【実録】公安警察取り調べ(5)

足を揉んでいると「失礼じゃないか」とキレたN刑事 編集長 山田洋一

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 雑談に応じないことを伝えて、本格的取調が始まった。朝一番で刑事に、次のことを伝えた。(1)質問は要旨を明確に、(2)同じ質問、推測による質問は無視する、(3)(1)(2)をふまえた質問については、「黙秘する」と応答する。

 「わかりました」と答えた刑事は、「口座申込書」を提示して、(1)誰が申し込んだのか? (2)免許証を盗まれたことはないか? (3)自室の家賃や水光熱費は誰が支払っているのか? などと聞いてきた。私以外の別人が口座を開設した可能性を疑っているようだ。

 次に、私が開設した他銀行3行の「申込書」を全て提示。「本人のものか?、印影は同じか?」と問うてきた。お決まりの「黙秘」と応答したが、提示された「捜査照会記録」の日付が8月21日になっている。捜査は、8月21日以前に始まっていたことがわかった。

 翌日は、日曜日だったが、取り調べは続いた。「日曜日も仕事? ご苦労なことだな」と言うと、「貴重な時間を頂いているので、無駄にはできません」と殊勝なことを言う。

 この日の質問は、ズバリ「口座開設の目的は?」だった。何度か再質問したので無視したが、刑事は次の質問に移らない。長い沈黙へと移ったので、気功の後、足裏マッサージをしていると、刑事が「人前で足裏を揉むのは失礼ではないか!」と切り込んできた。些か頭にきた。「ふざけるんじゃない! 俺は『黙秘する』と応答している。好きでここに座っているんじゃないし、自由に立つことすらできない。次の質問に移らない限り、足揉みはやめない!」と返すと、再び沈黙の時間が流れたのである。

 翌27日の取り調べでは、キャッシュカード再発行の際の電話録音記録が出てきた。銀行は、5年前の電話による会話記録をしっかり残しているのである。

 警察は、銀行に被害届を強要したのみならず、電話会話音源を含むすべての記録を提出させていたことになる。

 銀行の個人情報保護なんて、所詮この程度。国家権力に求められれば、ホイホイ差し出すのである。無論「黙秘」と応答したが、私の獄中ノートには、「取り調べは安定期に入った」と記録されている。

 この日留置場に着くと、看守から「お帰りなさい」と迎えられた。「ただいま!」と応えるわけにもいかない。答えに詰まった。        (つづく)

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