インタビュー ソウル書林 李 慈勲さん(2) 朝米首脳会談を前にして

朝鮮半島の非核化 次の焦点は日本

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 朝鮮半島の非核化に向けた実務協議が本格化し、つばぜり合いが始まった。朝米双方から、「首脳会談開催見直し」(共和国外務副次官)、「トランプ氏をなめるな」(米副大統領)などの発言が続く。李氏に、朝米首脳会談の見通しと成功の鍵は何か?聞いた。

 

金委員長とCIA長官の戦略

 攻撃の口実として偽情報を流して侵攻する米国の手法を熟知している共和国は、緻密に核武装を準備し完成させました。金委員長は、父・金正日政権の公式イデオロギーである「専軍政治」を引き継ぐとともに、人民の生活を向上させる市場化政策をうちだし、一定の成功を収めています。

 ポンペオCIA長官は、諜報機関として、(1)北朝鮮は、核ミサイルも航続距離1万3000キロメートルのICBMも完成させている、(2)1万8000以上の市場が活発に活動している、ことも認めています。共和国は、防衛のための核武装を完成させ、経済的な自立も達成しつつあります。

 朝米交渉における最大の問題は補償金でしょう。リビア方式では、核を全て廃棄し、二度とつくらないという一挙的決着をしましたが、リビア・カダフィ政権は、結局、打倒されました。これに教訓を得ている共和国は、リビア方式に同意することはありえません。段階的な非核化となるでしょうし、各段階で補償金を求めることになります。共和国は、朝鮮戦争で血みどろの被害を被ったために、全国力を軍事に注いできました。核爆弾とミサイル開発に要した費用は、90兆円とも言われています。この金額が共和国の最終的な要求となるでしょう。

 しかし、これをアメリカが負担するわけではありません。トランプ政権は、日本と韓国に負担させる心づもりです。いずれにせよ、共和国側の基本的要求項目は、「体制維持」と「平和条約締結」です。1953年の休戦協定は、締結後6カ月以内に外国軍隊を撤退させるとされていましたが、アメリカは、在韓米軍の駐留を続け、核を含む軍事援助も続けています。平和条約は、こうした歴史をふまえた内容でないと共和国は締結に応じないでしょう。

 

日本は核含む再軍備を選択か?

 米国は、休戦協定締結後、韓国に配備していた2~3千発の核をいったん沖縄に移しましたが、朴正煕政権時代に韓国に戻しました。共和国は当面、在韓米軍の撤退までは求めないでしょうが、韓国内の核兵器の撤去は求めるでしょう。

 在韓米軍の存在は、(1)自主的、(2)平和的、(3)民族大同団結、という民族三大原則に違反しています。共和国は、自主独立路線のもと外国軍は存在しません。一方、日・韓には米軍が存在し主導しています。民族統一を視野に入れれば、米軍撤退は前提条件となります。

 金大中元大統領は、「東北アジアの力の均衡を保つために在韓米軍は必要だ」と、金正日氏を説得しました。中国の覇権主義が軍事的脅威になっているからです。中国をけん制するため、米軍は利用する価値があるという論理です。暗黙の了解が正恩氏にもあるでしょう。

 米国のアジア戦略の基本は、中国封じ込めです。そのためには日本を反共国家として強化することが重要であり、憲法改正をしてでも再軍備を求めています。朝鮮半島が非核化されれば、日朝国交正常化交渉も視野に入ってきます。次の焦点は日本となります。日本が核を含めた再軍備、沖縄の米軍基地強化という方向を選択するのか? 平和国家としてアジア諸国との共存共栄を模索するのか? 問われる時代がそこまで来ています。

 お詫びと訂正…前号のインタビューで、李さんは金屋南道ではなく「全羅南道」生まれ、63年ではなく68年に亡命。平岩俊司氏は「北朝鮮専門課」でした。お詫びし訂正します。

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