【実録】公安警察取り調べ(6)

「赤軍関係者」を割り出そうとする検事 編集長 山田洋一

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 逮捕から8日目、2回目の検事調べのため、早朝、検察庁に連行された。容疑者は、手錠と腰縄で拘束され、数珠つなぎにされてマイクロバスに乗車する。検察庁に到着すると、鉄格子の待合室に収容されるのだが、ここでは各警察署からの容疑者10名ほどが同房となるので、情報交換の場として様々な会話が飛び交う。

 見知らぬ者同士の会話は、たいがい「何で捕まったの?」から始まる。犯罪名が自己紹介の第一声になるのだから、「アナザー・ワールド」である。薬物で逮捕された容疑者同士で、「○○で良いモノが手に入る」などといった会話も交わされていたのには驚いた。ここで交わされる会話は、まさに小説の世界だ。シャバではとてもお目にかかれないさまざまな人生の流転を垣間見ることができる。
 10時30分、奥井敏幸検事の執務室に案内された。検事の傍らには書記官がおり、会話は全て録音される。検事は、私の銀行口座に入金した人々のリストを提示し、「どういう人物か?」、「(私との)関係は?」と聞いてきた。その他、検察が「赤軍関係者」と認定している人物の名前を挙げて、同様の質問を投げてきた。これらには、全て「黙秘する」と応答。検事は、「想定内」という面持ちで、あっさりと次の質問に移った。

 奥井検事は、黙秘する理由と生田署で取り調べの録音録画を求めた理由を尋ねてきた。そんなこと検事に説明する必要はないので「法律で保障されている権利を行使しているだけだ」と回答。留置場の処遇についての要望も聞き始めたので、「処遇については問題なし。刑事の取り調べも、礼節を欠くことはなく紳士的である」ことは伝えておいた。

 検事の質問が一段落したので、私から、詐欺の被害者と被害金額を聞いてみた。検事は、一瞬ためらいを見せたが、「被害者は銀行。被害金額は、物品としてのカード」である旨回答してきた。「銀行は、被害者どころか、手数料収入を得た受益者ではないか?」と反論したが、「考え方の違いでしょうね」との答えしかなかったと記憶している。
 いずれにせよ、実質的な被害のない「詐欺事件」であることを、検事が認めたのである。   

(つづく)

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