【森友裁判一審判決】真相究明を阻む不当判決 森友学園問題を考える会 廣瀬 正明

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売却額不開示は違法だが 地下埋設物の非開示は適法とする

 木村真・豊中市議が「土地の売却価格等の公開」を求めて大阪地裁に提訴(2017年2月8日)。これを契機として「森友学園問題」が広がった。その後、土地の売却価格が開示され、訴訟は損害賠償請求に変更され、その判決公判が5月30日に行われた。

不当な値引き証拠隠し認め 森友事件の論点をそらす

 松永栄治裁判長が「被告は、原告に対し、3万3000円を支払え」と主文を読み上げると、原告・木村市議は両手を高く上げ、拍手がおきた。しかし、「原告のその他の請求を棄却する」と続けられた。  

判決文要約

売却額不開示が違法の理由としては、(1)「国の財産は適正な対価なくして譲渡してはならない」と財政法は規定している。国有財産の適正管理のためである。(2)譲渡価格の公表も、そのためであり、買い受ける側も、公表を前提としている。それ故、(3)情報公開法に規定される「競争上の地位その他正当な利益」に該当しない。(4)実際、2013年度以降、契約額が公表されていないのは本件だけ。それ故、売買代金額等が「情報公開法所定の不開示情報に該当しない」との判決であった。  

しかし、一方でごみや地下埋設物の非開示を適法とした。理由は、(1)「土壌汚染地であることが公開されれば、保護者に対し心理的嫌悪感を与え、小学校を経営する上での利益を害する可能性がある。(2)それ故ごみ等の有無の条項は、本件売買代金等とは異なり、情報公開法所定の不開示情報に該当する。それ故、近畿財務局長が本件条項を不開示としたことが国家賠償法上違法ではない」。  

土壌汚染は 開示すべき情報

閉廷後、傍聴席では「勝ったの、負けたん? ようわからん」といった声が飛びかい始めた。裁判所の正面には多くのマスコミが陣取り、原告である木村豊中市議の取材を始めた。木村市議は「勝訴」、山本いっとくさん(前・豊中市議)は「不当判決」の垂れ幕をもって取材に応じ、「不当な値引きの証拠隠しを認め、論点をそらしている判決」だ、と批判した。  

弁護士会館での報告集会に集まった100人の支援者に、吉村弁護士(原告代理人)が判決要旨の説明を行った。参加者からは、「よくわからない判決」「なんでゴミが不開示」「ゴミや土壌汚染があったら、隠すのではなく、重要事項やから逆に開示すべきではないか」といった声があがった。  

真相・責任追及 運動を持続

森友裁判は「教育勅語を暗誦させ、民主主義や人権を否定するような教育を行う塚本幼稚園を経営する森友学園の小学校建設」に、「ただ同然で国有地の払い下げ」が行われたことの真相究明と責任追及のための運動の一環として行われてきた。単なる情報公開を求める裁判ではない。判決がゴミの不開示を適法としたことは、不当な値引きの証拠隠しを認めたと同然で、真相究明を妨げている。  

すでに、「値引きあり」が先で「ゴミ等」が「理由づけに利用された」事実が明らかになっている。森友問題は「大阪府による小学校の認可基準の緩和」「公文書の改ざんや廃棄」「大阪地検特捜部の佐川氏らの不起訴」の問題が絡み合っている。しかも、安倍政権、松井前大阪府知事などの責任者は問われず、関係した官僚は昇進している。  

今後も、民主主義の実現のため、松永判決を批判しつつ、真相究明と責任追及の運動を闘いたい。

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