【ブラジル】スウィージーの ファシズム論と現代 ファビアン・ヴァン・オンゼン出典:MRオンライン、2019・2・20

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翻訳 脇浜義明

 スウィージーの特徴は、ファシズムと第一次大戦後に現れた階級的均衡という過渡期的状況を結びつけたことだ。  

『世界的価値法則』でサミール・アミンは、現代資本主義の主要矛盾は「周辺部の人民を帝国主義的資本に対立させる矛盾である」と述べている。この矛盾によりブラジルでは公然とファシストを名乗るボルソナーロが選挙で政権を握った。スウィージーの階級的力学が働き、階級的均衡の上に成立していた左派または民主主義的政権がファシズムによって取り壊されていく。  

ブラジルの労働者党(PT)は13年間、政権を握り、労働者の生活を向上させた。アルフレド・サアド・フィリオが『ブラジル―ネオリベラリズム対民主主義』に著したように、ルーラ・ダ・シルヴァが政権を取れたのは、軍事政権後のネオリベラル経済がブラジルにもたらした経済的破綻のおかげだ。  

ルーラは貧困を減らし、識字率を高め、雇用を促進し、労働組合をエンパワメントするために新しい制度や機関を作った。彼は反帝国主義者ではないが、帝国主義者の支配を弱め、BRICSを促進する諸機関を新設した。  

サアド・フィリオはルーラ政権時代に機能していた階級的力学を分析した。それはスウィージーが第一次世界大戦後のヨーロッパ社会で働いていると分析した階級的力学と類似する。ブラジル共産党が連立内閣に入り、同時に、石油企業ペトロブラスや建築企業オデブレヒトなどの国内ブルジョアジーも政権と親密な関係だった。  

ルーラもジルマ・ルセフも、国内ブルジョアジーの協力を得るために、前政権が作り出したネオリベラル的制度や機構を変えなかった。唯一疎外を味わったのは、ルーラ政治から恩恵を受けなかった中産階級であった。  

国内資本家と連携するため、PTは資本主義的矛盾を社会から一掃しなかった。他のブルジョアジーはほとんど買弁資本家で、米帝国主義と組み、労働者党政権の転覆を狙っていた。彼らはメディアを使って汚職キャンペーンをはり、ルセフを弾劾した。  

買弁資本家たちは中産階級と連携し、労働者党、労働組合、その他の進歩的勢力がブラジル社会の病弊の原因だと騒ぎ立てた。階級均衡が揺らぎ、矛盾を突いてファシズム運動が台頭、ボルソナーロが選挙で勝利した。彼は階級均衡の転覆に着手、進歩的制度を壊し、先住民を迫害し、買弁資本家による階級支配を再建。基盤大衆に依拠し、暴力とテロで政策を実行した。直接的な再分配戦争は仕掛けていないが、環境保護政策を廃止し、アマゾン流域の森林伐採を進めるなどの拡張的政策を実行。米国と組みベネズエラの合法的政府を転覆させる陰謀に加担している。  

現在の状況はスウィージーが『資本主義発展の理論』を著した時とは異なるが、展開しているファシズム論は今でも有効だ。彼の階級均衡論は帝国主義戦争直後の時期に開発されたが、それは戦後期という特殊状況の中でのみ存在するわけではない。  

ブラジルの場合、それはルーラ政権時代に存在した。ネオリベラリズム政治がもたらした経済的破綻の結果生まれたものだ。この不安定な階級的均衡は物質的条件の改善をもたらしたが、資本主義的矛盾を全面的に解決するものではなく、恐ろしい政治的状況を招く要素を内包していた。PTはネオリベラリズムの基本要素を残したままだった。その結果、買弁ブルジョアジーが帝国主義と組み矛盾につけ込み、ファシストを政権につけた。  

スウィージーのファシズム分析を、後に彼が書いた『独占資本』と結び付ければ、現代ファシズムに関する洞察が深まる。帝国主義中心部と周辺部でファシズムが猛威をふるい始めた現在、スウィージー再読が重要になる。

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