【実録】公安警察取り調べ(4)

取り調べ中は気功 編集部 山田洋一

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 逮捕から5日目、雑談拒否を伝えてからは、「本来」の緊張感ある取り調べとなった。刑事の表情も別人のように変化した。素直で好奇心旺盛なスポーツマンが、コーアン3課の刑事の顔に見事に変わって見せたのである。

 刑事N「あの銀行口座は、誰かが勝手に作ったんじゃないですか? それならあなたは無実になる」「キャッシュカードが自宅にないのはなぜか?」etc…。

 全ての質問にひとつ一つ「黙秘します」と答えたが、Nは明らかに私の表情を読もうとしていることがビンビン伝わってくる。しかもその間、しきりにキーボードを叩いているのだ。当初私は、取り調べ調書を書いているのかと思ったのだが、その日の質問が終わるとあらためて調書を最初から作り始めたのである。つまり質問中の入力は、全て私の表情、しぐさを細かく記録していたとしか考えられないのである。

「新聞社も関与しているのか?」という質問も出た。「黙秘する」と応答したが、その後も「黙秘」が続き、雑談に応じそうもないと理解したNは、質問をやめた。

 静かな沈黙と熱い睨み合いの時間が続いた。刑事にとっては日常なのかもしれないが、自分の子ども世代より若い人間と睨み合いというのは、私自身の闘争心が湧かない。気功の練功で時間を稼ぐことにした。

 一昔前、「自然気功」に通っていたことがある。意識レベルを徐々に下げて、半覚半睡の状態を保つ。軽く眼を閉じていると、音には敏感になる。Nには、次のことを伝えた。(1)目を閉じているが、質問は聞いている。質問が浮かべば、質問すればいい。(2)気が乱れるので、急に大声を出すことは避けてほしい。

 Nは、「私は、怒鳴ったり、脅したりするタイプの刑事ではありません。了解しました」と回答。私は、イスに座って気功の練習。N刑事は、それをひたすら眺める。時間が来れば、取り調べを終了し留置所に帰還という流れが形作られたのである。    

  (つづく)

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