6月21日、第十堰住民投票条例は、22名(定数40)の賛成によって成立した。
10万を超える条例制定を求める署名が集まったにもかわらず、2月の臨時市議会で否決されたが、4月の市議会議員選挙で市民派候補を5名を擁立し、条例賛成派候補全員の当選をめざして、活動に取り組み、議員構成を逆転させた結果の第十堰住民投票条例成立であった。
1、住民投票実施への課題
住民投票実現のために残された課題がいくつかある。
その1つは、条例に実施期日を決められなかったことである。「実施期日は別の条例で定める」とせざるを得なかったために、6ヵ月後に実施期日を決めるための協議を行わなければならないのである。
2つ目は、条例の解釈の問題である。徳島市は条例成立後、実施に向けてプロジェクトチームを編成し、実施細則作成について活動を開始した。しかし、条例の解釈や具体化について議会の議論は始まったばかりであり、予断を許さない状況がある。
3つ目は、可動堰計画に対する広報の問題である。8月9日、徳島市議会総務委員会において条例反対派議員から「必要以上の広報は行う必要がない」との意見が出され、議論の結果、賛成多数で議決されてしまった。住民投票の趣旨を考えれば、1人ひとりの市民に判断素材として正しい情報を提供することは絶対必要なことである。
2、住民投票を阻害する建設省
建設省は、住民投票条例成立後も一貫して「住民投票の結果では可動堰計画を中止することはない」と言明し、住民投票を認めない姿勢を貫いている。一方で建設省は、「住民参加のあり方に関する懇談会」を提唱し、市民参加の話し合いで可動堰計画について結論を出すという提案を行っている。「住民投票は劇薬である」「住民投票に大儀なし」を繰り返し、住民投票を否定した上で懇談会を提唱したのである。しかも、審議委員会の「可動堰計画は妥当である」との結論を前提としている懇談会に、無条件に参加できるわけがない。
また、関谷建設大臣は、推進派の陳情に対して「地域の声が聞こえるような取り組みをして欲しい」と住民対立を進める発言を行っている。こうした要請に応えるかのように、経済界や推進自治体を中心に「第十堰・署名の会」を発足させ、吉野川流域自治体を中心に、早期着工を求める署名活動を9月10日から始めるという。「署名の会」は、可動堰建設がもたらす経済効果を押し出しながら、徳島市で集まった10万人の署名を数の力で押し潰そうとする意図で進めようとしている。
3、住民投票の早期実施を!
中央政界では自自公が成立し、日本の命運を左右する重要法案が数の論理で成立した。国民や地域住民の命運に関わる政策が、一握りの議員の判断だけで決定されていく現実がある。住民投票は、政治や議会のあり方を問い直す運動の一つとして、位置づけられると思う。
吉野川可動堰建設の是非をめぐって、徳島の状況はまだまだ予断を許さない。私たちは、話し合いによる解決をしたいと言いつつ、一方で住民対立を進める建設省や多額の税金を投入してキャンペーンを続ける徳島県などに対して、可動堰計画に民意を反映させることの意義を訴え、「自分たちのふるさとの未来は、自分たち自身で決める」という住民投票運動の原点で活動を進めていきたいと思っている。そのためには、市民の思いの表現である住民投票の早期実現に向けて、一歩一歩前進していくだけである。
|