたと公言する教組は、ドーナツやまんじゅう、そしてヌードグラビアだらけの週刊誌に目のない俗物で(教組というのは大体がそのような者たちですが)、信者たちがこの姿を目にしたら盲信も醒めるだろうといらぬ節介心が起こるほどです。
 彼らを見ていて感じるのは、獄中は娑婆の虚飾を容赦なく引き剥がすところだということです。囚われた者の実像をさらけ出させる、と。
 反体制、反権力の闘いの中で囚われた者と、体制側の一員でありながら羽目をはずしたり、足の引っ張り合いに敗れて囚われた者を同列に論じることはできませんが、試練にどう対処するか、あるいはどうしてはいけないかということを、彼らの獄中でのあり様は見せてくれます。彼らは反面教師ではあります。

(要旨)

▼「キタコブシ」 88号より
▼連絡/東京都保谷市北町2―3― 太田方/Tel 098―832―7271

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人民新聞社

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