【ぷりずむ】

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 藤原辰史『分解の哲学』は、生産と消費という認識枠組みの外にある「分解」を通して、枠組みを再考させる本だ。屑拾い論が興味深い。屑は価値がないから捨てられたが、それが拾われるのは別の繋がりを通して価値が生じるからだ。屑は商品世界から離脱しただけでなく、所有制度の網の目からもこぼれた存在であり、それを拾うことは所有権制度の空白をつくことだという。現在、生産者=労働者にも消費者にもなれず、社会的価値の分布図の外にいるがゆえに排除される人がいる▼私たちは真面目であるほど社会的価値を内面化し、排除を正当化し、排除される立場になっても自己責任だからと受け入れ、自分を叱責し自己嫌悪の悪循環に嵌る。しかし全ての行為を生産と消費に分け、その外を違法と見なす通念は貧しい考えではないか。かれらは現在の社会的価値の分布図において価値がないだけであり、別の繋がりにおいてはいくらでも新しい意味が生じる▼現在の価値感がいかにちっぽけで、その価値感がいかに狭い想像力に起因するのかを考えさせる本だ。卑下されたものたちの未だ知らない価値は異なる繋がりの中にある。(K)

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