日米物品貿易協定・FTA交渉は即時中止を! 北海道大学農学部在学 不謹慎マン

日本農業を破壊する

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9月26日に行われた日米首脳会談にて、日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on goods)の締結に向けた新たな通商交渉を行うことで合議した。これを受けて、農業界全体では大きな危機意識が広がっている。自動車関税の据え置きを条件に、農産物関税の大幅な引き下げが見込まれるからだ。

TAGはFTAの予備交渉

 アジア・欧米諸国との度重なる関税引き下げを受けて、既に国内のコメや酪農は甚大な影響を被っており、この協定はさらに追い打ちをかけることとなる。

 問題は農業だけに留まらない。TAGの枠組みには「議論が完了した後、他の貿易・投資の事項についても交渉する」との記述があり、これはTAGが事実上の自由貿易協定(以下、FTA)の予備交渉であることを示すものである。安全保障における対米依存度が高い日本において、サービス業への関税撤廃や投資規制緩和なども認めてしまう米国とのFTAは、あらゆる国内産業を破壊しかねない、極めて危険なシロモノである。

 事実、典型的な外需型国家である韓国は韓米自由貿易協定締結以後、農業や畜産業、工業分野における関税の撤廃を余儀なくされた。協定交渉のイニシアチブを米国に握られ続け、薬価の改定権を喪失し、国民皆保険は崩壊、農協は解体に追い込まれた。

 このような不平等条約交渉の背景には、米国のTPP離脱と莫大な対日貿易赤字がある。トランプ政権の横柄な要求に耐えかねて、米国を除いた11カ国でTPP合議に至ったのが今年1月。「このままでは自国の農産物を処理できない」と、自動車産業において4・6兆円もの巨額な対米貿易黒字(2017年)を保持する日本に対して、「自動車に25%の関税をかけるのをやめてほしければ、米国の農産物を受け入れろ」と脅迫している形だ。

 TPP合議の数字に納得できなかったトランプ政権が、今回のTAGでTPP以上の譲歩を求めるのは自明のことである。事実、10月4日、パーデュー米農務長官は、欧州と締結した経済連携協定以上の農産物関税引き下げを日本に求めることを発表した。既に国内農家は安価な食料品流入に怯えて戦々恐々であり、米国とのFTAなど、もっての他と言わざるを得ない。

市場原理に馴染まない日本の小規模農業の特殊性

 確かに、農業における競争原理主義・自由貿易の妥当性が、安倍首相主導の農協改革を皮切りに、国内でも主張されるようになってきた。「海外との激しい競争に晒されれば、日本農業も活性化するだろう」という理屈だ。

 しかしながら、日本の地理的特性、そして食料品という財の性質を考慮すると、このような言説は甚だ疑問である。

 国土も狭く、起伏の激しい日本では、大規模な集約化を図ることは難しい。海外産農産物と対抗するためのインフラ再整備や農地の集約といった構造転換に耐えうる体力のある農家が、一体どれだけいるのだろうか。

 例えば「農家を食い物にしている」「ピンハネ業者」と糾弾されるJA全農も、「国民への農作物の安定供給」という観点から、批判は全く的外れである。地域集配型システムは、営業・在庫管理・配送などの雑務から農家を解放し、通年の全量買取制度によって景気変動のリスクを負担してくれているといえる。

 農協を悪と断じ、こうした流通システムを無理やり排除してしまえば、作付け面積の小さい兼業農家はすぐにでも廃業してしまう。だが、こうした小規模農家が全体の70%ほどを占めており、日本の人々の胃袋を満たしてくれていることは忘れてはならない。

 元来、天候や国際情勢の影響を受けやすい農業に、強引に自由主義経済を導入すれば、食料品価格が不安定になることは避けられない。それは直接家計を圧迫し、国民全体の消費は落ち込む。農産業の不振は、社会全体の経済不振につながるのだ。「市場原理が全てを解決してくれる」とでも言わんばかりに断行したあの一連の構造改革が、一体日本に何をもたらしたのか、我々は今一度、歴史を振り返らなくてはならない。

 私は、農産業における保護政策の重要性を説くと同時に、国内諸産業を破壊しかねない日米物品貿易協定の即時中止を断固として主張するものである。

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著者プロフィール:1994年京都市出身。北海道大学農学部農業経済学科に入学。「イベントバーエデン札幌」を開業。飲食店を中心に据えた起業家コミュニティの形成を札幌で試みている。労働問題に深い関心を持ち、日雇い・派遣など、自身もさまざまな形で肉体労働に従事する中、農村部の実地調査を重ねる。2019年度、北海道大学農学院に進学予定。

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