ファリンティル(東チモール民族解放戦線・FALINTIL)は、東チモール内で解放区を建設中との情報もみられるが、避難民の保護に重点を置いており、ファリンティルは闘いをしかけていない。インドネシア軍人や警察を殺せば、インドネシアのキャンペーンに使われることを知っているからである。けれども「人々を殺し続けるならば、そしてこの情況に世界が無関心ならば、次の行動をとらなくてはならない」とも言っている。
ファリンティルの代表であるシャルル・グスマン氏の声明を、IFET-OP(国際東チモール連盟投票監視プロジェクト日本事務局)から提供していただいた。インドネシア国軍の卑劣・残酷さとの対比は悲しいほどに鮮明だ。
※(1999年)9月9日、グスマン氏の父親が、併合派民兵に偽装したインドネシア国軍特殊部隊によって虐殺されたとの訃報が入った。哀悼の意を表するとともに、あらためてインドネシア国軍を糾弾する。
(編集部) |
◆チモール・ロロサエ国家の建設
親愛なる東チモールの兄弟姉妹・同胞へ/和解と民族の団結/東チモール国家の建設
◆市場・経済開発・行政・教育
市場経済/経済と社会の発展/開発を促す財政政策/海外からの投資/行 政/訓 練
◆協調外交・国際関係
ASEAN及びインドネシアとの関係/ポルトガル及びCPLPとの関係/国際関係/民族解放戦士たち
◆最優先事項
恩赦と寛容/国における機能の継続/定期的供給の維持/生産レベルを保つこと/インドネシアとの協議
◆親愛なる東チモールの兄弟姉妹・同胞へ
チモール・ロロサエ国家の建設
■親愛なる東チモールの兄弟姉妹・同胞へ
数日後に、東チモールの人々は国連が組織した民衆協議において、自らの将来を民主的に選ぶべく投票を行う。文化の確認のための、そして自らの将来を自らが選ぶという決意に基づく、東チモールの人々の闘いの歴史の長い一節が結末を迎えようとしている。
我々の祖国の独立を目的とした栄誉ある闘いに、何千もの自由の戦士たちと無名の市民が愛国的な献身をもって参加してきたことは、何世紀にもわたる我々の祖先の闘いの精神を表している。自由の名の下に自らの生命を捧げてきた人々の英雄的な行いと決意は東チモール民族の血となっている。何世代にもわたって、悲しみは尽きず、家族は破壊され、困難が続いてきた。
■和解と民族の団結
分断の中で、不和と憎しみに傷つけられていては、チモール国家は誕生できない。
過去の政治的立場がどうであれ、全ての市民に、調和の必要性を理解し、国民の利益のために兄弟姉妹に対して許しと忍耐を示すよう、ここに呼びかける。今日までの困難が我々の未来を邪魔する暗い影として残り続けることがあってはならない。
我々の民族は、最も忌むべき行いをした者を含め、全ての人が許すことができるならば、より偉大なものとなるであろう。この重要なときにお互いの違いを乗り越え、憎しみを捨て去るよう私は我々全員に呼びかける。抱擁し、兄弟姉妹として愛をもって手を繋ぎ、切ることのできない鎖を作ろう。チモールの未来が喜びと繁栄に満ちたものとなるために、民族は団結しなくてはならない。
平和と和解、理解、調和は、我々の祖国の政治的安定のため、社会的経済的進歩のために不可欠である。私はここで、全ての市民に、より不運で恵まれなかった人たちへの親愛と連帯を示すよう呼びかける。来るべき新しい時代において、全ての東チモール人の力が、我々の大部分に見られた悲惨と未発達状態をなくすために不可欠である。
■東チモール国家の建設
文盲をなくし、近代的でかつ自足できる経済に基づく繁栄した社会を建設することがこれからの中心課題となる。我々の祖国を強くするために、全ての東チモール人が持てる技術と情熱をつぎ込むよう呼びかける。
独立を求める我々の闘いの目的は、政治的あるいは宗教的信条、人種、肌の色、社会的あるいは文化的起源に関わらず全ての人に対して、平和と民主主義と繁栄とをもたらすよう務めるチモール・ロロサエ国家を建設することであった。
大憲章にも書かれているように、チモール・ロロサエ国家は、人権、男女平等、そして各種国際協定や条約で規定されている言論と情報、集会の自由に関する普遍的な原則を尊重する。
独立は法の設置によって形をなす。チモール・ロロサエ国家は権力の分立を尊重し、司法権の独立を擁護する。
チモール・ロロサエ国家は、個人や集団などにより合法的に取得された土地や物の所有権を尊重し、経済活動に従事する人々の経済的・社会的活動を奨励する。
チモール・ロロサエ国家は公共と個人の利益、社会と個人の目的をバランスをとって調整する法を発布し、人々と物資の移動の自由を保障する。
市場・経済開発・行政・教育
■市場経済
自足のための経済発展を促すために、チモール・ロロサエ国家は、平等と公平性、効率を保証するために選択的に国家が介入する市場経済の発展を提唱する。国家は社会の全ての側面にわたり、私企業の建設を、特にチモール人への援助を強調して、奨励する。
チモール・ロロサエの低開発状況を克服することは、決意と忍耐、そして個人的及び集団的な強い努力を要する難しい仕事である。資源の不足と高い文盲率は心配の種であるが、低開発状況を克服するための熱意と意志がこれにより損なわれることはない。
■経済と社会の発展
政治的・経済的発展のために、東チモールの人々の大部分に関連する地方の開発を優先した生産性の向上を図る。
地域の総合的な開発は、町と村の強化、生活水準の向上、生産性を向上し、その結果として農業生産、物資の交換を促進する技術の導入に基礎をおくが、それにあたっては、常にバランスと環境への配慮をおこなう。
チモール・ロロサエ国家の経済政策は、東チモールの農業ベースで自給自足が大部分の経済を、多様で発展した経済に移行することを目的とすることになろう。
これらの目的のため、森林や牧畜、水産資源などのよりよい利用を促し、鉱物資源と観光の開発を行うことになる。
■開発を促す財政政策
雇用を促し国家財政収入を増大させるため、チモール・ロロサエ政府は、国の地政学的および経済的立場を最大限利用し、インド洋と太平洋の間にある数千もの島々の中、アジアとオセアニアの間の商業ルートに位置するという状況を利用し、そして過去30年間に大きな発展を遂げた東南アジア諸国の豊富な市場を利用する。
この環境において政府は、生産業への投資を促進刺激し、輸入を減らし輸出を増やし雇用を刺激するような財政及び税制を導入する。
こうした経済政策を通して、チモール・ロロサエ国家は東チモール人の雇用を促進するための特別経済ゾーンを作る。
■海外からの投資
チモール・ロロサエ国家は、海外資源を国の建設的な投資のために導入することを奨励する。このために、国内外の投資を保護する特別法を発布する。投資の守秘を法律で保証する。
国内資源を補完し、雇用を創生するための海外投資を引きつけるために、チモール・ロロサエ政府は、技術・科学・経済・社会・文化にわたって2国間及び多国間の協力関係をさまざまな国・国際機関と取り結ぶ。
チモール・ロロサエが国際的な経済に参加することにより、世界中で蓄積された経験と知識から学ぶことができ、結果として東チモール人がグローバライゼーションに直面したときの対応能力を高めることになる。
チモール・ロロサエ独立のための移行政府は、20年以上先をにらんだ戦略的な計画に基づき、2000年から2005年の間における国家開発計画を準備する。
これらの計画においては、天然資源や地域の能力と主導力のよりよい利用を促進し、国内投資への貢献のために内部資金を有効に使用するための国家的イニシアチブの開発に重点をおく。
■行 政
行政システムは、独立チモール・ロロサエ国家の必要性に合うよう次第に変更する。行政は効率的・機能的でなくてはならない。また、全面的かつ定期的なアカウンタビリティを伴う、専門家意識を高めた、見通しの良い管理を行う必要がある。
このために、国家は行政サービスを現代化し、国家経済にあうよう行政手続きを簡単化する。国内及び国際的な取引、金融財政部門の現代化の発展を奨励すると同時に、交通や通信、水や電気、衛生、都市計画などのサービスの発展を促し、必要な基盤を作る。
官僚主義と汚職をなくす。政府は雇用と富を創生し繁栄と安寧をもたらす計画を奨励する。
チモール・ロロサエ国家は行政活動全般における仕事の価値を高める雰囲気を作る。公務員の雇用は財政範囲内で行い、人的資源及び財政資源を合理的に管理する。国家の経済政策に対応して、雇用は主に農業・工業部門と商業伝統産業部門の小規模な企業の発達を通して促進する。
■訓 練
我々の祖国独立において、政府は、国の経済社会的発達が適切であることを保証するための科学的・技術的なノウハウを必要とする。そこで、全ての市民、特に若者に、あらゆるレベルでの学習を再開し継続するよう呼びかける。
我々の国が属する歴史と現在の地理経済上及び文化上の現実に鑑み、母国語であるテトゥン語の利用を促進し、ポルトガル語の利用を広め、同時にインドネシア語教育を維持しなくてはならない。
社会における専門的領域での教育訓練の成功は、社会経済問題におけるよりよい結果を保証する。
文盲の撲滅に関して、チモール・ロロサエ政府は成人教育と東チモール人の訓練を優先し、特に若者が個人や組合を通じた企業活動を展開するために必要な専門的・技術的・職業的訓練を得られるよう配慮する。
協調外交・国際関係
■ASEAN及びインドネシアとの関係
チモール・ロロサエ国家は、ASEANの枠組みでの平和と開発への地域的協力体制に参加し、政治・防衛と治安上の同盟関係、及び経済・社会・科学・技術上の関係を強化することを希望する。
歴史を考慮し、また平和と多層にわたる協力関係を考慮し、チモール・ロロサエは、民主的で複数政党制をとるインドネシアと、経済・財政・社会・文化の各面にわたり、特別な協力関係を築く。とりわけ経済セクターにおいて、また科学技術分野において2国間協定を取り結び、また相互投資協定や、経済財政分野での協定を結ぶ。
■ポルトガル及びCPLPとの関係
ポルトガルの人々と東チモールとの関係は、壊すことができないものである。ポルトガルとの関係は、知識・歴史的及び文化的伝統、我々が保ってきた心理的感情的関係を構成する。我々は、自由で対等な2つの人民の関係として、この関係が保たれることを望む。我々は、ポルトガル国家が現在東チモールにある機関が機能し続けるよう責任を持つと宣言したことに感謝する。
最も困難な時期にLusop-hone 諸国が示してくれた連帯を心に止め、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパそしてアメリカ諸国と協力を結ぶフォーラムに参加する。
■国際関係
チモール・ロロサエ国家は、できるだけ多くの国と、平和的共存、連帯そして相互に益のある協力関係を打ち立てる。チモール・ロロサエ国家は、国連・APEC・南太平洋フォーラム・ASEAN・CPLPの一員となることを公に求める。また、これら機関の合意を批准する。これらの機関の枠組みで、チモール・ロロサエは相互防衛のための政治的同盟関係の他、経済・社会・科学・技術上の関係を強化する地域的な協力関係を幅広く発展させる。
チモール・ロロサエ国家は、全ての独立国と相互にとって有益な関係を打ち立て、オーストラリア・米国・日本・欧州連合、そして特にポルトガル・CPLP諸国との関係を強化する。
チモール・ロロサエ国家は、全ての独立国と、相互の経緯と国家主権の尊重、平等性に基づいて政治的・外交的関係を打ち立て、相互に有益な合意を得る。
チモール・ロロサエ国家はIMF、世界銀行およびASEANの枠および協力関係を打ち立てた国々の枠における財政機関への参加を求める。
■民族解放戦士たち
FALINTIL、我々の民族の解放のための戦士たちは、東チモール全人民の永遠の感謝の対象となるに値する。解放軍戦士の誰1人として政府や行政の高官ポストに指名されることを期待して戦った者はいない。我々解放軍戦士にとって、最大の栄誉は自由で独立した我々の国家において自由の旗が揚げられている祝典に参加することである。
我々の政府は、国際社会の協力のもとで、自由の戦士たちの社会経済的な復帰に重点を置き、彼らが国家財政に全面的に依存しなくて良いように専門的訓練を受ける機会と条件を整える。
最優先事項
■恩赦と寛容
我々東チモール人民の歴史の中で有望な類例のないこの瞬間、新たな未来に直面するための準備をしている今、国の政治的・社会的安定を保証することが不可欠である。このためには、冷静な精神と民族の和解を促すとともに、将来への移行を平和的に調和をもってなすことが必要である。
和解を実効的にするため、今日までになされた政治犯罪全てについて恩赦を行うことを主張する。
この決定は、注意深い検討の後になされたものである。この寛容の行為は、感情を超越し、傷を癒し、我々人民の魂を高める。私は、心から、今すぐに暴力を止めるよう呼びかける。
投票以後の期間の安定を保証するために、移行政府は現在TNIやPOLRI、あるいは準軍組織に所属する東チモール人の社会への統合に特別な注意を払う。法と秩序と市民の安全を守るチモール警察に参加したい人々は、他の市民とともにそのための訓練機会を与える。
我々は、敵対的で抑圧的なシステムと戦ってきた。我々はインドネシア人民と戦ったことはない。我々は新たな時代の幕開けにいる。全ての東チモール人はお互いを信頼し、我々の祖国の発展のために手を繋ぐことができよう。
■国における機能の継続
現状では、諸機関、ビジネス他のサービスの継続は必要不可欠である。
我々は、公務員、ビジネスマン、チモール・ロロサエに住むチモール民族及び全ての住民に次のことを呼びかける。
諸機関が今後も機能し続けることを保証する
人々に物資とサービスを提供することを保証するために、民衆協議直後の期間、全ての公共及び私的機関が機能することが不可欠である。後退があってはならない。特に健康と教育のサービスは改善されなくてはならない。
■定期的供給の維持
人々に物資、特に輸入物資を中断なく配ることに特別の注意を払う必要がある。
■生産レベルを保つこと
経済の麻痺を避けるため、次の収穫までに必要な蓄えを補給しておく必要がある。工場の全面稼働とサービスを維持すること、特に水とエネルギーの供給、保健所他の、人々の基本需要に関わるサービスを維持することは重要である。
■インドネシアとの協議
移行政府は、インドネシア政府と基本的かつ国家利益に関わる問題について協議し、合意する予定である。特に、
インドネシア・ルピアの流通を、少なくとも移行期間中は維持すること。
(軍と警察を含む)東チモール人のインドネシア公務員、インドネシア国家に仕える半国有企業の労働者の地位を規定し、彼らの権利と義務が遵守されるようにすること。
チモール・ロロサエ国家のサービスに継続される、国家機関及び半国有企業(銀行、電信電話会社、水、電気、交通会社)で働いているインドネシア市民の権利と義務を定義すること。
東チモールで稼働中の公共機関と半国有企業に関して合意すること。
親愛なる東チモールの兄弟姉妹・同胞へ
独立への道では、チモール・ロロサエの娘たちと息子たち全ての参加が必要となる。立場の違いに関わらず、全ての政治指導者たちに、また全ての東チモールの組合や団体の指導者たちに、持てる技術と知識と情熱をつぎ込んで国家建設に共に貢献するよう呼びかける。
我々1人1人が独立のために不可欠なのだ。チモール・ロロサエを我々共通の旗に掲げよう。政治的・文化的アイデンティティーを確認するという困難な問題に向かおう。また、それにより、経済社会的発展にまでつながる複雑な問題に直面しよう。2倍の努力をつぎ込み、貧困と低開発に打ち勝とう。
低開発への闘いは長く複雑な闘いである。共に闘っていくことにより、尊厳と繁栄を保ったチモール・ロロサエ国家の創造に貢献できるであろう。
民衆協議の民主的手続きにより、独立した国を作るかどうかは、我々全員の問題となっている。市民の1人1人が民族の名において、投票の結果を尊重し、持てる技術と情熱をチモール人の国家につぎ込まなくてはならない。
過去の立場に関わらず、チモール・ロロサエ国家は全ての東チモール人を心から歓迎する。特に、併合派準軍組織の一部だった人々も。
全ての人々の安全と平穏のために、東チモール人の間での恩赦と和解を保証するために、私は全霊を傾けるとあらためて述べよう。
今、未来を創る時はきた
|