連載(2)パチンコからカジノ法に至る官製ギャンブルの正体 元パチンコ店経営 李 達冨

パチンコ依存症の爆発的拡大 自殺者急増時期と重なる

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 7月22日の朝日朝刊に、「2011年金融危機から『自殺者3万人時代』」という特集記事が掲載された。「倒産、パワハラ…自殺急増」とある。しかし、この記事は緻密さを欠いた事実解釈に基づいている。私の仮説は、「自殺者急増はギャンブル依存症者の爆発的拡大期と重なる」というものである。(写真はセガサミー会長・里見治)

 前号で説明したカードシステム導入以降、一部のパチンコ店は自己防衛策として不正営業に手を染め始める。

 ロムを違法に変え、射幸性を著しく高めたパチスロを使い始めた。いわゆる「裏もの」と呼ばれるパチスロ機は、98年前後に本格的に登場した。従来のパチスロ機と比べて大当たりの連続性を異常に高め、その反面、大当たりの発生確率を極端に低くしたため、勝った場合は40万円以上(裏もの初期の代表機種ミリオンゴッドでは100万円のケースも喧伝された)、負ければ、その日のうちに10数万円という客もざらに出始めた。

 さらに負けた人の多くは、負けた分を必死に取り戻そうとするので、1カ月で数百万の借金をこしらえる羽目に陥ってしまう人も続出した。もともとパチンコは、貯蓄もない低所得の人が数万円勝つことを夢見て通うのが普通であった。負けが込んでも自己資金でいつまでもできる人は、そう多くはない。このため負けを取り返すための資金をサラ金から借りることが簡単にできたことで、傷は深くなる。

 多重債務者救済キャンペーンが始まるまでテレビでは、大手4社の消費者金融のTVコマーシャルがあふれていた。当時の金利は20%前後だ。

 作家の帚木蓬生氏は、依存症者200万人、うち95%はパチスロ・パチンコ経由、1人当たり債務平均800万円という数値を挙げられた。16兆円もの巨額のお金が、高利の消費者金融を中心に借りられたことになる。

 高利で借りた借金を返せずに自殺、自己破産するケースが増え始めるのもこの時期だ。98年に自殺者数が一気に跳ね上がるのは、「裏もの」にはまり、借金地獄に陥った人が追い詰められた結果、自殺したからだ、と私は見ている。

警察との癒着、天下りが生んだ「裏もの」にはまってのサラ金地獄

 「裏もの」が広がると、比例するようにその取り締まりを行う生活安全課と業者の付き合いも広がり始める。ロムを変えることは風営法違反にあたるので、不正営業を始めるには規制当局からのガードを固めなければならない。警察OBを雇い入れたり、刑事への贈賄が行われるようになった。

 「裏もの」が違法だからで、その違法を合法にすれば業者も気を使わなくてすみ、癒着も減る。こうして「裏もの」と変わらない射幸性の高さを持った4号機の「北斗の拳」と「吉宗」が市場に登場するのが、00年代初めである。「北斗の拳」は、セガ・サミー社製で、同社の里見会長は安倍首相と懇意で、首相のカジノへの取り組みにも取りざたされている人物だ。

 安倍首相が、知人・友人をことのほか大事にし、公私混同で応援する人であることは「加計」や「森友」でよく知られている。「裏もの」は、発覚すると営業停止になるため、警察関係者のバックアップがないと導入に踏み込めない。それがない業者も、4号機は「合法」なので、全国的にギャンブル仕様のパチスロ機が市場を席捲し始める。これが一層ギャンブル依存症者を拡大したため、4号機は06年に撤去の方向で行政指導が発せられた。

 なお02年~04年の自己破産件数は20万件以上であり、06年以降は漸減し、16年には64、367件だ。自殺者数と自己破産係数の正比例関係が見られる。
 その後パチンコ店から4号機がなくなると、パチンコ各社がパチスロに過激さで負けない「マックスタイプ」機種を投入し始めた。若者の受け皿となる。また、4号機規制前後に千台規模のパチンコ店が登場し、その流れが全国化する。大型店はその新奇性で多くの客を集め、一度発熱したギャンブルフィーバーはそう簡単には沈静化しない。

 しかし、パチスロの射幸性とパチンコの射幸性の違いからくる客足の落ち込みは、11年以降明確になる。以降、自殺件数、自己破産件数、パチンコ店数は下り坂をたどる。

 「ギャンブル依存症絡みで自殺が増えた」とする私の仮説は、ギャンブル依存症→多重債務→自己破産→自殺という一連の流れが全て00年代初め(4号機が登場した頃)にピークを迎えているというデータに基づいている。     

(次号に続く)

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