【連載(8)食べて身になる】ウーバーイーツとわたし 木澤 夏実(げいじゅつ と、ごはん スペースAKEBI)

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(3)配送員は「利用者」!?

 友人にもウーバーイーツ(以下ウーバー)の配送者がおり、かなり儲けているとの噂であった。早速彼と会う約束を取り付け、配送をしてみた感想をメリット・デメリットに分けて聞いた。


 まずメリットは、働く時間の融通がきく点である。ウーバーは、自分の働きたい時にスマートフォンの専用アプリを起動すれば勝手に配送の依頼が入ってきて、好きなだけ依頼をこなし、終わりたい時にはアプリを閉じるだけで済む。本業がミュージシャンであるこの友人は、一日のうちに小さな予定がいくつも入ることが多く、少しずつの空いた時間で小遣いを稼げる手軽さがとても気に入っているらしい。なお、たとえどれだけ近距離での配送であっても、大きく「UBER EATS」と印字された専用リュックサックを使用しなければならない規約はあるが。


 一方、デメリットは、配送中に起きた事故やトラブルは全て自己責任で解決しなければならない点である。配送員はウーバー社の従業員ではなく、それぞれが個人事業主として依頼を受けているので、社会保険も雇用保険も適用外であり、その点については、スタートアップと呼ばれる事前説明会で口酸っぱく説明されるらしい。また、個人事業主ということは稼いだお金も各々で確定申告しなければならないのだが、配送員たちはそこまで理解しているのか。来年の春の経済関連ニュースがある意味楽しみだ。


 友人の話を聞いてハタと気付いたのは、ウーバーの配送員は「労働者」ではなく「利用者」だということだ。これはウーバーと配送員の双方にとって同じことが言える。配送員は好きな時間に自由意志で配送に参加し、それ自体が広告である見慣れないリュックを背負って街中を駆け巡り、自由意志で辞めていく。サービスも広告もしているにもかかわらず、ウーバー側は注文主から得た料金の微々たる額を配送員に配分するだけ。責任は一切負わない。そのかわり、「あなたの好きなときに働いていいですよ」という自由さを売りにして人々を誘い、ヒットした者が合意の上で配送員となる。


 「いやぁ、儲かってるんだよね」とニコニコしながら嬉しそうに語る彼を見ながら、「なんだか踊らされているなぁ」と思い、しょんぼりしてしまった。口に出しては言えなかったが。

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