【高浜原発関電裏金】黒い金に覆われた暗黒行政 関電幹部への還流は氷山の一角 福井県小浜市 明通寺住職 中嶌哲演さんに聞く

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関西電力の役員らが、高浜町元助役から3億円余の金品を受け取っていた。地元ではどう受け取られているのか? 中嶌哲演さんに聞いた。 (聞き手:編集部山田)

編:地元での受け止めかたは?

中嶌:高浜町で、森山元助役をめぐるカネの噂は、絶えませんでした。しかし同時に、公然と口には出せない雰囲気も作られていました。森山氏は京都府綾部市の職員を経て1969年に高浜町役場に入庁。その後、収入役などを経て77年以降10年間、助役として権勢を奮ってきました。同氏の恫喝的言動は職員からも恐れられ、高浜原発増設以降、原発と森山元助役への批判は口にできない「暗黒町政」と言われる雰囲気が作られたのです。  

そんななか79年に、30才そこそこの共産党員である渡辺孝さんが、2位で町議に初当選。以降、原発の問題点を指摘し続け、9期も当選しています。保守的な若狭で共産党町議が当選し続けた背景には、「暗黒町政」に対する町民のやりきれない気持ちがあったのでしょう。  

高浜原発増設をめぐる黒いカネの噂は最たるものです。1978年の高浜原発3・4号機増設計画への建設協力金として9億円の黒い金が流れたとされていましたが、助役時代の森山氏が落とした手帳には、「24億円を受けとった」と書かれてあったそうです。関電からの黒いカネが、農協・漁協の幹部や地域の有力者にばらまかれたことは、衆知の秘密です。関連する自殺者も出ており、高浜町では黒い噂・事件が後を絶ちませんでした。  

今回そうした原発マネーが、関電幹部にまで環流していたことが明らかになったのですが、「さもありなん」という思いとともに、腐敗の極みといえます。  

今回の事件は、氷山の一角に過ぎません。一過性の騒動にしないことです。関西電力・岩根茂樹社長は、記者会見で(金品受け取りに関して)「森山氏との関係が悪化することを恐れた」と語っていますが、それは関電側が、森山氏を「若狭におけるキーパーソン」と位置づけていたからであり、「押しつけられた」などと被害者のような言い抜けは、許されません。  

森山氏の恫喝的言動がクローズアップされていますが、行政も議会も彼の言動を黙認・追従してきたことを忘れてはなりません。福島原発事故の後ですら、区長会・商工会・観光協会が連名で議会に「早期再稼働を求める」陳情をあげ(2015年)、町長はこれを立地自治体の意思として県知事に伝えるという暴走がまかり通っていました。  

関西電力こそ、行政幹部・議会関係者・地元業界団体に働きかけ、裏金を流して、「暗黒町政」を作りあげてきた張本人です。フクシマ後の厳しい状況の中で、高浜原発3・4号機の再稼働を強行突破し、現在も高浜1・2号機、美浜3号機という40年越えの老朽原発を遮二無二動かそうとしていることに、今回の問題の背景があります。  

これら再稼働に向けた「安全対策」工事費は、総額5500億円ともいわれています。同工事は、大手ゼネコン=安藤・間組に発注され、今回問題となっている地元業者=吉田開発は、27億円程度の工事を下請けしているに過ぎません。関西住民の皆さんは、こうしたマクロの視点をもって考えてほしいと思います。  

内部告発文書が各所へ 自浄能力失った関西電力

高浜町で森山暗黒町政が作られたように、関電自体にも、原発を推進してきた現経営幹部への批判は許されないという暗黒体質が作りあげられたのだと思います。関電の企業モラルは、地に落ちていると言わざるを得ません。  

実は今年6月中旬に、「関西電力を良くし隊」を名乗る内部告発文書が、私たちにも届けられました。大阪市長や神戸市長、マスメディア5社や2政党なども送付先になっています。こうした自浄努力は、株主総会でも取り上げられることはありませんでしたが、今後、関電がどういう自浄能力を発揮するのか?また、会社と一体となって原発推進側に立ってきた電力労組が、どのような態度を取るのか?注目しています。  

関西電力は、京阪神の自治体が大株主となっています。これは、京阪神住民の皆さんが株主だということです。関電批判の市民運動も起こっていますが、批判の矛先は、自分たちにも向いているということです。一方で、再稼働のために電気料金が値上げされ、その金があろうことか賄賂に使われていたわけです。  

電気という「益」を受け取ってきた都市部の住民は、危険な原発という「苦」は地方に押しつけてきたがゆえに、「無関心」に陥っていました。腐敗が明らかになった今、関西の皆さんがこの「株主」と「被害者」の立場をどう受け止めていくのか?問われています。  

今問題視されている関電経営陣は、さまざまな原発推進・強行突破を進めてきた張本人ですから、経営陣の一新は当然としても、まず危険な老朽原発を動かすための「安全工事」自体の中止を求めます。立地自治体の住民を危険にさらし、腐敗を蔓延させてでも金儲けに走る、という従来の経営方針を見直すべきです。  

昨年3月「原発ゼロ法案」が国会に上程されましたが、棚晒しにされたままになっています。1日も早く審議・成立させることが、根本的全体的な解決につながると信じています。

原発ゼロ基本法案 骨子 ●基本理念として、すべての原子力発電所(原発)を速やかに停止、廃止する。 ●施行後5年以内にすべての原発の廃炉を決定する。 ●再生可能エネルギーの割合を2030年までに40%以上とする。 ●廃炉作業に伴う電力会社や立地地域の雇用・経済対策について、国が必要な支援を行う。

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