「皇族システム」と東京五輪 鵜飼哲さん(一橋大学教授)インタビュー

21世紀の天皇制を示す

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 2月11日、「『戦争する国』も『神の国』もゴメンだ!」集会とデモが大阪市内で開催され、350名が参加した。建国記念日に反対し、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワークが主催。今年は天皇代替わりを控え、天皇賛美キャンペーンも激しさを増している。集会では一橋大学の鵜飼哲さんが「21世紀の天皇制と批判の論理」をテーマに講演した。インタビューと合わせて要旨を紹介する。(編集部・園)

皇室政治に組み込まれる与野党

 鵜飼さんはまず、代替わり現象について「(1)現天皇夫妻だけに目を奪われず、皇室・皇族全体がシステムとして動いていると考えること、(2)安倍首相だけではなく、与野党全てが皇室政治に組み込まれていることを、問題視しなければいけない」と強調した。
鵜飼‥2012年、私は、思想家のガヤトリ・スピヴァクの京都賞授賞式に出席しました。式典には高円宮妃久子が参加し、入出場時の起立が求められました。スピヴァク自身がこの光景を異様に思い、高円宮妃久子に「私の友人たちは立ちませんよ」と言っています。

 京都賞は京セラの稲盛和夫が理事長を務める稲盛財団の賞で、高円宮は同財団の名誉総裁を務めています。自民党や日本会議ではなく、元民主党に近いグループが運営している賞なのです。高円宮妃久子はその後、東京五輪の招致に深く関わり、積極的な役割を果たしました。JOC委員は、皇室などの「五輪貴族」が牛耳る私設団体であり、国際機関ですらありません。JOC会長の竹田恒和は、旧皇族の竹田家生まれです。

 皇族全体とスポーツとの関係こそが、21世紀の天皇制の重要な表れです。東京五輪は、福島原発事故を隠ぺいするために招致されました。安倍首相は「放射能はアンダーコントロール」とあからさまなウソを言い、責任を回避し、避難者を切り捨て、祝祭で染めあげようとしています。1964年の東京五輪は、昭和天皇の国際社会への復帰のために用意されました。2020年大会は新天皇のお披露目であり、もう一つの即位式でもあるのです。

福島原発事故を隠ぺいするための東京五輪と新天皇祝祭

 米国の学者ジュールズ・ボイコフは、「祝賀資本主義』という概念を提起しています。「平成最後のクリスマス」という支離滅裂なフレーズが出回るほど、天皇代替わりは商売にすっかり組み込まれています。

 前天皇裕仁の死亡による代替わりとは異なり、天皇退位は経済界の商機であり、まさに祝祭です。5月1日の代替わり時には、渋谷のスクランブル交差点で若者たちがカウントダウンをするのではないか、とすら言われています。

 「これが最後」と思うがゆえに前のめりになり、さまざまに「便乗」する。現在、五輪に向けて公的資金を民間資本(ゼネコン)に投入し、利権構造を増幅させています。それはまさに国家の私物化ともいえるもので、金額的には森友・加計学園の比ではありません。そのために、増税、セキュリティ産業の膨脹が進められます。五輪後に大変な不況が来るでしょう。

 祝祭とは、そうした人々の苦しみを隠しながら、不可能な「改革」を可能にさせる「非常事態」です。祝祭は自然災害ではなく、自ら招致する「災害」です。政治家・官僚・財界・皇族が一体となって、代替わり・五輪・万博を進めているのです。

インタビュー

編‥生前退位がこんなにも市民社会に浸透したのはなぜでしょうか?
鵜飼‥生前退位がテレビで行われ、ショー化されているからだと思います。
‥政権と皇室には軋轢があり、天皇=平和主義者との評価も聞かれますが……。
鵜飼‥天皇と安倍首相が不和だという根拠は、どこにもありません。それより、両者が一緒にやっていることは何か? を見極めることが重要です。東京五輪、5月1日の代替わり、即位式も両者が一緒に決めています。運動側もそこを見極めずに天皇に期待してしまうのは、政権交代が見通せない絶望感があるからでしょう。

 権力の軋轢や内部矛盾によって天皇制を廃止することはできません。彼らはみな調整し合っています。

 「靖国神社と天皇の軋轢」とされることも、靖国を神社本庁に再編させる動きの中でのことです。そもそも天皇が自由に動いて軋轢が起こること自体が、憲法違反です。私は「騙されることはやめよう」と言いたい。

 騙されることをやめた人たちで、反対の陣形を作りましょう。政・官・財と合体した「皇族システム」による政治をトータルに問うべきなのです。

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