汚職・失業・貧困・格差に民衆反乱   『ザ・トリコンチネンタル』10月24日 翻訳:脇浜義明

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レバノン、チリ、エクアドル、ハイチ

チリ・エクアドル・ハイチ・レバノンでは、民衆が反乱を起こしている。チリではAPEC国際会議が中止され、レバノンでは首相が辞任した。日本では「森友・加計汚職」に続き、億を超える税金を使った「桜を見る会」を安倍政権が私物化していたにもかかわらず、民衆は反乱を起こさない。安倍は市民をなめ切っている。 (訳者)

 レバノンでの反乱の契機は、携帯電話向けアプリ「ワッツアップ」利用への課税だ。チリでは地下鉄運賃値上げ、エクアドルとハイチでは燃料費補助金カットだった。  

しかし、現在ではワッツアップや運賃問題を越え、民意を無視して富裕層が優遇されていることへの怒りが人々を街頭へ駆り出している。  

チリでは、1992年には6%だった成長率が1・5%に低下、主要産品である銅の輸出が鈍化、国民所得は上位10%が、下位10%の25倍という格差(これに所有財産を加えるともっと大きくなる)だ。税制は逆累進性、しかも税をめぐる汚職が合法化されてもいる。  

さらに2007年以降20回も値上げされた地下鉄運賃が、また値上げされるのだ。これにより、通勤・通学の往復だけで所得の16%が費やされることになる。10月14日、中産階級の学生も抗議、構造的汚職への怒りが加わって、民衆的反乱となった。  

レバノンの支配層は汚職まみれだ。政治家は、公共工事の斡旋や公的サービスの優先提供で賄賂を要求する。2016年、設置された汚職対策省でさえ汚職で訴えられた。2019年、緊縮財政で支出がカットされたが、逆累進性税制は維持されたまま。汚職も相変わらずだ。  

アントニオ・グラムシはフランス第三共和政に関して、「支配層が野党の指導者を買収した」と指摘した。人民を力づくで従わせるのが困難な場合、買収や詐欺行為で矛先をずらし、士気をくじくのだ。ブルジョア諸政党も、口先では汚職を非難するが、自らも公的資金の横領を行い、富裕層が長期的に納税をサボタージュしたり、大企業への補助金や減税を支持するのだ。  

国連の「持続可能な開発資金報告」(2019年版)によれば、法人税に大きく依存する南半球は税金逃れの打撃を受けている。特に、米国をはじめとする多国籍企業は、課税所得を人為的に減少させ、利益を得た国でなく税金が安い国で申告するといった税金逃れを常套手段としている。  

税金の安いエクアドルやレバノンの支配層は汚職にまみれ、政府は何もしない。だから、民衆が街頭へ出て、自分たちに入るべきものを取り戻そうとしているのだ。民衆は、ブルジョアジーと外国資本による搾取への抗議を、政府に民主主義を突きつけるかたちで闘っているのである。  

支配層は軍隊を民衆に差し向ける。チリ、エクアドル、ハイチの弾圧は、苛酷である。チリのピニェラ政権は、かつてのピノチェト独裁政権に倣い、非常事態宣言、外出禁止令、大量逮捕を行った。    

ハイチでギャングがデモ弾圧

ハイチでは、9月半ばから抗議が始まった。燃料不足がきっかけで、人口の半分にのぼる500万人がデモや道路封鎖に参加した。彼らは、(1)大統領辞任、(2)外国投資の拒否、(3)エネルギー・経済危機に対する正しい政策、を要求している。  

政府は、警察を使って民衆を弾圧。20人以上が死に、数百人が負傷。さらに政治家と結びついたギャングが民兵として活動している。首都を含む主要都市は麻痺し、行政・商業活動も機能しなくなった。水道や食糧の配送も止まり、国全体が人道的危機に陥っている。  

しかし、米国、カナダ、米州機構、国連を含む国際社会は、外国の介入を呼びかけるか、見て見ぬふりをするだけだ。しかも、保守派や野党の中道派と接触し、現政権の存続を画策している。  

民衆は、「愛国戦線」という連帯組織を結成し、(1)大統領辞任、(2)公的資産の掠奪者や抗議者殺害者の起訴、(3)3年間の暫定政権樹立、(4)選挙システムを改善して新しい選挙を実施すること、(5)憲法会議の設立、を要求している。  

現在の反乱は、2018年7月のゼネストを引き継ぐものである。これは、IMF勧告による燃料費の値上げに抗議したもので、150万人が街頭に出て、首相を辞任に追い込んだ。  

今年8月、トランプ政権は、南米ベネズエラに全面的な経済制裁を科す方針を打ち出し、米国内のベネズエラ政府資産を凍結した。これにより、「ペトロカリベ」(ハイチなどの国に安く燃料を供給していたエネルギー協定)が崩れた。そのうえ、IMFが燃料補助金削減を指示したために、燃料不足、燃料価格高騰、交通麻痺が起きた。  

通貨下落で、18%のインフレ、公的部門労働者の給料凍結を招き、それが長年の貧困、格差、失業、食糧不安の闘いと結びつき、民衆反乱となったのだ。

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